台湾の呉[金リ]燮・外交部長がサンパウロの邦字紙に寄稿

台湾の呉[金リ]燮・外交部長がサンパウロの邦字紙に寄稿

 本誌前号で謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表が8月19日付の産経新聞に寄稿した「東京五輪、日台で感動共有」をご紹介しましたが、同じ日、台湾の外務大臣に相当する呉[金リ]燮・外交部長も日本語メディアに寄稿していました。

 なんとこの日本語メディアは、ブラジルのサンパウロ市に本社を置く「ニッケイ新聞」という日刊紙でした。公称発行部数約1万5000部という「ニッケイ新聞」は週5回発行しているそうです。

 台湾政府はこのようなメディアにも気を配っているのかと驚かされましたが、媒体が日系人向けに発行されている日本語新聞であることにさらに驚かされました。ブラジルに住む日系人で日本語の分かる人々にも、台湾が置かれている国際的立場を理解してもらおうという趣旨のようです。

 呉部長の寄稿文は「ニッケイ新聞」のホームページに日本語と英語で紹介されていますので、英語で寄稿した原文を新聞社側が日本語に翻訳したのかもしれません。

 寄稿文は「台湾を加えたより弾力的な国連システムの再構築を」と題し、台湾が国連システムにおいて建設的な役割を果たすべき理由について述べるとともに、台湾の国連復帰を阻止している中国の圧力がいかに不条理なものかを指摘しています。

 台湾政府の国連復帰への考え方が分かりますので、下記に寄稿文の全文をご紹介します。

 米国や英国は台湾の国連復帰を支持する立場を明らかにしていますが、日本は米英ほどには明らかにしていません。

 ただ、かつて韓国出身の潘基文氏が国連事務総長だった2007年8月、国連加盟申請の審議入りを求めた陳水扁・台湾総統の書簡を受理しない理由として「国連2758決議で国連は中華人民共和国が中国の唯一の合法的代表で、台湾は中国の一部だと認定した」という見解を示したことに対し、日本政府は国連の日本代表部を通じて国連事務局に対し「台湾に関する地位認定の解釈が不適切と考えている」という申し入れを行ったことがあります。

 このような申し入れは異例のことで、米国に続いての申し入れでしたが、台湾の帰属問題に関しても「サンフランシスコ講和条約で台湾を放棄したが、どこに帰属すべきかは言うべき立場でない」という日本政府の基本認識も伝えていました。

 台湾の帰属先は未定と述べることも台湾の地位についての発言となりますので、日本政府はそれ以上踏み込んだ発言をしていませんが、台湾が中国の一部だという国連事務総長の認識は不適切、つまり誤りだと指摘したわけです。これは、中国が主張してきた「『一つの中国』原則」に異を唱える大事な指摘かと思います。

 台湾は現在、世界貿易機関(WTO)やアジア開発銀行(ADB)などの国際機関に参加し、経済協力開発機構(OECD)にもオブザーバー参加し、世界保険機関(WHO)総会にも参加した経験があるのですから、台湾の加入が国際社会に有益なことは証明され、参加資格も十分備えているといって過言ではありません。

 残るは「中国の壁」です。日本ではすでに台湾出身者が国籍を「中国」と表記されていた外国人登録証明書問題も、在留カード化のときの2012年に国籍欄が「国籍・地域」と改められ、台湾出身者が「台湾」と表記されるようになったこともあります。

 本会は現在、戸籍問題に取り組んでいます。詳しくは本会ホームページをご覧ください。中国の壁、すなわち「『一つの中国』原則」を容認するような名称や地図表記を改める台湾正名運動の一環として取り組んでいます。このような身近にある問題の解決はかるための活動を粛々と進め、併せて日本人の台湾認識を深めるような活動となればと考えています。

—————————————————————————————–《特別寄稿》台湾を加えたより弾力的な国連システムの再構築を中華民国(台湾)外務大臣 ジャウシー・ジョセフ・ウー【ニッケイ新聞:2021年8月19日】https://www.nikkeyshimbun.jp/2021/210819-31colonia.html

 2億人以上の感染者と400万人以上の死者を出したCovid-19のパンデミックは、全世界で猛威を振るっています。このパンデミックは、事実上、どの国も免れることができず、相互につながっている私たちの世界に、社会経済的に甚大な影響を与えています。このパンデミックは、世界貿易を混乱させ、貧困を悪化させ、教育を妨げ、男女の平等を損ない、中・低所得国がその負担を強いられています。

 多くの国が、感染力の高いデルタ型に促されたウイルスの再流行に備えている中、世界は国連に対し、危機の解決、より良い復興、持続可能な再建に向けた包括的な取り組みを強化するよう求めています。これは非常に困難な作業であり、すべての人の協力が必要です。今こそ国連は、助けの手を差し伸べることができる貴重なパートナーである台湾を歓迎すべきではないでしょうか。

 ここ数カ月、台湾は他の多くの国と同様、Covid-19の感染者の急増に対応してきました。しかし、台湾は状況を把握し、同盟国やパートナーと協力してパンデミックがもたらす課題に取り組む準備をさらに整えました。台湾のパンデミックへの効果的な対応、世界のサプライチェーンの需要に応えるための迅速な生産能力の拡大、世界のパートナー国への実質的な支援などは、台湾が国連システムにおいて建設的な役割を果たすべき理由があることを物語っています。

 しかし、国連とその専門機関は、中華人民共和国からの圧力により、1971年の国連総会決議2758(XXVI)を法的根拠とし、台湾を排除し続けています。しかし、この決議の文言は非常に明確で、国連における中国の代表権の問題を取り上げているだけで、中国が台湾の主権を主張していることには一切触れておらず、中国が台湾を代表して国連システムに参加することを認めていない。

 実際、中国が台湾を統治したことはありません。これが台湾海峡両岸の現実であり、現状なのです。台湾人が国際舞台で代表できるのは、国民に選ばれた政府だけです。決議文の文言を北京の「一つの中国の原則」と同一視することで、中国は自らの政治的見解を恣意的に国連に押し付けているのです。

 不条理はそれだけではありません。この排除は、台湾の市民社会の参加をも妨げています。台湾のパスポートを持っている人は、国連の施設への見学や会議への参加を拒否され、台湾のジャーナリストは国連のイベントを取材するための認定を受けることができません。このような差別的な扱いを受けているのは、台湾人の国籍だけが理由です。

 台湾の市民社会のメンバーを国連から締め出すことは、多国間主義の理想を破り、人権と基本的自由の尊重を促進するという国連創設の原則に反し、国連の全体的な努力を妨げることになります。

 60年にわたり、台湾は世界のパートナー国への支援を行ってきました。国連の2030アジェンダが採択されてからは、パートナーが持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための支援に力を入れており、最近では、パンデミック対策やパンデミック後の復興にも取り組んでいます。

 一方、国内では、台湾は、ジェンダーの平等、清潔な水と衛生、健康と福祉などのSDGsを達成しています。地域に根ざした革新的なソリューションは、社会全体の利益のために官民のパートナーシップを活用しています。

 持続可能な開発ソリューション・ネットワークが発表した「世界幸福度報告書2021」によると、台湾は東アジアで最も幸福度が高く、世界では24位となっています。このランキングは、その国の人々が自分たちが受けている社会的支援についてどう感じているかを示すもので、その国のSDGsの実施状況が大きく反映されています。台湾は、これまでの経験を生かし、世界のパートナーと協力して、すべての人にとってより良い、より強靭な未来を築いていきたいと考えています。

 世界が気候変動対策を求め、2050年までに炭素排出量をゼロにすることを明確に呼びかけている今、台湾はこの目標に向けたロードマップを積極的に作成しており、このプロセスを促進するための専用の法律を起草しました。気候変動には国境がありません。持続可能な未来を望むなら、協調した取り組みが必要です。台湾はこのことを理解しており、二酸化炭素削減という課題を新たなチャンスに変えるための最善の方法を模索しています。

 国連のグテーレス事務総長は、今年6月の就任宣誓で、Covid-19のパンデミックにより、私たちが共有する脆弱性と相互関連性が明らかになったと強調しました。彼は、国連、そして国連が奉仕する国家や人々は、他者を巻き込むことでしか利益を得られないと述べています。

 貢献できる能力のあるパートナーを拒むことは、共により良い復興を目指す世界にとって、道義的にも物質的にも損失です。台湾は良い方向に向かう力を持っています。今こそ、台湾をテーブルにつけ、台湾と力を合わせるべきではないでしょうか。

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