台湾のシェルター普及率は世界屈指 在留邦人や与那国島からの避難も

 1970年代からシェルター設置に関する建築基準の関連法の整備が進められてきた台湾では、内政部によると台湾全土に約10万5000カ所のシェルターの整備が進み、収容能力は合計約8600万人に上るという。台湾の総人口約2323万人(2022年11月現在)だから3倍を優に超える370%にも及ぶ。

 核シェルターの人口あたりの普及率では、米国は82%、スイスは100%、韓国が300%に上り、台湾はスイスと同じく100%だそうだ(日本安全保障戦略研究所編『有事、国民は避難できるのか』国書刊行会、2022年10月刊)。

 台湾には現在約2万人の在留邦人がいて、出張者や観光客を含めると、有事の際には合計約4万人の邦人の安全確保が必要とされているという。

 日本経済新聞(2022年12月28日)によれば「邦人のシェルター利用について、日本政府と台湾の間で特別な協定は結ばれていない。だが所管の内政部は『外国人を含めシェルターは誰でも自由に利用できる』としている」という。

 翻って、日本の核シェルター普及率は0.02%。核シェルターに至っては誠にお寒い現状なのが日本だ。

 先の日本経済新聞によれば「ミサイルなどから一時避難できる場所として自治体が指定する施設は全国に5万2490カ所(4月時点)ある。このうち安全性が高い地下の施設は1591カ所で全体の1割未満だ」と報じ、さらに、すぐ避難場所といて地下鉄の駅が思い浮かぶが「日本の地下鉄は地面から浅い場所を走る場合が多く、シェルターとして機能しにくいのが現状」で、「都内の東京メトロでみると、避難施設として指定されているのは全180駅のうち約3割にあたる58駅(10月時点)にとどまる」という。

 沖縄県の与那国島は台湾から110キロほどの距離にある沖縄県の与那国町は、台湾に最も近い日本だ。昨年8月に中国軍が台湾周辺で軍事演習を行った際には周辺の海域に弾道ミサイル合わせて6発が着弾している。

 そこで町議会は昨年12月、内閣総理大臣などに対し避難シェルターの設置を求める意見書を賛成多数で可決、2月に上京し、政府に意見書を手渡してシェルターの設置を申し入れる予定だという。

 もちろん、避難シェルターを設置することは必要だろうが、台湾のシェルターに避難する方策も併せて検討したらいかがだろうか。

 台湾の在留邦人や旅行客も、日本に避難するより台湾に残ってシェルターに避難した方がよほど安全なように思われる。下記に毎日新聞の記事を紹介したい。

—————————————————————————————–台湾にシェルター10万カ所 人口の3倍超収容 対中警戒根強く【毎日新聞:2023年1月7日】https://mainichi.jp/articles/20230107/k00/00m/030/098000c

 中国からの軍事的圧力を受ける台湾は、空爆などに備えた緊急避難先としてシェルター(防空壕)を全土に10万カ所以上整備している。2022年8月に中国人民解放軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した後は、住民の間でも緊張感が高まった。地域ごとに退避訓練を実施するなど、有事への備えを進めている。

◆五つ星ホテル地下にも

 台北市大安区の光武地区にある地下の商業施設。通常は買い物客らでにぎわう場所が、有事にはシェルターとなる。「私は非常時には民間防衛の小隊長としての役割を担う。住民に対して定期的に民間防衛の啓発活動をしている」。光武地区で台湾の町内会長に相当する里長を務める韓修和さん(46)はそう話す。

 ロシアから空爆を受けるウクライナの都市では、地下鉄の構内などが防空壕の役割を果たしている。台湾は長年にわたり中国の軍事的脅威にさらされてきたため、早くから空爆への備えを進めてきた。1970年代から建築基準関連の法整備を進め、学校などの公共施設や商業施設、地上6階以上のマンションやビルなどにシェルターの設置を義務化した。例えば、日本人観光客に人気の五つ星ホテル「円山大飯店」(台北市)の地下にも73年に大規模なシェルターが建設されている。

 約7800人が住む光武地区では近くの地下街をシェルターに指定している。22年7月25日には住民を対象に大規模な避難訓練をした。シェルターまでのルートの確認や、身を守るための動作の訓練などを実施。これに先立ち地区の警察や行政機関などと会議を開いて非常時の連携などを確認した。

◆米下院議長訪台、脅威間近に

 その直後の同年8月4日、米国のペロシ下院議長(当時)による訪台に反発した中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を開始した。韓さんの事務所には住民から、シェルターの場所の確認や、有事に備えた物資の準備などに関する問い合わせが相次いだ。韓さんは「多い日で1日に30件ほど問い合わせがあった。22年は住民意識を変える年だった。住民には警戒心を維持するよう呼びかけている」と力を込めた。

 実際に空からの脅威を間近に感じている地域もある。中国南部福建省の沖合に浮かび台湾が実効支配する金門島では、ペロシ氏訪台の前後、中国製とみられる無人機(ドローン)の飛来が相次ぎ、台湾軍はこのうち1機を撃墜した。金門島には58年、中国軍が40日あまりで計48万発の砲弾を浴びせ、数百人が死亡している。無人機を目撃した陳滄江さん(67)は「中国がこれほどふてぶてしく台湾の領空を侵すのは非常に不愉快で腹立たしい」と憤る。

 台湾当局によると、シェルターは全土に約10万5000カ所あり、台湾の総人口の3倍を超える約8600万人を収容できる。台湾当局は住民への周知を強化しており、21年4月には近くにあるシェルターの場所が地図上で一目で分かるスマートフォンのアプリを導入した。

 ペロシ氏訪台後も、中国軍機が台湾海峡の「中間線」を台湾側に越える事案が相次ぎ、緊張は常態化している。台湾内政部(内政省)民間防衛指揮管制所は「中国軍機による台湾周辺での活動は歴史的な頻度となっている。非常時には市民のスマートフォンに警報が届き、自動的に近くにあるシェルターの位置を知らせる仕組みも導入した」と説明した。

【台北、金門島で田中韻】

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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