――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習15)

【知道中国 2349回】                       二二・四・初三

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習15)

開会に際して毛沢東が「同志諸君、いま中国共産党第八次全国代表大会が開幕した」と切り出した講話の全文を、彼の口調を真似てユックリと読んでみると、13分ほどが掛かっている。

当然のように当日の毛沢東の講話が『中国共産党第八次全国代表大会文件』の中心であり、それゆえに会場の反応ぶりが律儀なまでに記録されている。それを数えると「(拍手)」が13か所、「(熱烈拍手)」が14か所、「(長時間熱烈拍手)」が2か所、「(全員起立し長時間熱烈拍手)」が3か所となっている。

たとえば、「いま我が党は過去の如何なる時期より団結している(拍手)」「国際社会における我われの勝利はソ連を頂点とする平和民主社会主義陣営の支持に依拠している(熱烈拍手)」「帝国主義が造りだす緊迫した情勢と戦争準備の陰謀を徹底して破産させなければならない(長時間熱烈拍手)」「今日、この場に出席している50数か国の共産党、労働者党、労働党、人民革命党の代表に・・・熱烈なる歓迎の意を表す(全員起立し長時間熱烈拍手)」といった具合である。

これほどまでに“各種”の拍手を繰り返せば手も痛くなろうと言うもの。全く、ご苦労なことだが、この僅かな引用からも、当時の中国と「ソ連を頂点とする平和民主社会主義陣営」との関係の姿が浮かび上がってくるだろう。それがタテマエに過ぎなかったとしても、である。

この一糸乱れぬ拍手という“演出方式”が独裁体制下の政治文化の特徴だが、誰かの指揮で、それとも全員が阿吽の呼吸で拍手するのか。どちらにしても薄気味が悪い。だが、拍手を誘う台詞が大時代を感じさせるだけに、振り返って見ればバカバカしくもあり、また懐かしくも楽しくもある。敢えて微笑ましい限り、と言っておきたいところだ。

バカバカしさついでに劉少奇の政治報告をサッと見ておきたい。

劉少奇は「依然としてアメリカ侵略者に占領されている台湾を除き、ここ百年来中国人民の頭の上にのしかかっていた外国帝国主義勢力は全て叩き出し、すでに中国は偉大なる独立自主の国となった」と切りだし、「外国帝国主義勢力の道具である官僚買弁資本家階級は、すでに中国大陸から消滅した。封建地主階級は、限られた地区を除き、すでに消え去った。富農階級もいま消滅しつつある。本来的に農民を貪り食ってきた地主と富農は、自立した新しい人間に改造されつつある」と続ける。

次いで「国内の各民族は、すでに団結した友好的な1つの民族大家庭を築きあげた」と共産党政治の成果を内外に自讃し、最後を「我われの偉大な社会主義の事業は必ずや成功させなければならない。世界中の如何なる勢力も我われを阻止することは出来ない」と“大見得”を切ってみせた。

その時から60数年が過ぎた。

たしかに習近平に率いられた中国が「偉大なる独立自主の国」になり、加えて「世界中の如何なる勢力も我われを阻止することは出来ない」ほどまでに強大になったことは認めざるを得ない。だから劉少奇が政治報告に託した予言は当ったとも言えなくもない。だが、それにしては身勝手なまでに過剰に、そして尊大になったことも事実だろう。

劉少奇は「国内の各民族は、すでに団結した友好的な1つの民族大家庭を築きあげた」と大見得を切ったが、習近平が去年に続いて今年の全人代でも「中華民族の共同体意識の強化」「中華民族の一層の一体化」を強調している点から考えてみても、依然として「民族大家庭」は絵に描いた餅のまま。漢族を除いた「国内の各民族」は民族文化面でのジェノサイドの危機に曝されている。「民族大家庭」のラッパが空々しく鳴り響くばかりだ。《QED》


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