【読者投稿】台湾最大の危機としたたかな中国の戦略[東京都 小林 正成]

■中国の台湾への武力侵攻はあるのか

 中国は台湾に対し、事あるごとに「文攻武嚇」を繰り返す。しかし、実際に武力を行使
することは、まずないと私は考える。

 なぜなら、中国が台湾に武力行使し、短期で台湾を占領するのは不可能だからである。
さらに言うならば、1996年に行われた台湾の総統選挙の際、中国はミサイルを台湾近海に
撃ち込んで、「独立派の頭目」と攻撃してきた李登輝を圧倒的多数票で当選させ、尚且つ
米国の空母艦隊の出動事態まで引起したことで、充分に学習しているはずだからだ。

 中国が台湾に武力侵攻して、メリットが有るのか考えてみたい。

 中国は台湾問題は中国の内政問題だと強弁しても、国際的な視点で見れば明らかな侵略
行為である。そうなれば、国際社会からの批判・制裁・資本の引揚げなどによる経済破綻
から、共産党独裁体制の崩壊に至る可能性もある。当然、米国の空母艦隊の出動もあるだ
ろうし、台湾人民の内部結束を固めるこよになり、何一つメリットになるものは見当たら
ない。

 米国が台湾関係法に従って、台湾を防衛するという政策を放棄しない限り、中国の台湾
に対する武力侵攻はないと判断する。

 しかし、一点だけ可能性がある。それは、中国が政権の腐敗体質から民衆の暴動などに
より、独裁体制の維持が困難になった時、人民の目を逸らす為に、台湾海峡で戦争を起こ
す事態である。そのようなことにならない限り、台湾問題に関しては、時間は中国に有利
に動くと思う。

 中国は台湾に対して、国民投票によって国名を変更したり、台湾憲法を制定したりすれ
ば、軍事行動を起こすと恫喝してきた。台湾に面した大陸沿岸部に多数のミサイルを配置
し、原子力潜水艦や最新鋭の航空機の配備をし、遠くない将来に航空母艦を持つ計画も進
んでいるようだ。

 このような軍事力増強は、台湾侵攻を目的としたものでなく、台湾の独立に向けた何ら
かの行動は、中国を刺激して戦争になるから、台湾は中国の意に反した行動を取ってはな
らないとする、米国の現状維持政策を守らせる手段に過ぎないと思う。

■外務省キャリアの裏話

 ただ、日米に限らず、世界の指導者は中国人のしたたかさを認識していないようだ。例
えば、大分前の話だが、外務省官僚が!)小平を「雲の上の人」と発言したのを、「ボケ老
人」と作為的に曲解し、官僚の首を切らせたことがあった。こんなことは、中国人の常套
手段である。針小棒大、白髪三千丈方式で、自分を大きく見せたり、相手を利用(悪用)し
たり、陥れたり、千変万化・変幻自在な手練手管が使える民族は中国人以外にはないので
はないか。

 私には、外務省筋にキャリアの身内がいる。あるとき私はその彼を前に、外務省の中国
に対する土下座外交を痛烈に批判し、なじったことがあった。すると彼は、「気持ちは判
るけど……」と言いながら、次のような裏話をしてくれた。

 当時、彼の同僚にやる気満々の人物がいた。外務省の事務処理の中で、当人は正当な理
由から、中国の意にそぐわない発言を何度か重ねた。すると、中国は彼が担当する事項に
対して徹底的にクレームを付けてきた。政治家や経済界の訪中団や文化交流団体等に対し
て、「私達中国人は、中日友好を深め、未来永劫に亘って強い信頼の絆に結ばれていきた
いと願っているのですが、残念ながらお国の外務省に○○さんという方がおられて、友好
の妨げになっていることが大変残念でなりません」と言うのだった。その結果、彼はその
部署から外されたのだという。

 中国側は、中日友好の障害になる人物であると、色々な場所で発言させることによって
追い詰めて行く。

 こんな手段は、日本人には思いつかないことである。どんなに力量のある人でも、一度
左遷の憂目に遭ったら役人は出世できないから長い物には巻かれろ的な思想が根付き、今
日の外務省の主体性の無い六原則〔謝罪・朝貢・風見鶏・先送・棚上・土下座〕外交とい
う、世界で例を見ない外交が定着したのだろう。

 腹が立つより、呆れて頭が狂いそうだ。しかし、これが現実なのだ。

■中国の日米離間工作

 現在、米国でアイリス・チャンの創作『ザ・レイプ・オブ・南京』を題材にした反日映画
が作られ、日系三世のオッチョコチョイ議員が、米国議会に日本非難決議案を提出してい
る。
 
 裏面で中国の反日政策と連動しているようだ。中国は口では中日友好を語り、裏では日
本の足を引っ張り、日本の国連安保理常任理事国入りを妨害し、日本を貶めて国際社会で
日本を自国の下に置き、日米の離間工作を行っているのである。

 また、台湾に対する働きかけは、台湾の独立に連なる言動には、今にも軍事行動を起こ
すような激しい口調で攻撃する一方、統一派を助けて政権を奪取させようとしている。そ
して三通を太いパイプにして、台湾経済が中国に依存する度合いを高めて行く。この政策
は、台湾の統一派とも利害の一致するところである。

 これは「両岸の人民が話し合いで台湾問題を解決する」という米国の政策とも合致して
いる。しかも、中国は多数の特務を台湾に送り込み、定着させている。

 このように思考を巡らせて行くと、台湾海峡に面した沿岸に、ミサイルを一千発も設置
しているのは、威嚇によって台湾を屈服させることと、米国に対する陽動作戦の二面性を
備えたものと考える。

■台湾最大の試金石は立法委員選挙と総統選挙

 いずれにしろ、年末に行われる台湾の立法委員選挙と、来年三月に行われる総統選挙に
よって、台湾の運命が決まる可能性が大きい。民進党が引続き政権を取れば、不安定なが
ら現状維持路線が継続されるだろう。しかし、もし統一派の勝利となれば、台湾で民主的
な選挙が行われることは二度とないと考えるべきである。

 台湾のある識者は「あなたの考えはあまりにも悲観的であり、現実的でないし、台湾人
はそれほど馬鹿ではない」と言ったが、果たしてそうだろうか。

 私は、台湾人は馬鹿だとは言わない。しかし、海洋民族特有のお人良しで、忘れっぽい。
他民族に支配される植民統治慣れとでもいう性格が備わっているように思えてならない。
民主的な発言が自由にできる社会で、86%の人民がわずか14%の人間に牛耳られている現
実を見ていると、そうとしか思えないのだ。

 いずれにしても、先述の二つの選挙が台湾人にとって最大の試金石になる事は間違いな
いだろう。

 一方、米国は台湾人民がデモクラシーの原則に従い、国民投票で国名を変更したり、憲
法を制定することに反対している。だが、米国自身の建国理念である自由・民主・人権の
柱を台湾人民が確立することに反対するのは、天にツバするものとしか思えない。

 確かに米国は今、イラクの泥沼に入り込み、北朝鮮、イラン問題、その他にも多くの問
題を抱えている。しかし、自国の建国の理念をドブに捨てるような言動は、国際社会の信
頼を失うばかりか、自国を貶めることだと知るべきである。

 とは言っても、中国の陽動作戦に乗せられた米国の台湾政策が、急変するとは考えられ
ないので、日、米、台、中の関係は現状のまま推移して行くだろうが、時間がかかるほど
中国に有利に展開していくことだけは間違いない。

■悪夢−もし中国が台湾を併呑したら

 米国が望む方式で、中国が台湾を併呑した場合を想像してみよう。米国の台湾関係法は
解消され、台湾海峡とバシー海峡も南シナ海も中国の内海になる。日米安保にとって最も
重要な沖縄の米軍は、ハワイに撤退することになるかもしれない。

 こうした状況の中で、中国は米国の企業に更なる投資を呼びかけ、ほどほどの利益を上
げさせて、米国の企業を喜ばせる。日本は中国の属国となり、日米同盟は解消され、国際
社会に於ける日本の存在感は薄れ、国際社会に対する日本の声は無視されることになるだ
ろう。

 中国が尖閣諸島を占領しても、中国の属国と化した日本にはなす術がなかろう。中国が
次に手を出すのは沖縄であろう。中国の御用学者達は、明、清朝時代を通じて琉球は中国
の保護国であり、中国の図版の中にあったのに、清朝の弱体化が進んだのをチャンスにし
て、島津が火事場泥棒の様に奪い取ったものであり、当然中国に復帰すべきであると主張
しよう。

 中国が日本の経済、軍事を抑えたら、もう地球上で中国の暴走を止められる国はないだ
ろう。大中華教(天に二日なく、地に二王なし)の一統思想が完結。人類は終着駅に着く
のだ。もし、米国が中国の暴走を止めようとすれば、核戦争になり、人類は滅びるのだ。

 あの時、米国が台湾人民の自決を支援してさえいれば、こんな事態にはならなかったの
に……。米国を諫めて進言もせず、米国に追従した日本も罪深い。我が身に火の粉は及ぶ
まいと、対岸の火事よろしく死の商人を決め込んだヨーロッパ諸国も同罪である。人間と
は、こんなにも愚かな生き物たったのか。自分たちが創り、発展させてきた文明を自ら滅
ぼす。

 限界的頂点に達すると、自ら種を滅ぼす習性を持つ生き物がある、と聞いたことがある。
まさか人類がそうなるとは、考えたこともなかった。100万年に及ぶ人類の歴史が、因果応
報とは言え、悲しい結末に終るとは──。

 《悪夢》に終ることを祈るばかりである。


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