トの若宮清氏について取り上げている。
若宮氏は大陸側の厦門との間に “金厦大橋” を架けるのが顧問として第一になすべき
特命任務だという。それに対して、宮崎正弘氏は「橋を架けるのは台湾にとって、島を大
陸側に明け渡すのと同じ」と批判する。
金門島は中国国民党の牙城。この橋を架けたらどうなるのか、「中国政府を利するだけ
にはならないか」という週刊新潮の杞憂はよく分かる──。 (編集部)
「金門島」政府の顧問に就任した「若宮清」の役割
【「週刊新潮」4月26日号(4月19日発売)】
中国大陸から数キロの距離なのに、台湾が実効支配する金門島。その政府の顧問にジャ
ーナリストの若宮清氏(57)が就任した。「大陸との間に橋を架ける」と意気込むが、中
国政府を利するだけにはならないか。
表向きはこの島、中国の福建省泉州晋江市に属しているのだが、
「人口7万7000人、台湾の続治下にあります。50年間の日本支配を受けずに国民党がその
まま支配し続ける唯一の領土なのです」
そう語る若宮氏は、フィリピンのアキノ氏暗殺の目撃者として知られると共に、中国要
人と長年交流し、『中国人の面の皮』なんて著書もあるほど、その“厚さ”について熟知
する人物。金門島との関わりはというと、
「昨年末、奄美大島で魚を養殖しているNGOが台湾の養殖漁業を視察するのをコーディ
ネートし、訪れたのが金門島の養殖業者でした。県長(知事)と会談すると“魚もいいが
、我々は大陸に橋を架けたい”という。私が“陳唐山秘書長(台湾の官房長官)に会う”
と言うと、ぜひ橋の話をしてくれと言われまして」
なんでも、金門県の幹部連中は無党派だったり国民党だったりで、民進党政権と話がで
きないのだとか。
「陳氏に伝えると、陳水扁総統はやや慎重という。そんな経緯があって県長から“県政府
の顧問になってください”と頼まれ、3月7日付で任命されたのです」
ただし、無給だそうだが。
「台湾の圧力をかわす」
大陸側の厦門との間に架けるという“金厦大橋”は、全長8・2キロ。建設費は300
億円だそうで、
「私の特命は、第1にこの橋を架けること、第2に名産の金門コーリャン酒を日本にPR
すること、第3に日本人観光客の誘致です」
今も金門島からは、台北まで飛行機で1時間かかるのに、人口150万の厦門までは、
1日に20往復あるフェリーでわずか40分。橋が架かって10分で行き来できるようになれば、
「経済効果はかなりのものになるでしょう」
まあ、そうかもしれないが、橋なんて中国を利するだけではないのか。
「陳総統は橋の建設にびくびくしておられるが、心配ない。橋ができても共産主義が蔓延
(はびこ)るなんてことはない。むしろ福建省の連中に民主主義を教えてやる。共産党幹
部と知り合いになって、“台湾武力解放なんて馬鹿げたことはするな!”と説得すればい
いのです」
が、中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、
「金門島は中華思想に固まった島です。夜には対岸から漁民がやってきて魚介類を売りま
すが、取引はすべて人民元。いわば大陸の経済的な植民地です。そもそも島民に台湾への
帰属意識は薄く、橋を架けるのは台湾にとって、島を大陸側に明け渡すのと同じです」
と反論。若宮氏の顧問就任を報じた公営紙『金門日報』にも、こうあるのだ。
<台湾中央政府は台湾側の資金流出と大陸資金の進入を恐れ、大橋の建設を歓迎していま
せん。国際協力を表面に打ち出すことで台湾政府の圧力をかわすことができ……>
いわば、それが若宮氏への期待。やっぱり中国人の面の皮は厚いようですぞ。