今年1月の総統選挙で当選した総統の蔡英文氏と副総統の頼清徳氏の就任式が5月20日に行われる。総統府の発表によれば、今年は武漢肺炎の影響により、通例の祝賀式や晩餐会は開かず、規模を縮小して行われる。
当日は、台湾時間の午前9時に新任総統と副総統が総統府で就任宣誓を行い、総統は同10時から台北賓館の屋外スペースで就任演説を行う。就任演説の招待客は200人前後で、各国の駐台使節のほか、総統・副総統経験者や各県市首長、防疫国家チームの関係者らを招くそうだ(中央通信社)。
また、台湾国際放送によれば、注目される就任演説は「標準中国語、●南語、客家語、広東語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、日本語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、韓国語の14種類の言葉を使って各言語のフェイスブックを通じて蔡・総統の就任演説を生中継、同時通訳付きでお届け」するという(●=問の口が虫)。
例年、この総統就任式典に、日本からは日華議員懇談会(古屋圭司会長)や自民党青年局などが大勢参列しているが、参列できないため自民党の小林史明(こばやし・ふみあき)青年局長は祝意を表するビデオメッセージを送ったそうだ。
産経新聞は本日(5月16日)の「主張」で、総統就式の意義について、「自由選挙により政治リーダーを選ぶ民主主義を、さらに成熟させていく重要な通過点」と述べ、「国際社会での存在感を高めてもらいたい」とエールを送る一方、日本に対しては「蔡総統が呼びかけている日台安全保障対話を実現するなど連携を深めていくべき」と指摘している。下記にご紹介したい。
—————————————————————————————–蔡総統2期目へ 民主主義の台湾と連携を【産経新聞「主張」:2020年5月16日】
台湾の蔡英文総統が20日、2期目の就任式に臨む。今年1月、台湾の有権者による直接投票の結果、57%の得票率で再選された。
日本のすぐ隣で歴史的な結びつきも深い台湾が自由選挙により政治リーダーを選ぶ民主主義を、さらに成熟させていく重要な通過点である。
蔡政権は、中国・武漢発の新型コロナウイルスの感染症に対して先手先手で対策をとり、世界でも有数の実績を挙げている。台湾の人口は約2400万人で人口密度も高いが、累積の感染者数は海外から戻った人を含めても500人に満たない。
中国は世界に先駆けて新型ウイルスの感染症を収束させたとして共産党独裁の政治体制に優位性があると宣伝に努めている。だが、中国の対策は人権を無視した強権的な手法を駆使したもので、情報公開も不十分だ。
中国の隣に位置する台湾が、民主主義のもとで新型ウイルスを見事に抑え込んでいるのは世界的にも極めて大きな価値がある。
世界保健機関(WHO)への加盟を妨げられるなど、台湾は中国の圧力によって国際社会から孤立を余儀なくされている。
高い支持率を得て2期目に入る蔡氏は、感染症対策の実績や、自由と民主主義を奉じている点を前面に出して、国際社会での存在感を高めてもらいたい。
日本や米欧など民主主義の国々は、感染症対策を学ぶことを含め台湾とさまざまな分野で協力を強めていくべきだ。
そこで重要になってくるのは台湾を中国の軍事的圧力から守ることだ。九州から沖縄、台湾、フィリピン、カリマンタン(ボルネオ)島へと連なる「第一列島線」は民主主義のラインだからこそ堅い守りが実現できる。
中国軍が南シナ海で台湾が実効支配する東沙(英語名・プラタス)諸島の奪取を想定した上陸演習を計画していることが明らかになった。中国の海空軍は最近、台湾周辺で空母「遼寧」や航空機の活動を活発化させている。
これに対し、横須賀を母港とする米イージス駆逐艦が台湾海峡を航行した。中国の軍事的圧力を相殺し、台湾の民主主義を守るねらいがある。
日本は蔡総統が呼びかけている日台安全保障対話を実現するなど連携を深めていくべきだ。
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