――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習68)
開口一番、彼女は「同志諸君、ごきげんよう」。すると会場から熱烈な拍手と歓声。続いて《熱烈な拍手》。以後、彼女の主な発言を「 」で、会場の反応を《 》で示しておく。
「私は毛主席、林副主席になり代わり同志の皆さんにご挨拶いたします」⇒《長時間の熱烈な拍手。「毛主席万歳」「毛主席よ、永遠なれ」「林副主席よ、壮健なれ」の連呼》
「建国18周年の今年は文化大革命2年目の劈頭に当ると共に、決定的勝利を勝ち取る年でもあります」⇒《長時間の熱烈なる拍手。会場を揺り動かして「毛主席の革命路線勝利万歳」「プロレタリア文化大革命勝利万歳」の連呼》
「文革が起こらず、無敵の紅衛兵小将軍が存在しなかったら、党内に巣食う叛徒集団や特務を摘まみだせたでしょうか」⇒《すかさず「不可能」の大合唱。次いで「劉・�・陶を打倒せよ」「党内最大の一握りの資本主義の道を歩む実権派を打倒せよ」と会場は沸騰》
「文革を通じ互いに戦ってこそ、人民解放軍と紅衛兵は本当の戦友となれるのです。労働者人民にとっての最も良き人間となれるのです。これで私の話を終わります」⇒《長時間の拍手と共に「毛主席万歳、毛主席万々歳」のどよめき》
さすがに元役者だけのことはある。江青の演説を中国語で声を出して読んでみるいい。じつに歯切れがよく、心地よく耳に入ってくる。だが内容が空疎に過ぎ、何も言っていないと同じ。最早それは政治演説ではない。明らかな集団洗脳であり、元役者と狂騰する群集による掛け合い漫才と言うべきだろう。壇上で必要以上に舞い上がる江青の姿を思えば、可笑しくも痛々しいかぎりだ。
次いで、第9回共産党全国大会を解説した『“九大”文件名詞解釈』(香港朝陽出版社)を見ておきたい。なお同社は香港の共産党系出版社である。
『“九大”文件名詞解釈』は、狙い通りに政敵の劉少奇ら実権派の抹殺に成功し、毛沢東が「勝利の大会」と満足げに宣言した第9回共産党全国大会で決議された3つの重要文献――政治報告、党章程、新聞公報にみえる「一月革命」から「議会闘争」まで170ほどのキーワーを選び詳細な解説を加えている。当時の共産党の基本姿勢が伺えるので幾つか適当に拾って忠実に訳してみたが、“その場限りの口から出任せ”には驚かされるばかり。
■「死んでも悔い改めない資本主義の道を歩む実権派」=「党内のブルジョワ階級を代表する人物のこと。ある地方、ある部門において党・政府・経済・文化の指導権を簒奪しブルジョワ反動路線を頑なに推し進め、プロレタリア階級の革命路線に反対し、我が国において資本主義の復辟を狙っている
。
彼らは一握りではあるが、時にウソをマコトと言い張り、時に歯の浮くような美辞麗句を口にしながら徹底して抵抗を続ける」
■「群衆路線」=「2つの意味を持つ。1つは人民群衆による自らの解放を指す。プロレタリア政党、つまり共産党の全ての任務は全身全霊を尽くして人民に服務すること。2つ目は党の指導工作が拠って立つところの『群衆の中から群衆の中へ』の方法を指す」
■「社会主義大家庭論」=「ソ連修正主義叛徒集団は『社会主義』の旗を振りながら帝国主義の振る舞いをしている。アメリカ帝国主義と結託し、自らの世界覇権に向けて、なりふり構わずに必至に策動する。
アジアにおいてはモンゴル人民共和国を殖民地に変え、ヨーロッパにおいては東欧の多くの社会主義国家を属国に組み入れてしまった。ソ連修正主義が鼓吹する“社会主義大家庭論”とは、まさに、この種の帝国主義の侵略と略奪政策を“合法化”するための“理論”をデッチあげるためのものにすぎない。かくして、こういった“大家庭”の構成員は永遠にソ連修正主義の殖民地や属国であり続けなければならないのである」《QED》