4月14日、台湾の新規感染者は3月9日以来、36日ぶりにゼロだったことをお伝えしたが、4月16日と17日もゼロだった。感染者総数は395人、死者は6人に留まっている。
台湾が武漢肺炎の封じ込めに成功していることを受け、蔡英文総統は米誌「TIME」(4月16日付電子版)に「President of Taiwan」という肩書の下「わが国COVID-19の大発生をどのように防いだか」(How My Country Prevented a Major Outbreak of COVID-19)と題し寄稿している。
◆President of Taiwan: How My Country Prevented a Major Outbreak of COVID-19 【TIME:APRIL 16, 2020】 https://time.com/collection/finding-hope-coronavirus-pandemic/5820596/taiwan-coronavirus-lessons/
台湾の「中央通信社」は4月17日、その内容について下記のように報じている
<寄稿では、台湾の感染者数が14日までに400人未満に抑えられていることを紹介した上で、成功の背景には医療専門家や政府、民間、社会全体の連携があると言及。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓が生かされたと説明した。先手を打って対策を講じた具体例として、中央感染症指揮センターの早期設置やセンターによる市民への情報提供、医療用マスクの生産・供給管理などを挙げた。
また、「台湾は世界保健機関(WHO)や国連から不当に排除されている」と現状に触れた上で、「台湾は製造業や医療、技術分野の強みを生かして自ら進んで世界に協力しようとしており、協力する能力を有している」と訴えた。>
台湾は欧米や日本にマスクの寄贈も行っており、中国政府はこれを「伝染病状況を利用して分離独立を図る不純な政治的意図がある」と非難している。これまた中国お得意のレッテル張りで、自分たちの意に染まない対象には「分裂主義者」や「分離独立主義者」と決めつけるのだ。
これは中国の世論戦の常道でもあるが、世界はこのような中国の手法をとっくに見抜いていて、ニューズウィーク誌は「皮肉なもので、中国が『コロナに勝った』と虚勢を張れば張るほど、独自の対応で感染拡大を防いだ台湾の実績が際立つ」と指摘し「宣伝戦で最終的にものをいうのは発信する情報の信憑性だ。今までの経緯を見る限り、透明性でもスピード感でも軍配は台湾に上がる」と記す。下記にその全文をご紹介したい。
—————————————————————————————–コロナ対策の優等生、台湾の評価が急上昇Taiwan Scores Points in Virus Battle【Newsweek日本版:2020年4月17日】
◆新型コロナウイルスの封じ込め成功で注目を浴びる台湾のおかげで 中国の自画自賛プロパガンダが台無しに
しばらく新型コロナウイルスへの対応に追われていた中国が、ここへきて大規模な宣伝戦を再開している。ともかくも感染拡大を食い止めた強引な手法を自画自賛し、自らの統治モデルの成功例と喧伝して国際世論を味方に付けようとする試みだ。
習近平(シー・チンピン)国家主席も「人類の未来を分かち合う共同体」という理念を持ち出して、「責任ある大国」として恐怖のウイルスと戦う姿勢を強くアピールしている。まだ感染拡大の続く国々に向けた「マスク外交」や医療スタッフの派遣なども、大々的な宣伝戦の一環と言える。
アメリカや欧州諸国のような民主主義陣営が感染拡大の阻止に苦戦するのを尻目に、中国は強権的な隔離・封鎖措置を打ち出し、非常時における独裁体制の強みを見せつけた。しかし民主主義陣営でも韓国やシンガポールは素早い対応でウイルスの封じ込めに成功し、「中国モデル」だけが唯一の選択肢ではないことを立証している。
中国側がとりわけ神経をとがらせているのは、1月に再選を果たしたばかりの蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる台湾の成功例だ。4月11日の時点で台湾の感染者数は382人、死者は6人にとどまっている。中国との地理的な近さを考慮すれば特筆に値する成果だ。
台湾は中国に対抗して独自の「マスク外交」も立ち上げ、1000万枚のマスクを感染拡大の深刻な国に寄付すると発表した。また医療面での支援を提供するため、チェコなどの諸国とパートナーシップを結んでもいる。日頃から外交的に孤立しがちな台湾にとって、こうした関係構築の意味は大きい。
◆中国の虚勢とは裏腹に
欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長もツイッターで、台湾によるマスク寄贈に感謝の意を表した。アメリカも台湾のウイルス封じ込めと海外援助の姿勢を称賛。WHOへの加盟を求める台湾の訴えを支持する声も高まっている。
中国としては蔡の人気に水を差し、与党・民主進歩党に根強い台湾独立の動きを牽制したいところだろう。しかし、今のところ打つ手がない。だから口先で非難を繰り出すのみ。台湾独自のマスク外交を「祖国との対立をもたらす」危険な挑発と決め付けたり、「たかがマスク200万枚で台湾を民主主義の手本とたたえるとはアメリカも落ちたものだ」と八つ当たりするのが関の山だ。
皮肉なもので、中国が「コロナに勝った」と虚勢を張れば張るほど、独自の対応で感染拡大を防いだ台湾の実績が際立つ。中国は今も医療物資の「寄付」と称して実際には輸出をしている。支援先の国を過去の「忠誠度」に応じて選別してもいる。外交官は口を開けばアメリカを非難しているから、習の言う「人類共同体」はますます空々しく聞こえる。
中国の強権的な隔離政策が有効だったのは専門家も認めるところだが、それを称賛する声よりも初期段階での情報隠蔽や死者数の過少申告を非難する声のほうが大きい。
宣伝戦で最終的にものをいうのは発信する情報の信憑性だ。今までの経緯を見る限り、透明性でもスピード感でも軍配は台湾に上がる。
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