――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習17)

【知道中国 2351回】                       二二・四・初七

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習17)

『少年児童読物 到月亮上去』では、「月に関する天体知識、原子力ロケットの基本原理、宇宙旅行中に体験する物理現象などを解説されている。興味深い内容であり、小学校5、6年生向き」と解説がある。挿絵のタッチなどから考え、どうやらソ連の科学幻想物語のパクリとも思えるのだが。

『手揺発電機』は、上海の中学生が入手し易い身の回りの品物を工夫し、充電放電器、電気メーター、手動式発電機を製作した経験の報告である。これらは55年の全国少年児童科学技術・工芸作品展覧会で表彰された作品とのことだが、読者に「彼らがどのように頭を働かせ、作業中の困難を克服したかを読み取ると同時に、彼らの手順に倣って、あるいは別の方法を考え出して制作すること」を求めている。

それにしても、月旅行を可能にするソ連の原子力ロケットに対し手作り発電機である。『少年児童読物 到月亮上去』と『手揺発電機』を読み比べた少年は、きっとソ連と自国の圧倒的な技術差を痛感したに違いない。であるなら、彼らがソ連に技術先進大国の理想型を思い描いたとしても決して不思議ではない。やはりソ連は理想の大国だったはずだ。

「団結してネズミを捕まえよう」「ネズミ退治は有意義な、同時に国家にとって有益な活動である」と説き起こす『消滅老鼠』は、各種の野ネズミ、家ネズミの形態や生態を解き明かした後、各種のネズミ捕り器の製法や捕獲方法を詳細に解説している。ソ連の出版物の翻訳ということは、やはり“科学先進国であるはず”のソ連もネズミの被害には悩まされていたのである。

『談談小学算数応用題教学』が出版された翌年57年10月にはソ連は人類初の人工衛星を、時を置かずに1か月後の11月4日にはライカ犬を乗せた人工衛星を打ち上げ、世界中をアッと驚かせた。4年後の61年には人類初の宇宙飛行士という栄誉を担うことになるガガーリンがボストーク1号で宇宙に飛び出し、「地球は青かった」と感動的な言葉を遺した。まさに宇宙時代の幕を開けであり、宇宙開発・軍事技術・先端科学などの分野でアメリカの高い鼻をへし折り、ソ連は社会主義の優位を内外に強烈にみせつけたのである。

  

ソ連を先頭に、社会主義陣営は民生を犠牲にしてまでも必死になって科学技術振興に取り組む。それもこれも社会主義の完全勝利を目指してだが、中国もまた例外ではない。小学校においても、科学技術の柱となる算数教育に力点を置くことになる。

そういった重要な任務を帯びた算数教育に当たる教員に、応用問題作成の際の心構え、応用問題の持つ高い使命を叩き込もうというのが、この本の狙いだろう。

かくして「算数は全面発展という教育方針を貫徹するための重要な学科の1つであり、小学校の全ての教育に資するものである。算数に関する教学上の任務とは、小学校における算数の目的と任務を確固として貫徹させることに尽きる」と熱く語る。

そこで問題となる「小学校における算数の目的と任務」だが、次の3点に絞って示した。

第1は、児童が自覚的に確実に基本的算数知識を身に付けることを保障し、その知識を実際的に運用する技能を習得させることで、小学校卒業後に工業や農業などの生産現場において、進んだ数学を学ばせるための好条件を予め準備し、基礎を固めておく。

第2は、児童の知恵と論理的思考を涵養することで、以下を身につけさせる。

1) 具体的事象を大まかに捉え抽象化する能力(たとえば3人の友達、3個の卵、3本の棒、3個のボールなど身近な具体例から抽象的な「3」という数字の理解に進む)。

2)分析・推理・判断する能力(たとえば学習済みの1+1=2と2+1=3から出発し、(1+1)+(2+1)⇒2+3⇒5の理解に進む)。

3)児童の言語運用能力(文章題により思考と言語運用能力を高める)《QED》


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: