白冷圳誕生80周年 新社台地に根付いた友情  盧 千恵

白冷圳誕生80周年 新社台地に根付いた友情  盧 千恵
本誌で北國新聞の記事を紹介しつつ、烏山頭ダムを造った八田與一の後輩に当たり、台
中市内に巨大な逆サイホンの水管を敷設し、白冷圳(はくれいしゅう)」と呼ばれる
農業用の水路を造って農地を潤した日本人技師、磯田謙雄(いそだ・のりお)について紹
介した。

 白冷圳は1932(昭和7年(1932年)に完成し、その10月14日を通水記念日とし、今年
は15日に通水記念式が行われた。

 許世楷・前駐日台湾代表(駐日台湾大使に相当)夫人で児童文学者の盧千恵(ろ・ち
え)さんは「SANKEI EXPRESS」に毎月1回「盧千恵のフォルモサ便り」を寄
稿されている。今月はその白冷圳をテーマに書かれている。9月はじめ、江口克彦・参
議院議員を団長とするみんなの党所属の議員6名を白冷圳にご案内したという。下記に
ご紹介したい。

 ちなみに、通水記念日の10月14日、盧千恵さんは、日本から訪ねてきたメイクアップア
ーティストで日台文化芸術交流協会理事長のトニータナカ氏(映画「海角七号」主演女優
の田中千絵さんの父)を夫の許世楷・前台湾駐日代表らと案内して白冷圳を訪れてい
る。

 なお、盧千恵さんは白冷圳の圳を「セン」と読まれている。中国の深圳は
日本語では「しんせん」と読む。確かに手元の辞書でも、圳は「しん」や「せん」と
読んでいる。

 ただ、八田與一が造った烏山頭(うざんとう)ダムの給排水路は、日本時代から嘉南大
圳(かなんたいしゅう)と読み慣わされ、また台湾では[土卑]圳を「ひしん」や
「ひせん」ではなく「ひしゅう」と読んでいること、さらに日本で最初に八田與一を紹介
した古川勝三(ふるかわ・かつみ)氏もその著書『台湾を愛した日本人』でも嘉南大[土
川]の圳に「しゅう」と振り仮名を振っていることから、本誌では白冷圳は「はく
れいしゅう」と読むことをお断りする。恐らく慣用読みなのだろう。


白冷セン誕生80周年 新社台地に根付いた友情
【SANKEI EXPRESS:2011年10月21日「盧千恵のフォルモサ便り」】
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111021/chn11102110580001-n1.htm
写真:磯田謙雄技師が手がけた灌漑用の送水管=9月8日、台湾・台中(藤見尚子さん撮影)

 先日、江口克彦先生を団長に、みんなの党の8人の方たちが、台湾訪問の忙しい時間を割
いて、台中へお見えになるとの連絡がありました。満里子ポワンボフ・フランス駐台湾代
表夫人が、著書『Taiwan 楽しいサプライズ!!』の第1行目に「台湾には故宮博物館しかな
いと思っている?」と問いかけていますが、わたしも同感です。

 台中市内には、緑濃く水の清い台中公園や、やさしい微笑をたたえた大弥勒菩薩のある
宝覚寺などがあり、郊外には楽しい学習のための霧峰地震公園があります。

 この度、先生方には台中の新社地区に大きな貢献をしてくれた磯田謙雄(のりお)技師
を紹介するため『白冷圳』をメーンに選びました。

◆大規模な灌漑工事

 台中の新幹線駅から、50分ほど郊外の道を車で走ると、白冷センのある新社台地に到着
します。圳というのは、土辺に川をつけた珍しい字で、「田んぼのほとりの溝」と、
台湾の辞書に出ていました。

 この新社は高台にあり、気候が涼しく、病虫害も少ない農耕地ですが、雨水だけに頼る
乾燥畑でした。砂糖の輸出が台湾の経済を潤して以来、台湾総督府は「文化の高低は砂糖
消費の多寡によって知られ、糖業の消長はサトウキビ苗の優劣によってきまる」と、サト
ウキビ苗床に適しているところをさがし、この新社が茎の太いサトウキビの苗作に適して
いるとの調査報告を受けました。

 嘉南大圳、烏山頭(うさんとう)ダムを設計し作り上げた八田(はった)与一技師
(1886〜1942年)と同じ金沢出身、その工事にもたずさわった磯田謙雄技師が、新社の奥
山、八仙山に沿って流れる水量豊富な大甲渓から取水して、814ヘクタールの土地を灌漑
(かんがい)する企画設計をしました。

 1927年、当時の日本帝国議会で145万円(今の55億円相当)の予算が通り、翌年工事が開
始されました。22のトンネルと14の水路橋、さらに、大甲渓中流の白冷台地と新社台地の
高低差(22.6メートル)を利用して、水を移動させる3つの逆サイホン装置も作りました。
地形の変化を使い、電気などの動力を一切使わない送水路が出来上がったのです。

 日本から船で運ばれてきた鋼鉄の送水管は、直系1.2メートル、鋼壁1.2センチの立派な
もので、同行した若い教授が、当時の日本の鋼鉄技術の高さに感心していました。白冷[土
川]の工事は1932年に完成しました。

 1999年の大震災で、山に変動が起こるまで、68年間絶え間なく、新社地区に灌漑と生活
用水を送りこんできたと、台中の農田水利局の幹部は誇らしげに、自分の身内のことを話
すように、日本の国会議員に話していました。

 工事にたずさわった日本人は簡素な宿舎に住み、台湾人と一緒になって、堅固で品質の
高い基礎工事を行ったと証言を残しています。

◆生活に密着した用水

 大震災で、白冷台地と新社台地が同じ標高554.99メートルにまで盛り上がり、逆サイホ
ンが使えなくなりました。そのときになって、3万人の住民は、当たり前のように使ってい
た白冷圳から流れてくる水が、どれほど、自分たちの生活をうるおしていたかを再認
識したのです。

 若い人たちは「おいらが村」の歴史、文化を研究し始めました。夫の許世楷は、「金沢
の有名な兼六園を訪れたとき、近くの川から園内の霞が池に貯められた水は、さらに逆サ
イホンの道理を使い、すぐそばにあるお城に用水として引きこまれていたのだと、説明を
聞いたことがあるよ」と、若い人たちに話し聞かせていました。

 わたしも、磯田技師が新社の台地にたたずみ、故郷の兼六園と金沢城を思い浮かべてい
る姿を想像しました。

 大震災の後、毎年、通水が始まった10月14日には記念会が持たれるようになりました。
朝早く村人たちは大人も子供も、夜のお誕生会の前祝いに白冷圳の清掃をしました。

 特に、今年は白冷圳誕生80周年になりますので、磯田謙雄技師についての記念碑を
建立したいと、新社の人々に碑文のための資料探しを頼まれました。金沢出身の岡田直樹・
参議院議員にお願いしたところ、詳しい資料が金沢大学に留学中の金湘斌さんを通して送
られてきました。

 旭川観光大使の藤見尚子さんが、「磯田さんが新社の地に残したものと、それを大切に
してくれている台湾人の気持ちを日本の人たちに知ってもらいたい」と、話していたのが
心にこだましています。


盧千恵 許世楷・元台北駐日経済文化代表処代表の令夫人。1936年台中生まれ。60年国際
基督教大学人文科学科卒業後、国際基督教大助手。61年許世楷氏と結婚。夫とともに台湾
の独立・民主化運動にかかわったことからブラックリストに載り帰国できなかった。台湾
の民主化が進んだ92年に帰国し、2004年〜08年、夫の駐日代表就任に伴って再び日本に滞
在。夫との共著に『台湾という新しい国』(まどか出版)がある。

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