自ら高めた中国恐怖症(フォビア)で自縄自縛に陥った中国  黄 文雄(文明史家)

自ら高めた中国恐怖症(フォビア)で自縄自縛に陥った中国  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2023年1月4日】https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。*原題は「次は『煙花革命』? 国内の感染者と不満を海外に転嫁しようと必死の中国共産党」でしたが「自ら高 めた中国恐怖症(フォビア)で自縄自縛に陥った中国」と改題したことをお断りします。

 みなさま、明けましておめでとうございます。黄文雄です。

  今年がみなさまにとって、より良き年であることをご祈念申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 中国ではこれから旧正月・春節がやって来ますが、「白紙革命」の次に「煙花革命」がやってくるという観測が上がっています。中国ではいまだ感染爆発が収まらず、大混乱が続いていますが、中国政府はこの混乱を海外へと輸出し、さらには国民の不満を海外へと向けさせようと画策しています。

 今週のニュース分析は、この点について解説しました。

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◆貧富格差に民衆の不満が爆発して「白紙革命」から「煙花革命」へ

 中国政府のゼロコロナ政策に抗議して白い紙を掲げる「白紙革命」以来、中国全土ではさまざまな抗議活動が続いていますが、大晦日の江蘇省南京市では、多くの群衆が警察の封鎖を突破して、新街口広場に設置してある革命の父・孫文像の前に集まり、献花を行い、風船を飛ばすという「事件」が起こりました。いわば中国共産党に対する「革命」をほのめかすような行動です。

 さらに1月2日の夕方には、河南省周口市鹿邑県で市民が年越しの「お祝い花火」を打ち上げたことから警察が出動、市民との大規模な衝突が発生し、パトカーが破壊・横転されるという事態にまで発展しました。

 このように、新年にかこつけて禁止されている花火を打ち上げて中国政府への不満を示す抗議行動は、「煙花革命」と呼ばれています。1月末には中国の本当の正月、旧正月がやって来ますが、中国当局は「お祝い」にかこつけて政府への抗議を示す花火打ち上げが各地で起こる可能性があると警戒しています。  いくらゼロコロナ政策の緩和を行ったところで、市民の不満は高まるばかりです。「白紙革命」が中国政府を多少動かすことに成功したことで、民衆側にもさらなる要求を突きつけようという気持ちが生まれているのかもしれません。

 もちろん、新型コロナの感染爆発が止まらず、中国政府側の対応が追いついていないことも一因です。日本を含めた諸外国で、中国人によるかぜ薬の買い占めが横行していることは、すでにニュースなどでご存じの方も多いでしょう。

 フィナンシャル・タイムズによれば、先月14日から中国市場でファイザー社製の経口薬パックスロビッドの参入が認可されたところ、中国の富裕層による買い占めが横行、ほとんどの一般人には入手できない状況になっているとのことです。

 しかも、闇市で35万円以上に高騰した値段で売られ、賄賂として使用されているということです。

 ある湖北省武漢中央病院には、先月27日の時点で3012人の入院患者、そのうち1821人は重症であるが、毎日20箱しかパックスロビドは用意されていないとのこと。

 武漢では、先月中旬に医療スタッフや介護スタッフの感染率が70%を超えたと報告され、医療スタッフの家族の高齢者の多くが高いリスクを抱えながら薬を手に入れることができませんでした。 しかし、幹部病棟の人たち、特に特別な医療保障を受けている人たちは、簡単に薬を手に入れることができ、症状があればいつでも服用できるため、多くの医療スタッフから強い不満の声が上がっているとされています。

 これまでも、共産党幹部や富裕層ばかりが優遇されている現状に、市民は強い不満を抱いてきました。だから習近平は「共同富裕」(貧富の格差を是正し、すべての人が豊かになる)というスローガンを掲げたわけですが、新型コロナという命の問題に直面して、その格差が露骨に表面化してしまいました。「白紙革命」をきっかけに、これまで抑圧されてきた不満が一気に飛び出しつつあるのが現状なのです。

◆各国の規制強化を批判する中国政府の本音

 もちろん中国共産党は反政府デモの取締を強化していますが、一方で、不満の矛先を諸外国に向けさせようともしています。中国からの渡航者に対して、諸外国が規制を強化していますが、中国外務省はこれを「政治的」だと批判し、報復措置を取ると述べました。

 中国政府としては、旧正月を前にして、不満分子を国内から追い出したいということなのでしょう。そうすれば海外で勝手に薬を買い占めてくれますし、また社会不安の原因となっているコロナ患者も海外に「輸出」できます。

 なにしろ、台湾では1月1日から2日まで、中国発台湾着の航空便4便の搭乗者のうち、27.8%が新型コロナ感染者と確認されています。中国からやって来る4人に1人以上が感染者なのです。イタリアでは中国発の入国者の陽性者の割合が38〜52%と半数近くにもなっているといわれています。

 韓国では、海外から入国してきた新型コロナ陽性者の76%が中国からのものだと報じられています。日本でも、昨年12月31日には、空港検疫でコロナ陽性が確認された92人のうち、90人が中国滞在者だったことが発覚し、中国からの渡航者に感染者がいかに多いかということが明らかになっています。

 「中国からの渡航者の規制をするな」という中国政府のほうが無理な話ですが、中国政府としては、「諸外国が中国を差別している」と憎悪を煽り、さらには「中国のコロナ蔓延は海外からもたらされた」とかつてと同じように責任転嫁を目論んでいると考えられます。

◆ゼロコロナ政策を自画自賛した直後に「煙花革命」

 実際、中国からコロナ陽性者の入国が増加している韓国では、やはり他国同様、防疫措置を強化しましたが、これに対して中国では早くも「韓国不買運動」が起こっており、事実上の報復措置が展開されているようです。このようなとき、真っ先に中国のターゲットとなるのが韓国です。

 一方、アメリカ国務省の報道官は中国外務省の批判に対し、中国での陽性者が急増しているため、中国人旅行者に新型コロナのスクリーニング陰性証明の提示を求めることは、非常に確かな公衆衛生上の配慮に基づく、完全に科学的アプローチだと答えたそうです。しかも、中国から報告された疫学的データとウイルス配列データの透明性の欠如が、深刻な公衆衛生問題を引き起こしているとも指摘しています。まさに国内の矛盾を外に転嫁するやり方は、これまでの中国共産党の手法そのものです。

 同時にアメリカ政府は、中国に新型コロナワクチンを寄贈する用意があることを改めて強調しています。台湾の蔡英文総統も、1月1日の新年の談話で、中国へのコロナ対策支援を表明しました。

 もちろん中国が、これらの申し出を受け入れるはずがありません。習近平政権にとって新型コロナは「完全に制御できている」はずのものだからです。中国製ワクチンが効かないなどということも、絶対に認めることができません。

 実際、12月31日に習近平が行ったテレビ演説では、ゼロコロナ政策について「未曾有の困難に打ち勝った」と事実上の勝利宣言をしています。そのうえで、「防疫措置は新たな段階に入った」「依然、大変な局面にあるが、団結こそ勝利だ」などと述べています。

 要するに、習近平体制は新型コロナに打ち勝ち、新たな局面においても習近平体制で団結すべきだと力説しているのです。

 前述した、南京での孫文像への市民集結や、鹿邑県での警察と市民の衝突は、この演説の直後に起こったわけです。たしかに市民は団結しましたが、それは中国当局に対してであることは明らかです。

◆データ未公開により自ら高めた中国恐怖症(フォビア)で自縄自縛に陥った中国

 加えて、ゼロコロナを緩和させた中国政府は、新型コロナのゲノム塩基配列の解析を中止するなど、情報の収集や公開を急速に縮小させているため、世界では新たな変異株の出現を懸念し、「中国フォビア」ともいえる状況が広がっています。

 ちなみに、台湾でも、中国からの渡航者を対象に、1月1日からコロナ検査を実施しており、日本やアメリカなど他国と同様の措置に追随しています。とはいえ、中国政府自体、2019年から中国人観光客の台湾訪問を禁止しており、この措置の対象となるのは、中国に在住する台湾人とその配偶者や子供が大半だと見られています。

 むしろ、台湾人が非常に警戒しているのは、日本を訪問する中国人が激増していることです。前述したように、中国がゼロコロナ政策を緩和させ、海外渡航も再開させたことにより、ようやく台湾人が訪れるようなった日本で、中国人による感染爆発が起こることを非常に懸念しているわけです。とくに桜の季節に、日本が中国人で激混みになるのではないかという恐れが出ています。

 それはともかく、武漢発のパンデミックが拡大した3年前と同様、世界的な中国離れが再び加速すると思われる一方、中国は感染の責任を海外へ転嫁するという「いつか来た道」がまた繰り返されようとしています。

 ただし1点だけ違うのは、中国国内での不満が押さえつけられなくなってきているということです。それだけに、中国当局の対外強硬路線がさらにエスカレートする可能性が少なくありません。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

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