――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習105)

【知道中国 2439回】                       二二・十・念四

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習105)

毛沢東の綴った「為人民服務」の論旨から考えるに、「為人民(人民のため)」の究極の「服務」は、どうやら自己犠牲、つまり死に行き着いてしまいそうだ。ひょっとして、これが毛沢東思想に秘められた“不都合な真実”だったりして・・・。

 閑話休題。

 こここで当時の中国が日本やアメリカをどのように見ていたのか。言い換えるなら、水面下で米中交渉が進み、ニクソン訪中計画が極秘裏に着々と進行している一方で、表立っては日米の“帝国主義”をどのように見ていたのか。いわば外交上のタテマエとホンネをどのように使い分けていたのか。この辺を些か振り返って見たい。

 そこで最初に取り上げるのが『論日本軍国主義』(譚光・宇征途 黄河出版社)である。

 先ず「日本軍国主義は経済を復活への足懸かりとしている。(日本軍国主義復活を否定する)誤りを論駁し、さらに日本軍国主義の本質を明らかにするために、我われは日本経済の構造を詳細に分析しなければならない」と主張し、日本の軍国主義化を訴える。

――日本は敗戦の焼土から立ち直って経済上の「超級大国」を自認しているが、ドルの支援に加え朝鮮戦争やヴェトナム戦争の特需によって経済危機を乗り切ったことから、アメリカ依存の度合いは極端に高い。

アメリカ依存とは、つまりアメリカこそが日本製品にとっての主要な市場であり、同時に工業原料の主要な輸入先ということだ。日本は大企業が支配する資本主義の道を進まざるをえなかったし、これからも歩むことになる。

こういった経済の仕組みを維持するなら、日本経済は年率10%以上の成長を続けるものの、構造的には生産と投資を未来永劫に増大させるしかない。いわば一種の自転車操業であり、生産と投資を止めたら倒れてしまう。そこで必然的に生産過剰と原材料不足という2つの危機に見舞われることになる。

だから成長の速度が増し生産規模が拡大するほどに、あるいはアメリカ経済が危機的状況に立ち至るなら、日本経済の危機は必然的に一層深まってしまう。

この2つの危機を回避するための方策を、「日本政府、財界、産業界から得られた資料に基づいて」、以下のように分析してみせる。

先ず「生産過剰の危機回避策」として、�軍需産業の生産体制の拡充・強化。�海外進出を積極的推進。�情報産業、海洋産業などの新産業への積極投資による経済発展への刺激――の3点を挙げる。

『論日本軍国主義』は�については「ここでは論ずる心算はない」と断った上で、「影響力が最大」であると断定する�と�に関し分析を進めた。

先ず�だが、財界首脳陣による「自主防衛力の漸進的増強を」「防衛予算を国民総生産の4%規模に」「兵器輸出を」などの主張に加え、「日本の大企業と政府とは密接な関係にあり」、「防衛整備計画の基本は大企業が策定するものであり、より具体的にいうなら大企業各社で生産計画が策定された後、(政府の)防衛計画が定まる」ことから、「生産を刺激すべく、日本の大企業は防衛軍需部門に進軍している」と断定する。

次いで�だが、「経済の急成長に伴って不可避的に生ずる危機を回避し、同時に海外市場を開拓し、併せて原材料の確保を目指し」、「日本政府は自国企業に対し開発途上国への投資を奨励している」。これに労働力不足が加わるから、日本は必然的に周辺諸国・地域に資本を積極的に輸出し生産現場を移転せざるをえない。その重点はアジアであることから、「日本とアジアの国家・地域とは運命共同体であり、アジアの国々との“共栄”を求めるなどと、日本政府高官は嘯くのである」――やはり昔から言いたい放題は変らない。《QED》


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