今年2月10日、自民党の外交部会に「台湾政策検討プロジェクトチーム(台湾PT)」が設立されました。近年、中国による台湾に対する圧力の激化は、日本の安全保障にも影響しかねない状況となっていることや、米国で台湾との関係強化が図られ、「台湾旅行法」などの国内法が次々と制定されたことを背景としています。
日本政党史上、「台湾」を冠したプロジェクトチームが設けられるのは初めてのようで、それも、これまで日本が表立って打ち出せなかった台湾政策を検討するというのですから、台湾政府や日台交流をになっている関係者からの注目度はかなり高かったようです。
座長には「ひげの隊長」の愛称で親しまれる、参議院議員で同党外交部会長をつとめる前外務副大臣の佐藤正久(さとう・まさひさ)氏が就任。副座長には青年局長や外務副大臣をつとめた鈴木馨祐(すずき・けいすけ)衆議院議員、事務局長には法務大臣をつとめた山下貴司(やました・たかし)衆議院議員が就いています。
日本から台湾へワクチン124万回分を送る前日の6月3日午後、佐藤座長は菅義偉総理に「第一次提言」を手渡しました。
この提言は「米国との連携も視野に入れつつ、今後の台湾との議員外交において、進むべき方向性や重点政策等について検討」してきたことをまとめたそうで、自民党のホームページに全文を掲載しています。
◆外交部会 台湾政策検討プロジェクトチーム 第一次提言 https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/201712_1.pdf
一方、佐藤正久氏は日本経済新聞に寄稿し、「台湾有事は対岸の火事ではない。日本国民の命や暮らしに直結するわが国自身の危機」とする、台湾政策検討プロジェクトチームの基本認識ともいうべき見解を発表しています。下記にご紹介します。
麻生太郎・副総理兼財務相が台湾有事はすなわち日本の「存立危機事態」に関わると表明したように、台湾有事は日本の有事。この認識を深めたいものです。
—————————————————————————————–台湾有事、自国危機として備えを 佐藤正久氏参院議員・自民党外交部会長【日本経済新聞「私見卓見」:2021年7月14日】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA252IZ0V20C21A5000000/?unlock=1
「台湾有事」への国際的な関心が高まっている。6月中旬に英国南西部のコーンウォール地方で開催した主要7カ国首脳会議(G7サミット)では「台湾海峡の平和と安定」の文言が宣言文書に明記された。
近年、中国は台湾への威嚇を繰り返している。東・南シナ海での一方的な現状変更の試みについて、先進国間で危機感を共有し、中国に対する共通認識ができつつある。
一方で、台湾を巡る国際情勢が予断を許さない段階にまで緊張しているともいえる。台湾海峡は日本の重要な海上交通路(シーレーン)に位置する。台湾本島や、海峡に位置する金門島や馬祖島で軍事衝突が起これば、日本も経済的な打撃を受ける。
台湾と沖縄県の与那国島の距離は110キロメートル程度しかない。中国が周辺海域への侵入を繰り返す尖閣諸島も近い。
台湾有事は対岸の火事ではない。日本国民の命や暮らしに直結するわが国自身の危機として捉えないといけない。様々なシナリオを想定し、万全を期す必要があるが、日本の備えは不十分だ。
有事に最前線に立つのは在日米軍だ。中国が効率的に台湾侵略を進めるため、日本国内の米軍基地を先に破壊しようと考えても不思議ではない。抑止力を高め、米軍と自衛隊の防衛協力についての法的な位置づけを整理すべきだ。
与那国島などの先島諸島の住民の避難計画も欠かせない。海上自衛隊の輸送艦が停泊できる港は、石垣島と宮古島にしかない。戦闘機が着陸できる地耐力や整備能力を備えた空港もない。先島諸島で港や空港のインフラ整備に着手することも要るだろう。
台湾に住む邦人は約2万5千人いる。台湾側と退避計画を擦り合わせるべきだ。今年2月、自民党の外交部会に台湾政策検討プロジェクトチーム(PT)を立ち上げた。米国、台湾の高官らへのヒアリングをしたうえで、政府に提言し、邦人退避計画などの検討を求めた。
米国は議会がバイデン政権の対中政策を後押ししている。日本も台湾と国家としての外交関係がない以上、議会から連携を強化していきたい。
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