本誌前号で、中国の孔鉉佑駐日大使が「台湾がWHOにオブザーバー参加することが常態化する方向ですでに関係各方面との話し合い、調整が始まっている」と発言したことを紹介したが、WHOが中国寄りで、中立を保っていないことを証する出来事が立て続けに発覚した。
武漢肺炎(COVID-19)の防疫態勢が世界的評価を受ける台湾だが、ロイター通信(3月30日付)が報じたところによると「台湾は新型コロナの発生直後からWHOにすべての情報を提供しているが、WHOが毎日更新している状況報告書に一度も掲載されたことがない」という。
本誌でも、昨年12月31日に武漢肺炎(COVID-19)の人から人への感染の可能性について、台湾が書面でWHOと中国に問い合わせをして警告を発していたにもかかわらず、WHOが「関連の情報を内部のウェブサイトに掲載せず、各国と共有していなかった」ことをお伝えしたが、その後も同じ状態が続いていたようだ。
また、ブルース・アイルワード(Bruce Aylward)というWHOの事務局長補佐官が3月28日に香港のニュース番組からのインタビューを受け、台湾の加盟について質問されると、「質問が聞こえない」「ほかの質問に移ろう」などとはぐらかし、果ては通信回線を一方的に切ってしまうなど、意図的に台湾に言及することを避けたことも問題視されている。
ブルース・アイルワード事務局長補佐官は2月の記者会見で「中国が講じている新型コロナウイルス拡散防止のための包括的な措置は、新たな感染事例の急増傾向を実際に止め、多国籍の専門家チームは関連する統計の信頼性を確認した」(2月25日付「Sputnik 日本」)と発言している。
中国の防疫措置や統計に信頼性があるなどとするのは、中国にまるめこまれたか、中国に肩入れしている人物だと見てよい。
テドロス事務局長といい、このブルース・アイルワード事務局長補佐官といい、WHOは腐り切っているようだ。中国漬けにされている。もはや最高基準の健康を享有するという万人の基本的権利を守るどころか、中国とともに武漢肺炎を拡大させて多くの人々の健康を害し、死者を増やす役割を担っているようにしか見えない。
WHOは3月29日、台湾を台湾と呼びつつ、台湾の感染状況を注視しており、台湾の対策から教訓を得ていると表明したというが、もはや言い訳にしか聞こえない。
—————————————————————————————–WHO幹部、台湾の質問「聞こえない」「一つの中国」配慮か、外交部「政治は別にすべき」【J-CASTニュース:2020年3月30日】https://www.j-cast.com/2020/03/30383333.html?p=all
「質問が聞こえない」「ほかの質問に移ろう」──。香港のニュース番組に出演した、WHO(世界保健機関)のブルース・アイルワード事務局長補佐官のインタビューが波紋を広げている。
台湾の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について、意図的に回答を避けるような場面があり、台湾の外交部(外務省に相当)が「パンデミックへの対処には政治は別にすべきだ」と抗議する事態に発展している。
WHOをめぐっては、「中国への過剰な配慮で感染拡大を招いた」との指摘もある。
◆台湾加盟を拒否するWHO
香港の公共放送「RTHK(香港電台)」の報道番組で2020年3月28日、アイルワード氏がテレビ電話でのインタビューに応じた。
アイルワード氏は前半、「WHOは非常に早い段階でこのウイルスがパンデミック(世界的流行)になる可能性があると認識していた」とする見解や、中国での感染対策を振り返った。
その後、番組では(1)台湾では先週末に252人の感染が確認されるも死者はわずか2人だった(2)台北は19年12月末、WHOに「ヒト・ヒト感染」のリスクについて警鐘を鳴らしていた──と、自国の感染対策を紹介するシーンを挟む。台湾の対応は国内外から一定の評価を受けているが、「一つの中国」を掲げる中国への配慮からか、WHOは加盟を拒否している。
そうした背景を踏まえ、番組プロデューサーは「加盟を再考するつもりはあるか」と問うと、アイルワード氏はしばらく沈黙し、「質問が聞こえない」と回答。もう一度質問すると返すと、「いいえ、結構だ。ほかの質問に移ろう」とはぐらかした。
プロデューサーは、台湾での感染対策についても話したいと切り出すと、なぜか回線が遮断。電話をかけ直し、ふたたびコメントを求めると、「中国についてはもう話した」「中国のすべての地域で(対策は)順調に進んでいる」などと答えるにとどめた。
◆トランプ氏「WHOは中国に肩入れしている」
アイルワード氏の言動は、台湾内外で物議をかもしている。
インタビューを書き起こした記事や動画がSNS上で拡散し、台湾の外交部は29日に「WHOは『台湾』と発声することさえできないのか。パンデミックへの対処には政治は別にすべきだ」などとツイート。
自民党の長島昭久衆院議員もツイッターで「最低だな。でも、WHOから外された台湾が、世界のどの国よりも感染拡大を阻止し得たのは誠に皮肉」と投稿した。
WHOをめぐっては、テドロス・アダノム事務局長の中国を持ち上げるような発言が目立つ。中国側も、WHOへ2000万ドル(約21億円)の寄付を表明するなど、両者は蜜月といえる。
アメリカのトランプ大統領は3月25日の記者会見で、「(WHOは)中国に肩入れしている」とWHOの立場を疑問視。署名サイト「Change.org」でも、「テドロス氏は客観的な調査や評価を全く行う事もなく、中国政府から報告されている死亡者、感染者数を鵜呑みにしています」として、テドロス・アダノム事務局長の辞任を求める動きがあり、30日現在で66万筆集まっている。
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