去る8月8日、日本医師会と中華民国医師公会全国聯合会(台湾医師会)が東京都内において「台日両国医師会友好協定」を締結しました。
調印式には、松本吉郎(まつもと・きちろう)会長と周慶明・理事長が臨み、蔡明耀・台北駐日経済文化代表処副代表や林逸民・国策顧問、呉運東・無任所大使、中華民国医師公会全国聯合会のメンバー、それに日本医師会の角田徹・副会長、濱口欣也・常任理事などが立ち合ったそうです。
双方はこれまでも2011年の東日本大震災の折の台湾医師会からの義捐金支援など、大規模な自然災害時の人道支援交流を重ねてきたそうで、日本医師会も、2015年の八仙水上楽園で発生した粉塵爆発事故による多数の熱傷患者の治療に際し、熱傷治療専門家6名を台湾に派遣して医療支援活動を展開していました。
また、この粉塵爆発事故への医療支援をきっかけに、日本医師会は2015年7月30日、台湾医師会および台湾の海外災害医療支援NGOの台湾路竹会と「災害時の医療・救護支援における医師の派遣と支援体制の相互承認に関する日本医師会と各国医師会との間の協定」をそれぞれ締結していました。
日本医師会によれば、この「協定書は、iJMAT(international Japan Medical Association Team)構想に基づいた、民間ベースでの災害時の医療・救護活動の国際協力を促進するためのもので、災害事象が生じた際には、両国の医師がその身分を保証された上で、より円滑に被災国の医師と共にその国の法令及び医師の指導の下で医療活動に従事し、被災者の救済に尽力することを可能とする内容」だそうです。
今回の協定はそれに続く大型協定で、台湾週報は「2つの医師会を結び付けた国策顧問の林逸民氏は、『台湾と日本の全国レベルの医師会が、戦後80年の歴史で初めて姉妹会となった。
歴史的に見ても非常に意義のあることだ』と指摘」するとともに「今回は国レベルの医師会による友好協定であり、しかも日本側が『台湾』の名称を使用することを望んだ点は『とりわけ意義深い』と指摘した」と報じています。
ただし、日本では、外国の医師資格を有する者であっても、国内において医療行為を行うには「医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」(医師法第2条)と定めているため、原則として外国人医師の医療活動を禁じています。
2015年7月の協定でも「被災国の医師と共にその国の法令及び医師の指導の下」においてのみ医療活動に従事できると謳っているとおりです。
昨年(2024年)1月1日に起こった能登半島地震でも、1月4日にいち早く「台湾災難医療隊発展協会」に所属する、医師や看護師、救急救命士などで編成した先遣チームの5人が珠洲市に入ったのですが、日本は外国人医師の医療活動を禁じているため、台湾チームの医師は医療支援ができず、高度な災害支援への知見やノウハウを生かして避難所運営に関する支援や物資支援に携わっていたそうです。
ただし、例外もあります。
それは東日本大震災のときで、厚生労働省は当時「外国の医師資格を有する者が、必要最小限の医療行為を行うことを認める旨、被災都道府県に通知(2011年3月14日、医政局医事課)」していました。
日本は憲法にも緊急事態条項がないことが問題視されていますが、緊急を要する災害時の医療支援についても未だに対策を講じていないのが現状です。
すでに台湾とは2007年9月に自動車運転免許証の相互承認をしている日本です。
日本も台湾も医療現場における技量はほぼ同じレベルと仄聞していますので、自動車と同じように医師免許も相互承認できるようにならないのだろうかと思います。
それが不可能ならば、日本には台湾出身の医者は少なくなく、ほぼ全国におります。
そこで、台湾からの医療支援の条件として、せめて台湾出身者で日本の医師免許を持つ医師を同道すれば必要な医療活動に従事できるとするなどの対応を取れないものかと思います。
日本も台湾も地震などの自然災害が多い国です。
日本は医療支援を最大限に活かす方策を早急に立てるべきではないかと提案します。
台湾と日本の「医師会」が友好協定、戦後80年における画期的進展【台湾週報:2025年8月11日】https://www.taiwanembassy.org/jp_ja/post/106141.html
2つの医師会を結び付けた国策顧問(総統府顧問に相当)の林逸民氏は、「台湾と日本の全国レベルの医師会が、戦後80年の歴史で初めて姉妹会となった。
歴史的に見ても非常に意義のあることだ」と指摘。
林国策顧問によると、これまでも台北市と東京都、台中市と日本のある都市、といった自治体レベルの医師会の友好協定はあったが、今回は国レベルの医師会による友好協定であり、しかも日本側が「台湾」の名称を使用することを望んだ点は「とりわけ意義深い」と指摘した。
この協定では、(1)医療交流の促進と公衆衛生の向上、(2)国際協力とグローバルヘルスの推進、(3)善意にもとづく協議と、未来の課題に向けた共同の取り組み、という3つの主要な方向性が定められた。
調印に臨んだ日本医師会の松本吉郎会長は、「今日は記念すべき日だ。
日本医師会と台湾医師会(中華民国医師公会全国聯合会のこと)は歴史的に極めて良好な関係を築いてきた。
双方の揺るぎない友情は、単なる2つの医師会の交流にとどまらない。
アジア大洋州医師会連合(CMAAO)や世界医師会(WMA)などの国際会合においても互いに協調し、課題に取り組んでいる」と述べた。
中華民国医師公会全国聯合会の周慶明理事長によると、双方の医師会は、大規模な自然災害時の人道支援を契機に交流を重ねてきた。
2011年の東日本大震災では、中華民国医師公会全国聯合会が直ちに募金活動を展開し、日本の復興を支援した。
その後も2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、2024年の能登半島地震と、迅速に義援金を送った。
2024年4月3日に台湾東部・花蓮で発生した際には日本医師会が1500万円を台湾に寄付。
その後、会員に対しても募金も呼びかけ、最終的に1,721万4,718台湾元相当(約8,486万円)が台湾に送金された。
周慶明理事長によると、日本医師会からの寄付が高額で、かつ花蓮地域の復旧が一段落したことから、残った寄付金を活用して「台日災害救助基金」を設立。
台湾と日本で自然災害や重大な事故、緊急事態が発生した際の共通の救助資金として使用し、制度化により助け合いの精神を継承することを決めた。
この基金の一部は早速、7月上旬に台風4号の上陸で被害を受けた台南、嘉義、雲林地域の復興に対しても活用されることになっている。
周慶明理事長は、2015年に新北市の八仙楽園で起きた粉塵爆発事故でも、日本医師会が即座に専門家チームを派遣し、火傷治療とリハビリのノウハウを台湾側と共有したことも紹介。
加えて火傷治療用の特殊なマットレスや人工皮膚、医薬品などを無償供与してくれたことも、台湾と日本の医療協力の象徴的な事例となったと振り返った。
また、新型コロナウイルスのパンデミック期間中、国際間の移動が制限される中でも、双方の医師会はオンラインでの交流を継続。
韓国やインドの医師会とともに国際フォーラムを開催して、新型コロナウイルスのワクチン政策やホリスティックヘルスケア制度、今後の公衆衛生の課題などについて議論した。
。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。