台湾地震で恩返しの応酬を繰り返す日本と台湾、政治利用を目論む中国  黄 文雄

台湾地震で恩返しの応酬を繰り返す日本と台湾、政治利用を目論む中国  黄 文雄
【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2016年2月9日】
http://www.mag2.com/m/0001617134.html

 台湾南部で2月6日に発生した地震では、多数の犠牲者が出ています。台南市の16階建てのビルの
倒壊では、いまだ100人以上が瓦礫の下に取り残されており、懸命の救助活動が行われています。
被害者の安否が気遣われます。

 日本政府は地震当日の6日夜には調査チームを高雄市に派遣、さらに、100万ドル規模の支援を表
明しました。これに対して、台湾では日本に対する感謝の声が渦巻いています。

 私も地震当日に、安倍首相がすぐに「あらゆる支援を行う」という談話を発表したことをテレビ
で見て、涙が出るほど感動しました。

 また民間でも日本の各地で募金活動が行われ、支援の輪が広がっていることは、日本の新聞も報
じていますが、台湾でも大きく報じられています。高須クリニックの高須院長が1,000万円の寄付
をしてくれた、3日もたたずに7,000万円が集まった、などが話題となり、ますます台湾人の心を癒
やしてくれています。私も台湾人として、感謝を申し上げます。

 日本でいち早く台湾への支援活動を展開してくれた理由として、「台湾人が3・11東日本大震災
の際に200億ドルを超える義援金を送ってくれたから、そのお返し」ということを挙げている人が
多いとのことです。

 しかし、そもそも台湾で東日本大震災への支援活動が非常に活発だったのは、もともと親日だっ
たということもありますが、1999年9月21日に台湾中部を襲った「台湾大地震」で、日本が各国の
なかで最大規模の緊急援助隊を最初に派遣してくれ、さらに、それに続く民間ボランティアと学生
ボランティアがぞくぞくと被災現場に到着したことでした。

 テレビを通じて見た日本の救援隊に対し、台湾の人びとが最も感動したのは、真っ先に駆けつけ
た日本救援隊がハイテク機器を駆使して瓦礫の下から生存者を探し出し、昼夜を問わず救助活動に
いそしむ一方、運悪く助からなかった遺体の前では整列して頭を垂れて黙祷するという一幕だった
のです。「死者への悼み」の姿が台湾人の心を打ったのです。

 そのため日本の救援隊が帰国するとき、飛行場に台湾人が詰めかけ、涙を拭う人たちであふれま
した。また、空港の税関職員といえばどの国もそっけない態度であることが通例ですが、このとき
の空港では、異例の総立ちで、敬礼で日本人救援隊を見送ったのです。これはじつに史上未曾有の
ことでした。そうしたことがあったので、台湾人は東日本大震災時に日本に恩返しがしたいという
気持ちが強かったのです。

 今回の台湾南部の地震では、日本から再び恩返しの支援が届きました。こうして日本と台湾がお
互いに恩返しの応酬を繰り返していることは、惨事のショックにある台湾人にとって、大いに慰め
られることだと思います。やはり日台は「一蓮托生」の関係であると痛感します。

 一方、1999年の台湾大地震の際、もちろん中国の援助隊などは、台湾に来ていません。たとえ申
し出があったとしても、断っていたことでしょう。にもかかわらず、中国は「一つの中国」を前面
に出して、各国に対して「感謝する」という政治的パフォーマンスを行い、台湾人の顰蹙を買いま
した。だいたい、国連のみならず、WHO(世界保健機構)にすら、台湾は中国の妨害で加盟でき
ていません。こうしたことの積み重ねが、台湾人の中国離れを加速させていったのです。

 中国では大地震に限らず天災があるたびに、「幸災楽禍」、つまり人の不幸を大喜びするという
メンタリティが発揮されます。たとえば四川大地震のときには北京市民は大喜びで、「もっと死
ね」という声がネットを中心に広がりました。インド洋の大津波のときも、「これでインドが中国
を追い越せなくなった」という喜びの声がネットに殺到、さらに9・11のアメリカ同時多発テロで
は、アメリカ国務省に招待された中国のメディア関係者が、テレビを見ながら喝采を叫んだこと
が、現地の新聞などでも報じられました。

 もちろん中国はプロパガンダも忘れずに行います。東日本大震災のときに台湾から日本に送られ
た200億円について、「台湾は中国の一部だから、中国は台湾もあわせると世界一、義援金を出し
た」と恥ずかしげもなく公言したほどでした。

 中国人の風習としては、天災があってもほとんど一銭もカネを出さないのみならず、たとえ義援
金が集まったとしても、役人が個人のポケットへ入れて着服してしまうことが多く、天災はむしろ
チャンスだと喜ぶことも多いのです。四川大地震のときには、義援金を不正に着服したとして、
250人近い中国共産党幹部が処分されています。

 一方で台湾人は昔からカネを出す性格であることは、東日本大震災のときに200億円以上の義援
金を贈ったことを見れば一目瞭然ですが、私の知り合いも1,000万円を東京の銀行に義援金として
寄付し、慈済会(台湾の仏教団体)は50億円を直接、仙台を中心とする被災地に送りました。私経
由で数百万の現金やモノを現地に届けてもいました。ここからは、カネを出す台湾人とカネを着服
する中国人という民族性の違いがはっきりとわかります。

 今回の台湾南部の地震では、中国側も一応は「協力が必要なら救援を提供する」と意向を伝達、
そして約3,500万円の緊急救済金を提供することを決めています。

 ところがその一方で、とんでもない印象操作も行っています。中国共産党の機関紙で人民日報系
の環球時報は、先日、台湾総統選挙で勝利し、5月に総統への就任が決定している民進党党首の蔡
英文と、同じく民進党で台南市の市長である頼清徳の対応が遅いということで、「不合格」などと
いう記事を掲載したのです(永山英樹氏のブログ「台湾は日本の生命線!」より)。

 しかし実際には、蔡英文と頼清徳の対応は迅速であり、批判されるようなものではありませんで
した。頼清徳などは、地震から41分後には対策センターを開設し、指揮にあたっていました。にも
かかわらず、中国共産党の機関紙系列のメディアは、この震災を利用して民進党批判を展開したと
いうわけです。

 話を日台関係に戻しますが、台湾人が日本に親近感と敬意を抱くのは、日本時代の建物の多く
が、地震の被害が少なく、100年以上も経過しているにもかかわらず、倒壊したりしていないから
です。今回の台南市で倒壊した建物は、柱や塀に缶が埋められていて、脆弱な違法建築だった疑い
が強まっています。

 1999年の台湾大地震でも、こうした手抜き工事の建物の多くが倒壊しました。しかし、それでも
日本時代の建物は、ほとんど被害がありませんでした。

 台湾大地震の震源地は、日本統治時代に作られたダムがある日月潭付近でしたが、戦後に大陸か
らやってきた中国人たちによって建てられた湖畔の民家や観光ホテル、商店などはことごとく被害
に遭い、全壊ないしは半壊という悲惨さだったものの、日月潭自体に被害が及んだという報道はあ
りませんでした。総督府が心血注いで建設したダムが、マグニチュード7.6の激震に耐えたことは
特筆すべきでしょう。

 台北にある台湾総督府も、日本統治時代の建設時には、かなりの耐震対策がほどこされていま
す。そのため、現在もその威容を保っているわけです。日本時代の台湾の都市整備とインフラ建設
の主軸となったのは、当時、民生長官だった後藤新平であり、のちに後藤は関東大震災後、復興の
ための帝都復興院総裁にも就任し、震災後の東京復興に尽力したのです。

 これだけを見ても、日本人と中国人の技術力、真摯さの違いがわかると思います。

 いずれにせよ、一刻も早い救出を望むばかりですが、その一方で、この地震を政治利用しようと
する中国側の勢力には警戒しなくてはなりません。


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