日本が南太平洋のキリバスに大使館新設 ニューカレドニアには領事事務所

日本が南太平洋のキリバスに大使館新設 ニューカレドニアには領事事務所

 キリバス共和国は南太平洋に浮かぶ人口12万人ほどの小さな島。しかし、赤道付近に350万平方kmにわたって散らばっている33の島からなるため、世界第3位に相当する排他的経済水域を有しているという。

 ただ、海抜3.5mを越える島はほとんどなく、地球温暖化による海水位の上昇が深刻な問題で国土の半数以上が水没の危機に瀕している。そこで、フィジーに全国民が移住できる島を買ったほどだ。

 イギリスの植民地だったが1979年7月に独立。1980年に中国と国交を結んでいたものの、2003年11月に台湾と国交を締結。しかし、2019年9月16日のソロモン諸島との断交に続き、キリバスも20日に断交、中国と国交を結び直している。

 台湾政府によると、断交の直接のきっかけはキリバス側からの民間航空機購入の資金援助だったという。台湾側が贈与ではなく優遇貸付を提案すると、キリバスはこれを拒否。この間「中国政府はキリバスに対して、いくつかの民間航空機やクルーザーを寄贈することを約束し、キリバスに中国と国交を結ぶよう迫った」ことで、断交に至ったという。

 蔡英文政権が発足する直前の2016年3月にキリバスでも政権交代が起こり、中国はこのころから中国資本の漁業会社を通してキリバスとの接触を再開し、また商業投資を行うなどでキリバスに人員を常駐させ、キリバス政界への影響力を拡大させていったことで台湾との関係が冷え込んでいったという。

 本誌でたびたび触れているように、日本は近年、太平洋島嶼国家との関係を強化しつつある。

 今年も7月2日に1997年から3年ごとに開催している首脳級の「太平洋・島サミット」の第9回大会を開催し、9月2日には、防衛省が太平洋島島嶼国家の国防大臣や太平洋島嶼国家と関係の深い米国、英国、フランスなどの局長級実務者と「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」(JPIDD:ジェイピッド)をテレビ会議形式ながら初めて開催している。

 なぜ日本が太平洋島嶼国家との関係強化に力を入れているかというと、太平洋地域にまで手を伸ばし、ソロモン諸島やキリバス共和国と台湾を断交させた中国への「深刻な懸念」が背景にある。「自由で開かれたインド太平洋」を実現するためには、ハワイとオーストラリアの間に位置する太平洋島嶼国家がとても重要な位置づけにあるからだ。

 読売新聞は、日本の外務省はキリバスに大使館を新設する方針を固め、南太平洋のフランス領ニューカレドニアのヌーメアに領事事務所を新設する予定と報じている。小さな記事だが、とても重要な記事だ。通信社を含め他紙は報じていないようなので、下記に読売新聞の記事をご紹介したい。

 日本の太平洋島嶼国家との関係強化の姿勢にさらに力が入ってくるようだ。総理大臣が変わろうと、日米同盟を結ぶ日本にとって「自由で開かれたインド太平洋」構想を実現しようという姿勢に変わりはない。今後も太平洋島嶼国家と日本はどのように関係を強化していこうとするのか注視してゆきたい。

—————————————————————————————–南太平洋のキリバスに大使館新設へ…中国の影響力拡大に対抗【読売新聞:2021年9月5日】

 外務省は、南太平洋の島嶼(とうしょ)国キリバスに大使館を新設する方針を固めた。

 影響力を拡大する中国に対抗する狙いがある。数年以内の開設を目指す。

 キリバスは現在、フィジーにある日本大使館が所管しているが、独立の大使館を置き、職員を常駐させる。キリバスは2019年に台湾と断交し、中国と国交を樹立した。中国の支援で空港の修復を進めるなど、経済関係を強化しているとされる。

 このほか、南太平洋のフランス領ニューカレドニアのヌーメアに領事事務所、地中海の島国マルタに駐在官事務所の新設、カンボジアのシエムレアプ領事事務所の総領事館への格上げも予定している。

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