米国務省が台湾政府との非公式接触の制限を緩和する新たな指針を策定

 トランプ政権末期の1月9日、ポンペオ国務長官は矢継ぎ早に中国との融和策を捨てて台湾との関係強化策を打ち出し、1月9日には台湾の外交、軍事当局者らとの接触を制限する国務省の内規を撤廃すると発表した。

 この国務省の内規撤廃のその後の行方に注目していたところ、米国務省のプライス報道官は4月9日、米政府と台湾の当局者間の非公式接触の制限を緩和する新たな指針を策定したと発表するに至ってようやく落ち着いたようだ。下記に紹介する産経新聞によれば、米国の歴代政権が踏襲してきた「『一つの中国』政策との整合性などが明確でなく、バイデン政権下で改めて指針の見直しが進められていた」からだという。

 この新たな指針により「これまでは認められていなかった、米連邦政府庁舎や駐米国台北経済文化代表処(大使館に相当)での実務者レベルの会合が可能となる。また、旧中華民国大使公邸「雙橡園」で催されるイベントにも、特定の重大行事を除けば、米政府当局者の参加が認められる」(中央通信社)という。

 つまり、バイデン政権はトランプ政権の台湾との関係強化を引き継いだということになる。

 ちなみに、米国の「一つの中国」政策については、本誌では何度も言及してきているがいまだに誤解している向きがある。米国の「『一つの中国』政策」と中国の「『一つの中国』原則」はまったく別物だ。英語では「『一つの中国』政策」は”one China” policy、「『一つの中国』原則」は‘One China principle’と表記される。

 中国の「『一つの中国』原則」は、「中国は世界でただ一つ」「台湾は中国の不可分の一部」「中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府」という3つの主張からなっている。いわば三段論法とでもいうべき主張だ。

 では、米国の「『一つの中国』政策」はどういう構成かというと、3つの米中共同コミュニケ、台湾関係法、台湾に対する「6つの保証」の3つからなっている。

—————————————————————————————–米国務省 台湾との接触制限緩和 交流強化に道【産経新聞:2021年4月11日】https://www.sankei.com/article/20210410-I6PF56SG6BPQ7J7GMTAV2PYMOI/

 【ワシントン=黒瀬悦成】米国務省は9日、米政府と台湾の当局者間の非公式接触の制限を緩和する新たな指針を策定したと発表した。米台の当局者間の交流を促進させ、連携強化を図る。中国が軍用機を台湾の防空識別圏に連日のように進入させるなど、台湾への軍事的圧力を強めている事態を受け、バイデン米政権として台湾重視の立場を改めて明確にし、中国の覇権的行動に対抗していく狙いがある。

 国務省は指針について、台湾をめぐる歴代米政権の「一つの中国」政策を維持しつつ、「米台の非公式関係が深化していることを背景に、(米当局者に)台湾との関与を奨励するものだ」としている。

 新指針の詳細は公表されていないが、国務省によると、米連邦政府庁舎内やワシントンの駐米台北経済文化代表処(在米大使館に相当)での米台の実務当局者間の会合が解禁されるとしている。

 台湾当局が所有するワシントン市内の「ツイン・オークス」で、同代表処が主催する行事に米政府当局者が出席することもできるようになるという。ツイン・オークスは1979年の米台断交前まで台湾の大使公邸として使用されていた19世紀の旧豪邸で、これまでは米側との協議で利用方法が制限されていた。

 国務省は「米国が台湾を支援する立場は盤石だ。米国にとって死活的に重要な経済と安全保障のパートナーである台湾との結びつきを深化させていく」などと強調している。

 バイデン政権は、同代表処の蕭美琴(しょう・びきん)代表(駐米大使に相当)をバイデン大統領の就任式に招いたほか、米海軍艦船の台湾海峡通過を何度も実施するなど、トランプ前政権の台湾重視路線を継承している。

 トランプ前政権は任期切れ直前の1月、米台当局者の接触を制限する国務省指針の撤廃を表明したが、「一つの中国」政策との整合性などが明確でなく、バイデン政権下で改めて指針の見直しが進められていた。台湾情勢は16日の日米首脳会談でも主要議題の一つとなる見通しだ。

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