武漢肺炎により防衛省初の「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」が延期

 1月17日、河野太郎防衛大臣が記者会見で「今年4月初め、第1週目頃になると思いますが、太平洋島嶼国地域の国防大臣を招待し、東京において国防大臣級会合を主催する予定です」と発表したことに驚いた。防衛省が主催する大臣級マルチ会合は初めてのことで、「自由で開かれたインド太平洋」の実現をめざしたものだという。

 会合の名称は「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」で「軍隊を有するフィジー、パプアニューギニア、トンガの3カ国から国防大臣を招くとともに、オーストラリアやニュージーランド、その他11カ国の太平洋島嶼国のほか、インド太平洋地域に関係の深い米英仏やカナダからも実務者を招き、安全保障上の課題について意見交換する」(朝雲新聞)と伝えられた。

 2月10日の記者会見で河野大臣は、この会合の名称は「Japan Pacific Islands Defense Dialogue 2020:Bridging the Blue Continent」で、略称は「JPIDD(ジェイピッド)」であることを明らかにした。

 それも4月5日のメイン会議をはさみ、4日に来日した国防大臣とバイ会談や夕食会、を開き、6日にも会議などを予定していたという。中国の習近平・国家主席の来日は4月7日と漏れ聞いていたので、その前に防衛省がこのような会合を開催することに驚かされた。

 外務大臣を経て防衛大臣に就いた河野大臣の考え方が奈辺にあるかが分かるような会合日程だ。また、安倍総理が会合実施を認めたことにも思いは及ぶ。日本が米国やオーストラリア、インドなどと共有する「自由で開かれたインド太平洋」の実現を期していることがよく分かる会合だ。もちろん、太平洋地域にまで手を伸ばし、ソロモン諸島やキリバス共和国と台湾を断交させた中国を意識しての会合でもある。

 だが、武漢肺炎の拡がりを受け、防衛省は3月5日「各国から大臣や高官を招く準備を進めることは不可能と判断」し延期する方針が明らかとなった。実に残念なことだ。

—————————————————————————————–防衛省、初の多国間大臣会合延期へ 新型コロナ、防衛交流にも影響【産経新聞:2020年3月5日】

 防衛省は5日、4月に予定していた同省としては初めての主催となる多国間の国防大臣会合を延期する方針を固めた。平成8年から毎年主催し、3月中旬の開催を予定していた国際会議も延期を決定。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国から大臣や高官を招く準備を進めることは不可能と判断したためで、防衛交流にも影響を与え始め、自衛隊と他国軍との共同訓練なども延期される可能性が出てきた。

 多国間の国防大臣会合は4月5日、太平洋島嶼(とうしょ)国で軍を持つパプアニューギニア、フィジー、トンガの国防大臣や米豪英仏など太平洋島嶼国と関係の深い国の参加者を東京に招き、安全保障上の課題に関する意見交換を行う予定だった。会合には島嶼国で影響力拡大を狙う中国を牽制(けんせい)する意味合いもある。

 アジア太平洋地域の国防省や軍の幹部らが参加し国防政策などで意見交換する国際会議「東京ディフェンス・フォーラム」も3月16〜19日の日程を延期する。

 自衛隊の他国軍への能力構築支援(キャパシティ・ビルディング)としては、初めてフィジー軍に対し3月11〜13日に都内で行う予定だった衛生分野の支援事業も延期を決めた。

 感染拡大が軍に影響を与えた例としては、米軍と韓国軍が3月初旬に予定された毎春恒例の米韓合同軍事演習を延期したことが挙げられる。演習は北朝鮮の軍事的脅威や挑発に対応するものだが、感染症で演習が延期されるのは初で、感染拡大は朝鮮半島の安保にも影響を及ぼし始めている。

 韓国軍には感染者がいるほか、多数の人員が隔離され、在韓米軍でも兵士の感染を確認。防衛省では「自衛隊や在日米軍で感染者が出れば訓練や任務に支障をきたしかねない」(幹部)と警戒感を強めている。

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