――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習33)

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習33)
【知道中国 2367回】                       二二・五・仲七

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習33)

国慶節を2か月後に控えた58年8月1日、北京大学共産党委員会から「我ら17人の級友」に対し、「国慶節に捧げられるような成果を6週間以内に示せ」との厳命が下った。

「戦闘ラッパが吹き鳴らされるや、同級生は直ちに行動に移り、我ら17人の級友は成語詞典を編集して国家に捧げようと決議した。それというのも、我国には目下のところ、この時代の精神を的確かつ平明平易に表現できるような成語詞典が見当たらないからである。〔中略〕このような詞典こそを工農兵大衆は渇望している」。だが時間的には切迫しているうえに、学問的にも限界がある。

苦境に落ち込んだ学生に共産党が導きの手を差し伸べる。有り難い限りだ。

「(共産党が)進むべき方向を指し示し、我らに力を与えてくれた。殊に全国で勇躍と展開されている大躍進の情勢を目にし、高い山をも額ずかせ、大河の流れすら押し返すような勢いの、大革命に対する工農兵大衆の気高い気魄に接することで、我らは深く感動し、思想はより広がり、意気込みはより高まった。経験少ない我らではあるが集団の力がある。集団の力に基づいて経験を引き出し、我らは詞典を編集することが出来た」。ということは、やはり共産党の指導は相当に正確無比であったに違いない。

 この詞典の編集が終ったと思われる58年初秋といえば、毛沢東が掲げた誇大妄想的政策である大躍進が華々しく全国展開されていた頃であり、出版された59年11月は大躍進政策の破綻が決定的となり、国を挙げて困窮と飢餓に苦しみ超耐乏生活を余儀なくされていた頃に当たる。

そんな“貧窮・困窮”の時代を反映しているからだろ。この詞典の装丁は貧弱極まりない。使われている紙は濃い茶色の上に表面が粗くザラついている。それだけに、印刷された活字が読み取れない個所も少なくない。当時から60有余年が過ぎた現在、改めて『漢語成語小詞典』を手に取ってみると、大躍進がもたらした物資不足の状況が実感できる。

体裁の極貧さに反比例するかのように、内容からは「この時代の精神を的確かつ平明平易に表」わそうとした「我ら17人の級友」の心意気が伝わっている。

そこで典型的な成語のいくつかを拾いだし、解説部分を忠実に訳してみた。

■大名鼎鼎=盛大な様を形容。[例文:資本主義国家において多くの大名鼎鼎(=影響力を持つよう)な人物は、実際はすべて残酷にも人民を掠奪する残忍悪辣な魔王である。]

■紅透専深=個々の党員、団員、革命知識分子に対する党の要求である。「紅」は政治的に断固として労働者階級の立場に立ち、確固とした共産主義世界観と人生観を持ち、マルクス・レーニン主義という思想武器を掌握し運用することを指す。「専」は自らが従事する仕事を深くい愛しみ、確固とした専門技術と科学知識を保持し、現実に起こる問題を解決し、本来業務を見事に担いうることを指す。「紅」を透して「専」は深まる。「紅」と「専」とが補完し合う。断固として「紅」であり「専」であらねばならない。

■興無滅資=プロレタリア独裁思想を確立し、ブルジョワ階級を消滅させることを形容。[例文:思想的に興無滅資であってこそ、徹底して自らの立場・観点を改造し、紅であり専である稔り豊かな大道での前進が可能となる。]

■作法自斃=自業自得の意。[例文:帝国主義国家は経済封鎖を通じ社会主義国家の扼殺を企図して“禁運(=貿易禁止)”政策を採るが、結果的には作法自斃であり、却って彼ら自身が酷い目に遭うのだ。]

 これら成語は、タテマエのみが勇ましくも空回りしていた時代を「的確かつ平明平易に表」していると思える。「紅透専深」やら「興無滅資」などは死語と思うが、3期目以降の習近平政権で“復活”を果たすことも考えておいた方がよさそうな・・・雲行き。《QED》

タグ: ,