――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習41)

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習41)
【知道中国 2375回】                       二二・六・初六

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習41)

『猪八戒新伝』の出版は8月だが、毛沢東が特務の親玉である康生や夫人の江青を使って反撃に転ずるのはもう少し先になる。このように時系列に沿って追ってみると、『猪八戒新伝』の出版前後には共産党最上層では毛沢東批判が高まりつつあった。まさに「みんなで批判すれば怖くない」の伝である。かくして毛沢東批判勢力=劉少奇支持勢力は、『猪八戒新伝』を使って嘲笑気味に毛沢東批判を試みたのではなかろうか――こう考えて改めて読み返すと、『猪八戒新伝』が秘めた深い意味が浮かび上がってくるように思える。

たとえば「猪八戒、家に帰る」の最後では、手前勝手が過ぎる猪八戒を前にして、孫悟空が「いいかい、この惨めったらしい楽園にあっても、まだ着たり食べたりしたいと言うのかい。そのうえ汗を流すのがイヤだなんて、いったい誰が楽園を作るんだい。オ前さんのように自分ばかりで他人が目に入らぬようでは、遅かれ早かれ悪魔道に墜ちるしかないじゃないか」と諄々と言って聞かせる。するとジッと聞いていた猪八戒は大いに恥じ入り消え入りそうな声で、「アニキ、オイラがバカだった。これからは絶対に過ちはしねえから」と応える。すると孫悟空は笑いながら、「そうと決まったら、それでいい。そろそろ時間だし、帰ってメシとするか」。それから猪八戒を引っ張って霊山に向かった。

 たしかに、深読みが過ぎると言われればそれまでだが、『猪八戒新伝』の行間に劉少奇に向けた賛歌と、反対に毛沢東への当て擦りが浮かび上がってくるように思えて仕方がない。だから中国では子ども向けの絵本とは言え侮れない。なかなか奥が深いのである。

 閑話休題。

 ここで唐突に話題を転じ、60年代前半に出版された高等数学関連書籍の書名だけを書き留めておきたい。資料として書き留めておくだけでも一定の意義はあると思うのだが。

60年出版:

『抽象代数学 巻2 線性代数』(科学出版社)/米コーネル大学のN.Jacobsonの抽象代数学の翻訳。大学で理工学を学ぶ教員・学生用参考書

『数学分析(上下)』(上海科学技術出版社)/復旦大学数学系の教員による試用本。計極限論、微分学(上篇)、積分論、無窮級数論、広義積分論(下篇)。大学の数学系でも分析学の教材として編集

61年出版:

『排隊論』(上海科学技術出版社)/ソ連とアメリカの行列論関連10篇の論文の翻訳

『現代応用数学叢書 塑性論』(上海科学技術出版社)/鷺津久一郎『塑性論』の翻訳/以下、現代応用数学叢書は、全て岩波書店発行の現代応用数学講座の翻訳である。ところで翻訳に当たって、どのような契約が岩波書店との間で交わされたのであろうか。友好価格(=実質無料)だったことは十分に考えられるのだが。

『現代応用数学叢書 富里哀変換与拉普拉斯変数』(上海科学技術出版社)/河田龍夫『Fourier変換と Laplace変換塑性論』の翻訳

『現代応用数学叢書 有限変位弾性論 変形幾何学』(上海科学技術出版社)/山本善之・近藤一夫『有限変位の弾性論 変形の幾何学』の翻訳

62年出版:

『現代応用数学叢書 李群論』(上海科学技術出版社)/岩堀長慶『Lie群論』の翻訳

『現代応用数学叢書 粘性流体理論』(上海科学技術出版社)/谷一郎『粘性流体の理論』の翻訳

『現代応用数学叢書 結晶統計与代数』(上海科学技術出版社)/伏見康治・庄司一郎『結晶統計と代数』の翻訳《QED》

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