日本が台湾に防衛省の「現役」職員を派遣 今夏にも常駐

日本が台湾に防衛省の「現役」職員を派遣 今夏にも常駐

 天安門事件から33年を迎えた本日、産経新聞の朝刊1面には驚かされた。縦見出しの「台湾に現役防衛省職員」というゴチック文字が否が応でも飛び込んできた。天安門事件ではなく、日本政府が今夏にも台湾の日本台湾交流協会台北事務所に防衛省の「現役」職員を派遣する方針を固めたとの報道だった。

 実は、本会の2017年の政策提言はまさにこのことで「日本台湾交流協会の防衛担当主任を増員せよ」だった。ただし、これは内々に進めていたことで公表はしていなかった。

 公表したのは2021年の政策提言「日台の安全保障協力体制強化のための4つの提言」で、4つの提言の1つとして「駐台防衛調整担当部門の強化」と題して下記のような提案をしていた。

<日本台湾交流協会台北事務所に配置されている防衛担当の「主任」について、名称を「防衛調整担当主任」と改め、現行の退職自衛官から現役自衛官の出向に変更するとともに、陣容は現行の1名から陸・海・空の現役自衛官による3名体制への増員を提言する。>

 この提言には補足説明として「駐台防衛調整担当主任の現状と強化の必要性」を加えている。産経新聞が報じている米国在台協会(AIT)の台北事務所に断交後初となる現役の陸軍大佐を派遣したことなど、さらに詳しい現状を説明し「この米国の先例に倣い、日本も国交を有する国などへの防衛駐在官と同様、台湾の防衛担当主任は陸・海・空から現役自衛官を出向させ、3名体制とすべきが現実的であろう。もちろん、任期が終われば速やかに自衛隊の所属部署へ復職できるものとする」と提案している。

 今般、政府が文官といえど現役の防衛省職員を派遣し、日本台湾交流協会台北事務所の防衛担当者を増員して2名体制に踏み切ったことに敬意を表したい。

 なお、本誌でも2月8日号と2月13日号において、和田有一朗(わだ・ゆういちろう)衆議院議員が2月8日の予算委員会においてこの問題を取り上げて質疑していたことを紹介している。改めて別途ご紹介したい。また、本会の2021提言の全文は下記からご覧いただきたい。

◆2021政策提言「日台の安全保障協力体制強化のための4つの提言」(2021年3月28日) http://www.ritouki.jp/index.php/info/20210630/

—————————————————————————————–台湾に現役防衛省職員 政府、夏にも常駐 情報収集を強化【産経新聞:2022年6月4日】https://www.sankei.com/article/20220604-DGSCQE6LIJMAJALYGNNGFIPHXA/?273369

 政府が対台湾窓口機関の台北事務所に防衛省の「現役」職員を派遣する方針を固めたことが3日、分かった。中国が台湾周辺での軍事行動を活発化させ、台湾海峡情勢の緊迫度が増していることを受けた措置で、今夏にも派遣する。台湾には現在、退職した自衛官1人が駐在しているが、情報収集能力の強化のため「現役」を派遣すべきだとの意見が関係者から出ていた。

 派遣するのは自衛官ではなく、「背広組」と呼ばれる文官職員1人。当面は現在駐在する元自衛官1人と合わせた2人体制とする。

 日本と台湾の間には1972年の日中国交正常化以降、外交関係がなく、財団法人の日本台湾交流協会の台北事務所が事実上の大使館業務を担っている。駐在する省庁の職員は同協会に出向して「民間人」の形をとり、現地の台北事務所に派遣される。外務省や経済産業省、警察庁、海上保安庁などからは現役職員が出向している。

 同事務所には、在外公館の防衛駐在官に相当する「安全保障担当主任」がおり、防衛省は将補で退職した自衛官を派遣してきた。96年の台湾海峡危機に際し軍事関連情報の収集が不十分だったことから2003年にようやく設けられたポストだが、政府は中国の反発を懸念し現役自衛官の派遣を避けてきた。

 しかし、中国が「台湾独立派」とみなす民主進歩党の蔡英文政権が16年5月に発足して以降、中国は台湾周辺海・空域での軍事活動を強化。台湾の防空識別圏(ADIZ)にほぼ毎日、軍用機を進入させるなど挑発行動を強めており、日米など先進7カ国(G7)が「台湾海峡の平和と安定の重要性」で一致している。

 こうした状況を受け、政府・与党内では、台湾当局との意見交換を含む情報収集の強化のため、派遣する職員を現役自衛官に格上げすべきだとの声が出ていた。関係者によると、政府は今回、日中関係への影響を考慮し現役とはするが文官にとどめる方針で、現役自衛官の派遣は今後の検討課題だという。

◆海峡緊張 米は多数の将校 https://www.sankei.com/article/20220604-MLECCNEBZZK2PFKB6UENIQBEBU/?695580

 政府が台湾の窓口機関事務所に「現役」の防衛省職員を派遣する方針を固めたことは、日本の安全保障上、前進といえる。台湾の軍事関連情報の必要性が高まる中、これまで退職自衛官1人の駐在にとどめていたことで、現地での情報収集や政府・各自衛隊との意思疎通に不安が生じかねないと指摘されていた。

 台湾初の総統直接選に中国が弾道ミサイルを発射して威嚇した1996年の台湾海峡危機を受け、日本は米国に先んじて台湾に元自衛官を派遣し情報収集を強化したが、その後の歩みは大きく異なる。

 米国は日本から2年遅れの2005年、対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)の台北事務所に断交後初となる現役の陸軍大佐を派遣した。だが、現在は国防総省の文官に加え陸海空の各軍と海兵隊に属する現役の将校が多数、常駐しているほか、01年以降、新型コロナウイルス禍での中断を除き台湾の年次演習「漢光」にも現役将校の視察団を派遣。近年の台湾海峡情勢の緊迫を受け、小規模ながら地上部隊の共同訓練を実施したとも報じられる。

 米国には台湾への武器供与などを定めた「台湾関係法」があり、法的根拠のない日本と単純な比較はできないが、台湾有事が起きれば日本は直接の影響を受けかねない。近年の台湾海峡の緊張を受け、台湾有事を想定した邦人退避計画の策定が必要なことは論をまたず、米国から台湾有事を想定した役割・任務分担を求められる可能性もある。

 こうした観点から台湾の安全保障当局との情報交換の必要性は高まっている。その際、日本側の担当者がより現状に即した専門知識を持っていることが望ましく、文官1人の追加派遣で対応できるかには疑問が残る。現役自衛官の派遣や人員の拡充など、検討していくべき課題は多い。

(田中靖人、市岡豊大)

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