台湾のマスク生産量は6日から1日1500万枚へ 欧米などに1000万枚寄贈

 日本や台湾では、風邪を引いたときなどはマスクをかけることが当たり前になっている。主に自分の風邪を他人にうつさないためだ。風邪を引いている人から身を守るためでもある。飲食店関係者などは、飛沫を飛ばさないためにマスクをかけることもよくある。日本人には見慣れたマスク姿だ。

 ところが、欧米ではマスクの着用の習慣がないという。それは世界保険機関(WHO)の指針に「健康な人にマスクは不要」とあるからだそうだ。産経新聞は下記のように報じている。

<仏政府の「マスク不要」指針は、「健康な人にマスクは不要」としてきた世界保健機関(WHO)の指針に沿ったものだった。だが、米欧の医療関係者からマスクの効用を指摘する声が相次ぎ、WHOも3日、「他人に感染させる可能性は低くなる」と一定の効用を指摘した。>(4月4日付「『マスク』習慣ない欧米で相次ぎ方針転換 各国メディアがマスク文化を分析」)

 日本人からすると、なんとも不可解なWHOの指針だ。

 台湾の蔡英文総統は4月1日午前に緊急記者会見を開き、欧米各国や国交国にマスク1000万枚を寄贈すると表明した。

 中央通信社は「イタリアやスペインなどヨーロッパ諸国に700万枚、米国に200万枚、外交関係を結ぶ国々に100万枚を寄贈する。欧州委員会のフォンデアライエン委員長によると、EU加盟国には560万枚贈られる。台湾から米国にはこれ以外に、防疫の協力枠組みに基づき、週10万枚を提供する」と報じた。

 本誌でお伝えしたように、台湾大医学部で公衆衛生の修士号を取得し医師として働いた経験もある陳其邁・行政副院長は沈栄津・経済部長と連携して今後のマスク需要の拡大に備え、1月の春節休暇返上で各方面を駆けずり回ってマスク生産を整えた。台湾政府も1月24日にマスクの輸出停止を表明した。

 その初動の早さが功を奏し「感染が広がり始めた今年初頭の生産量は1日当たり188万枚」だったが、「現在(4月4日)は1300万枚を突破。6日からは1500万枚製造できるようになる」と下記に紹介する中央通信社は伝えている。

 つまり、マスク増産が進んで、国内の需要は十分にまかなえるようになったため、蔡英文総統は国内需要をまかなえるようになったので「他国への人道的な支援」を表明したのだった。台湾が欧州に提供することにしたマスクの数量は、中国側の支援物量の3倍を超えるという。

 もちろん、朝日新聞が「『マスク外交』を通じて台湾の国際社会での存在感をアピール」し「積極的な国際協力で、WHO参加への機運を高めたい」と報じ、韓国のハンギョレ新聞も「台湾も“マスク外交”に本格的に乗り出した」として「中国の要求によって加盟国の地位を失った世界保健機関への再加盟を狙った世論戦とみられる」と報じたように、WHO参加(再加盟)を狙ってのことかもしれない。

 しかし、このような「マスク外交」といういい方は、WHOから医療情報を得られず、独自に防疫態勢を取らざるをえない台湾の苦境にまで視野が届いているとは思えない。また、毎日新聞が伝えるように「1月下旬、全土のマスク工場に予算を投じて生産ライン増設に着手した。労働力不足は軍人を動員して補って」までマスク増産に努めている台湾の苦労を掬い上げてもいない。毎日は「1日1300万枚の生産能力は、世界有数」とも報じている。

 朝日新聞やハンギョレ新聞の報道ぶりには、残念ながら、マスクを海外に支援するまでに至った台湾への共感が読み取れない。ハンギョレ新聞は「中国側は『伝染病状況を利用して分離独立を図る不純な政治的意図』だと激しく非難した」とも伝えている。蔡英文総統の表明については「世論戦とみられる」と推察しながら、中国側の「不純な政治的意図」という発言にはなんの推察もコメントもない。

—————————————————————————————–台湾のマスク生産量、1日1500万枚へ 増産前の約8倍に成長【中央通信社:2020年4月5日】

 (台北中央社)経済部(経済省)が4日発表したところによると、台湾での医療用マスクの生産量は6日以降、1日当たり1500万枚に達する見通しだ。マスクはこれまで輸入に依存していた台湾。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、官民一体で増産に取り組んだことが奏功し、生産量は過去の約8倍に成長することになる。

 感染が広がり始めた今年初頭の生産量は1日当たり188万枚にとどまっており、現在は同1300万枚を突破。6日からは1500万枚製造できるようになるという。増産で国内の需要を満たせるほか、感染状況が深刻な国々への寄贈も可能になり、台湾と国交を結ぶ国やヨーロッパ諸国、米国などに計1000万枚提供することがすでに決まっている。

 医療用マスクには、ウイルスをろ過するためのメルトブロー式不織布が使用されている。需要の急増で価格が世界的に高騰しているが、台湾の大手メーカーは政府のマスク徴用政策に合わせ、国内への供給を優先する姿勢を見せていた。これに対し、蔡英文総統らは謝意を表明している。

(劉ハイ呈/編集:荘麗玲)

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