【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」:2022年7月20日】 https://www.mag2.com/m/0001617134*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付けたことをお断りします。
◆台湾の安倍元首相に弔意を表す動きはいまだ止まず
台湾の民間シンクタンク「台湾民意基金会」が行った世論調査で、安倍晋三元首相の死去を悲しむ台湾人が71.9%にのぼることが判明しました。支持政党別では、民進党の支持者の88.9%が、国民党の支持者の66%がそのように回答したそうです。
先週のメルマガでも書きましたように、台湾の蔡英文総統は、安倍元首相の死後、全土の学校で追悼の半旗を掲げるよう指示しました。先の調査では、この蔡総統の判断について、肯定する人が66.2%にのぼり、こちらも民進党支持者の92.4%、国民党支持者52.4%という割合だったそうです。
台湾では安倍元首相に弔意を表す動きはいまだ止まず、日本の対台湾窓口機関である日本台湾交流協会が台北と高雄に開設した弔問記帳特設会場には、7月17日までに1万5000人近くが訪れたそうです。
日本でも多くの一般の方が弔問会場に列を作りましたが、台湾でも炎天下の中、たくさんの台湾人が訪れました。安倍氏への感謝の手紙や、なかには安倍氏がお気に入りだった台湾家庭料理を紙で再現したものなどを贈る人もいたそうです。
また、8月20日には「八田與一文化芸術基金会」や「台湾伝統基金会」など10以上の民間団体や企業が中心となって、台北国際会議センターで追悼コンサートが開催される予定になっており、台湾を代表する歌手を招き、「千の風になって」など日本の名曲を歌い、安倍元首相を偲ぶ予定です(「産経新聞」2022年7月19日付)。
産経新聞によれば、高雄市にある旧日本軍の軍艦を御神体としてまつっている宗教施設、紅毛港保安堂では、多くの市民から安倍氏を顕彰するための像を作って欲しいという要望があり、そのため安倍氏の等身大の像を制作し始めたそうです。日本で国葬が行われる日にあわせて、盛大な除幕式と追悼行事を行いたいとしているとのこと。
加えて、6月に発足した「安倍晋三友の会」は、170以上の台湾企業、団体、個人を募り、7月15日に産経新聞で安倍氏を追悼・感謝する全面広告を掲載しています。こちらをご覧になった方も多いのではないでしょうか。
1口5万台湾元(約23万円)で参加者を募ったところ、1で予定していた65口を大きく上回り、100口以上の出資があったそうです。
加えて、台湾人デザイナーの林国慶氏が「安倍晋三」という文字を逆さにすると「心是台湾」(心は台湾に)になるというアートを発表し、話題になっています。この作品は、東京在住のインターネットユーザーが印刷し、都内に設置された安倍氏の祭壇に供えられたそうです。
その他、台湾での安倍元首相追悼の動きは枚挙に暇がありません。外国人の政治家で、台湾でここまで愛された人物はいないでしょう。
◆李登輝元総統が好きだった「千の風」
台北駐日経済文化代表所代表(駐日大使)の補佐官や、台湾総督府の機要室長を務めた陳銘俊氏が7月16日の産経新聞に安倍首相への追悼文を寄稿していましたが、そのなかで、「まるで自分の家族を失ったかのごとく台湾人は悲しみ、その悲しみは日本人以上かもしれません」と述べていましたが、まさにそのとおりです。
台湾では、安倍元首相への追悼文に、「千の風になって見守ってください」という表現をよく使います。陳銘俊氏も「安倍元首相の一粒の麦、信念が、千の風になってより多くの日本の政治家に届き、識見を持ち自分の国を守り、同時に日本と台湾との兄弟の情を大切にして下さる政治家が増えていくことを心から願います」と書いています。
前述した追悼コンサートでも「千の風」が演奏されることになっています。
この「千の風」は、言うまでもなく日本の名曲ですが、台湾でも誰もが知っている曲です。李登輝元総統が好きだった曲としても有名で、2020年9月に行われた李登輝氏の告別式に、安倍元首相は「これからも『千の風』となって日本と台湾の私たちをやさしく見守ってください」という惜別のメッセージを贈っています。
そのような思い出からも、今度は多くの台湾人が安倍元首相に「千の風」を贈っているのでしょう。
◆安倍晋三元総理の国葬は妥当
日本では、安倍氏の国葬を9月27日に日本武道館で開催することで調整しているそうです。吉田茂の国葬や、佐藤栄作、大平正芳、岸信介、小渕恵三、橋本龍太郎、宮澤喜一など歴代の首相も武道館で葬儀が行われています。
安倍氏の国葬については、さまざまな意見が出ており、批判も少なくありません。NHKの世論調査では、安倍元首相の国葬実施について「評価する」が49%で「評価しない」が38%でした。しかし、歴代首相に比べても海外からの弔問が非常に多くなることは確実であり、そういった方々への警備や弔問外交の効果も含めて、国葬は妥当なのではないでしょうか。
メディアでは現在も、統一教会と安倍元首相の関係の深さを匂わせたり、モリカケ・サクラを取り上げて「疑惑は闇の中だ」などと論ずることが少なくありませんが、モリカケは安倍氏の関与を示す証拠は何一つ出ず、サクラも安倍氏は起訴されることはありませんでした。
勝共連合の時代から統一教会と自民党が関係があったことは歴史の事実ですが、自民党は神道も含めてさまざまな宗教団体の支援を受けているのであり、頼まれれば挨拶くらいはするでしょう。他の政党も同様だと思います。
それをあたかも安倍元首相が統一教会と関係が深く、そればかりか自民党が統一教会の支配下にあったという説まで出てくるのは陰謀論以外の何ものでもありません。自民党に対する宗教関連団体の影響力のことをいえば、常識的に考えて、連立与党の公明党・創価学会のほうがよほど大きいはずです。
評論家の高橋洋一氏は、左派メディアがこれほどまで安倍氏を敵視してきた理由は、本来は左派政権が実現すべきである雇用確保を民主党政権で実現できず、安倍政権によって成し遂げられたこと、また外交安全保障でも左派政権は役に立たないことが明らかになってしまったからだ、と喝破しています。
私はよく、反日リベラルはもはや反原発と沖縄問題でしか生き残れなくなったと述べてきましたが、エネルギー価格の高騰から世界的に原発が見直されており、日本での反原発論も下火になりつつあります。
憲法改正もいまや改正賛成派が国会の3分の2を超え、リベラルが戦える分野がどんどん少なくなっています。「反安倍」も安倍氏の死去でできなくなりました。
安倍氏の死去でもっとも焦っているのは、日本のリベラル勢力なのかもしれません。安倍元首相という攻撃対象がなくなったことで、自分たちの存在意義が失われる可能性があるからです。
※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。