――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習120)
もう少し続けると、
12月:オーストラリアと大使級外交関係樹立
ニュージーランドと大使級外交関係樹立
ベナン(西アフリカ)と大使級外交関係復活
――このように時系列に沿って追ってみると、アフリカを中心に外交関係の基盤作りが小まめに進められていたことが読み取れるだろう。
文革初期、アフリカで展開された「国際連帯による革命外交」で中国が力を入れていたのは、東アフリカのタンザニアとザンビアを結ぶ「タンザン鉄道」の建設だった。熱帯ジャングルを切り開いての鉄道建設が生み出した両国農民と中国労働者との「革命的友誼と連帯」は大いに喧伝され、教育宣伝用の相声(まんざい)も作られたほど。タンザン鉄道建設支援は、中国がアフリカの国々を釣り上げるための“疑似餌”ではなかったか。
1970年代初頭のアフリカに打ち込んでおいたクサビを中国による現在のアフリカ蚕食の“起点”であると考えるなら、ともかくも息長くコツコツとアフリカを囲い込んでいったものだ。だが、流石に「百年河清を待つ」の伝統などと感心してばかりもいられない。
本題に戻って、幼い子供向け絵本なんぞから始めたい。
先ずは12センチ四方ほどの大きさの絵本『看図認字』(上海人民出版社本社編)である。
絵を見ながら漢字と発音を覚えさせようという意図で編集されているが、どの頁にも当時の共産党政権が幼児、つまり未来の中国の担い手に何を求めていたのかが浮かび上がってくるから興味は尽きない。
先ずは表紙を見ると、顔を正面に向けて斜めに構える愛くるしい女の子は、右手の人差し指で、左手に持つ絵の中に描かれた翩翻と翻る五星紅旗を指差す。
表紙を繰ると、最初の絵は青空を背景に大きく描かれた国旗。その上に「guo qi」とローマ字表記の発音が振られている。次が天安門。頁を繰ると、見開き2頁に左から溶鉱炉の火花を背にした工人(労働者)、天秤棒の肩にした農民、銃を抱く解放軍、銃を肩にした民兵(女性)、マイクを手に交通整理をする人民警察(女性)、麦藁帽子を背にして農村を行く赤脚医生(はだしの医者/女性)、『毛主席語録』を大事そうに胸に抱える紅衛兵(女性)、槍を手に胸を張る紅小兵。誰の左胸にも毛沢東バッチが燦然と耀く。
数えると男女同数だが、偶然ではないだろう。「天の半分は女性が支えている」という毛沢東の考えが見え隠れしている。巧妙な政治宣伝戦略と言っておきたい。
ここに見られる人物が、当時の中国にとっての理想的な国民像であったはず。次の頁からは、一人っ子政策など考えられもしなかった時代の理想的な家庭像が浮かび上がる。
こざっぱりとした人民服で『人民日報』を読んでいる爺爺(おじいさん)、やさしそうな眼差しで針と糸を手に繕い物をする??(おばあさん)、短く刈り込んだ頭で新聞を読む??(おとうさん)、活動的な髪型で優しそうな目の媽媽(おかあさん)、収穫物の入った籠を背にした哥哥(にいさん)、2本のおさげも可愛らしい姐姐(ねえさん)、毬を抱くプクプクと太った弟弟(おとうと)、女の子の人形を大事そうに抱える妹妹(いもうと)――
毛沢東バッチを胸に三世代が和やかに革命的に助け合って暮らす・・・これが当時の理想的な家庭像、いわば“革命的三世同堂”ではなかったか。であればこそ、「人が1人増えれば口は1つ増えるが手は2本増える」と人口増は生産増に繋がると妄信しきっていた毛沢東の考えに従うなら、一人っ子政策などは、ズバリ、反革命的大罪だったわけだ。
続く2頁は乗り物。?車(トラック)、轎車(乗用車)、火車(汽車)、電車、救護車(救急車)、自行車(自転車)、消防車、輪船(汽船)。その次の頁は兵器で埋まる。《QED》