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――「劣等な民族が自滅して行くのは是非もないこつたよ」東京高商(10)東京高等商業學校東亞倶樂部『中華三千哩』(大阪屋號書店 大正9年)

【知道中国 1870回】                       一九・三・仲一

――「劣等な民族が自滅して行くのは是非もないこつたよ」東京高商(10)

東京高等商業學校東亞倶樂部『中華三千哩』(大阪屋號書店 大正9年)

おそらく船津総領事もそうであっただろうが、「複雜多岐なる支那政界の裏面は勿論、經濟界隈の方面にもよく精通して居る」がゆえに、本省に対し現地の実情に基づいた意見具申しようと、それが本省で政策意志決定に与かる幹部の考えと違っていたら、おそらく十中八九以上の確率で握りつぶされるであろう。この辺りの事情は、現在でも大差はなく、大々的に改善されているとは思えない。そこで出先機関は霞が関中央の考えを“忖度”して、彼らの考えに沿った形の現地情勢報告を送ることになる。かくして、それ見たことか。現地情勢はオレに読んだ通りだということで、なんともチグハグでピンぼけ極まりない政策が進められてしまう。

東京商業高等学校東亜倶楽部の1年ほど前に旅行した河東碧梧桐の『支那に遊びて』に、日本人は「人生觀が不徹底だから人間がコマチヤくれた利巧ぶつた小さいものにしかならない」。それがビジネスに反映されると、「支那の實情に接觸してゐる支店長の措置を、支那の實情を知らない日本の重役が干渉する」ことになる。「會社なり銀行なりが支那に支店を持つにしても、本店から一々指圖しなければ氣が濟まない」。だからまともなビジネスができようもない――と綴っているが、となると日本は昔から官民共に同じような宿痾を克服できそうにないということか。俗に言う島国根性だけが原因とも思えないのだが。

 天津から済南への列車の中でも、若者の稚気が発揮される。

 旅の無聊を託つべくウイスキーを始めた。すると「掛りの五十許りなるボーイ、カナリの左利きにや、芳醇な雰圍氣に遣る瀬ない相好を崩して恪勤振り」。そこで「一行中のいたずら者」が勧める。嫌いではないから、駆け付け3杯が5杯に。すると「忽ち淘然として呂律の廻はらぬ愛嬌を振り蒔いて働くこと働くこと」。ついにはブドウを買い込んで振る舞ってくれるほどのご機嫌振り。「蓋し日支親善も此邊から徹底して掛らんと駄目だと大いに悟つた樣な書生論に花が咲く」ことになったとか。

 済南着。そこは「もう殆ど日本化して了つてゐる」。「驛に集まつてゐる多くの人々は、なつかしい日本人が多い。買物をするんでも、もう日本の言葉で、日本の錢で結構通するので、暗闇から明るみに出て來た樣に、メッポー氣輕で嬉れしい。カーキ色の戰時服装をしてゐる日本の兵隊さんがゐるのは、殊に深い尊敬と親し味を感じさせられる」と。だが排日の本場である天津とは近距離にあるだけに、この街の排日状況は「余程惡性のものと見え」る。

 次いで青島へ。

 「佐賀町、靜岡町等と木札が貼られてある等、全て感じが快い。異人の姿は殆ど見掛けぬ」。だが街を歩くと「獨逸の偉大な文化の力が、あらゆる方面に現はれてゐるのに今更ながら驚かざるを得ない」。

青島在住邦人は2万余。彼らの「内幕を窺いて見ると、外面如菩薩の美くしい此の土地には、如夜叉の同胞連中がノサ張り返つて聲を太く、青島還へす可らず、是れ在青島二萬同胞血涙の叫び等と得々長廣舌をふるつて、恬としてゐるのがカナリに多いのには失望せずにゐられない」。「彼等の多くは浮浪の徒であ」り、「只一攫千金の、はかない夢」を除いたら、他にはなにもない。こういった状況だから、やはり現地社会からは疎まれるばかり。いざとなったら「一溜りもなく青島から逃げ出さねばならぬ孰れにしても、慘じめな羽目に陥るんではないかと危ぶまれてならない」と危惧する。

青島が「今や我國に對しても、現在及將來に亙つて一層重大な意義と任務とを寄與してゐる」にもかかわらず、である。どうして、こうもチグハグなのだろうか。《QED》

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