林芳正外務大臣がフィジーとパラオを訪問しソロモン諸島問題の懸念を共有

 ガダルカナル島に首都を置くソロモン諸島は、オーストラリアとアメリカを結ぶシーレーンの要衝にある。台湾と国交を持っていたが2019年9月16日に断交し、中国と国交を結んでいる。今年3月31日には、中国と安全保障協定の仮調印が終わり、今後は正式調印に向かうと発表し、中国の外務省は4月19日、ソロモン諸島と安全保障協定を締結したと発表した。

 これに対し「米ホワイトハウスは19日、日本、オーストラリア、ニュージーランドと前日にハワイで開いた太平洋島しょ国の支援に関する4カ国高官級協議で、安全保障協定について『自由で開かれたインド太平洋への深刻なリスクだとの懸念を共有した』と発表した」(毎日新聞)と報じられている。

 本誌では、ロシアのウクライナ侵略とジェノサイドの陰に隠れて、中国のこの動きは見過ごされがちだとして、何度かソロモン諸島と中国の安全保障協定に関する記事を掲載し、またもや中国の「長い腕」がソロモン諸島にまで延び、歴史的に深いつながりがあり、主要援助国でもあるオーストラリア、ニュージーランド、米国などの危機感を募らせていると指摘してきた。

 この問題は日本にとっても見過ごすことはできない。中国が構想する第2列島線の内側に日本は入っており、ソロモン諸島に中国の軍事基地ができ、海軍艦艇の補給拠点を築くことになれば、日本にとっても安全保障上の大きな脅威となるからだ。「自由で開かれたインド太平洋」への深刻なリスクともなる。

 そこで外務省は、4月25日から4月27日まで上杉謙太郎・外務大臣政務官を自衛隊機でソロモン諸島に派遣し、マナセ・ダムカナ・ソガバレ・ソロモン諸島首相と「太平洋島嶼国地域の安全保障環境について議論を行う中で、中国とソロモンとの間の安全保障協力協定についても議論を行い、上杉政務官から、日本として、本件を懸念をもって注視していることを述べつつ、日本の率直な考えを伝えた」(外務省)という。

 加えて、今度は林芳正・外務大臣が「地域の安定と平和を確保していくうえで極めて重要な地域だ」という認識の下、5月6日に羽田空港を出立し、7日にフィジー共和国、8日にパラオ共和国を訪問した。

 フィジー共和国のジョサイア・ヴォレンゲ・バイニマラマ首相兼外相とは「太平洋諸島フォーラム(PIF)における協力や中国とソロモン諸島の間の安全保障協力協定を含む太平洋島嶼国情勢について議論し、この地域の平和と安定のため、日本とフィジーが引き続き緊密に連携していくこと、また、米国、豪州、ニュージーランド等の関係国とも連携していくことについて確認」(外務省)したという。

 また、パラオ共和国のスランゲル・S・ウィップス・Jr・パラオ共和国大統領とは「日本とパラオの二国間関係の一層の強化及び『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた両国の連携強化の重要性」や「中国とソロモン諸島の間の安全保障協力協定を含む太平洋島嶼国情勢について議論し、この地域の平和と安定のため、関係国が引き続き緊密に連携していくことの重要性」を確認したという。

 ソロモン諸島と中国の安全保障協定は、南太平洋で軍事的影響力を拡大する足がかりになりかねない。

 日本は「日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)」の主催国である。2020年4月、防衛省は、地域における安全保障上の意見を交換する目的で、太平洋島嶼国家で軍を有するパプアニューギニア、フィジー、トンガの国防大臣、太平洋島嶼国家と関係の深い米国、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランスの実務者を東京に招待して主催する「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」(JPIDD)の開催を決めていた。防衛省が主催するのは初めてのことだった。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により延期されたものの、昨年9月2日、岸信夫・防衛大臣が議長を務めてテレビ会議形式ながら開催し「日・太平洋島嶼国国防大臣会合共同声明」を採択している。

 「自由で開かれたインド太平洋」の実現のためには、台湾とともに太平洋島嶼国家の協力が必要なことは言うまでもない。中国が太平洋島嶼国家へ足がかりを築く前に、太平洋島嶼国家との協力関係を強化するための日本の役割は小さくない。

 読売新聞は4月29日の社説でも「中国と南太平洋 軍事拠点化を防ぐ手立て急げ」を掲載し、「米国、豪州、日本は地域の平和と安定の維持に向け関与を強めるべきだ」と警鐘を鳴らし、今回の林外相のフィジーとパラオ訪問も、通信社の記事に頼ることなくオリジナルの記事を掲載している。下記にパラオ訪問の記事をご紹介したい。

◆外務省:林外務大臣によるバイニマラマ・フィジー共和国首相兼外相表敬[5月7日] https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/ocn/fj/shin6_000019.html

◆外務省:林外務大臣によるウィップス・パラオ共和国大統領表敬[5月8日] https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/ocn/pw/shin6_000020.html

◆防衛省:日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)について[2021年9月2日] https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/dialogue/jpidd/index.html?msclkid=0ac60fa4cf2e11ecb36760699d66d2cf

—————————————————————————————–中国・ソロモンの安保協定、林外相がパラオ大統領と「懸念を共有」【読売新聞:2022年5月8日】https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220508-OYT1T50084/

 林外相は8日、訪問先のパラオでスランゲル・ウィップス大統領らと会談し、中国がソロモン諸島と締結した安全保障協定に関する懸念を共有した。

 中国の軍事的台頭を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を強化することでも一致した。

 林氏は会談で、協定について「この地域の安全保障環境に大きな影響を及ぼしうる問題だ」と伝えた。パラオは台湾と外交関係がある親日国で、ウィップス氏らも同様の認識を示し、関係国と緊密に連携する方針を確認した。

 会談終了後、林氏は記者団に対し、「太平洋島嶼(とうしょ)国の安定と繁栄の確保のため、これまで以上に戦略的観点からの対応が必要だ」と指摘。そのうえで「(米・豪、ニュージーランドなど)同志国と、太平洋島嶼国の持続可能な発展に向けた具体的な協力を幅広く進めたい」と強調した。

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