歯切れがよい。このニッポン放送でも「台湾はとても重要な場所で、一部の保守論客だけが台湾は 日本にとっての生命線だということを言っていた。それを茶化すような向きもあったのだけれども、それはとんでもない不見識で、台湾は日本にとっての生命線になる国です」と述べ、17年前に本会が設立してから主張していることとまったく同じ認識を示していた。
続けて「戦前には50年にわたって運命を共にして来た国で、最も日本に近しい国です。この運命に関して、日本の政治がどこまで深く関与できるかということ」とも指摘していて、日本版・台湾関係法(日台交流基本法)の制定や台湾とのFTA締結など、まさしく「日本の政治」が関与しなければできない「政策提言」を続けてきていることと軌を一にする指摘だ。
有本さんは今回「夕刊フジ」で「今こそ『日台同盟』を 国会で『日本版・台湾旅行法』を審議せよ」と題して寄稿している。
ここでも「日本版・台湾旅行法」という「日本の政治」が関与しなければできない法制定を提案している。「いま日本が東アジアで組むべき相手は台湾しかない」という重要な指摘もしていて、「かけがえのない『友人』に、いまこそ政治的ラブコールを送るべきである」と締めくくっている。
日本の識者が日台関係を論じるときは、往々にして「日台関係はとても重要」という指摘に止まることが少なくなく、具体的提案に欠けるきらいがある。有本さんの提案している「日本版・台湾旅行法」の是非はともかく、日本の政治家にはこのような具体的な提案が重要だ。下記にその全文をご紹介したい。
————————————————————————————-もう韓国にはうんざり…今こそ「日台同盟」を 国会で「日本版・台湾旅行法」を審議せよ【夕刊フジ「有本香の以毒制毒」:2018年1月18日】
◆もう韓国にはうんざり
日ごろ、政治には関心の薄い女性たちからも、最近はこういう声が多く聞かれる。昨年来、戦時労働者(=いわゆる元徴用工)の件や、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制用レーダーを照射した問題で、日本のマスメディアは相も変わらず韓国に振り回されている。
国民からの「うんざり」という声は、韓国に対してであると同時に、隣国の変わらぬ「マッチポンプ戦法」に、まんまと乗せられて振り回される日本の政治とメディアに対する声でもある。
しからば本コラムでは、韓国側の思惑や事情を探ることに血道を上げるのを止め、あえて東アジア情勢を俯瞰(ふかん)していきたい。そのうえで、筆者がいま一番に提言したいことは、「隣国・台湾と事実上の『同盟』をいかに結ぶか」である。
台湾の蔡英文総統は15日、東部・花蓮市の陸軍花東防衛指揮部を訪れ、連休となる旧正月(=今年は2月5日が元旦)期間中も任務に当たる兵士を慰労した。
正月も休みなく国防の任務に当たるのは、わが国の自衛隊も同様だが、視察先で蔡氏は、「両岸(=台湾と中国)関係に関し、中華民国台湾の主権や安全、民主化された自由な生活を守っていく固い決意を示した」とも報じられている。
20年以上も前から、日本でも保守論客からのみ、「台湾との連帯の重要性」が語られてきた。だが、一向に「世論」は盛り上がらない。その理由は、メディアの本流が台湾に目を向けず、ひたすら「日中・日韓」との友好・連携ばかりを言い立ててきたからだが、いま仮に、日本政府や国会が「台湾との連携」を言い出したとして、「反対」を叫ぶ国民はごく少数であろう。
すでに多くの日本国民が「台湾こそが日本にとって最も大事な『友人』だ」と認識している。特に、東日本大震災後の台湾国民からの熱い支援は、多くの日本人の胸に染みた。そして、日本と台湾はいまや、蔡氏のいう「民主化された自由な生活を守っていかなければならない」という課題を共有している。
すでに韓国が、わが国とは「価値観を共有する国」でなくなったと国防白書で明かした現状を鑑みれば、いま日本が東アジアで組むべき相手は台湾しかないと言っても過言でない。
そこで参考にすべきは、米国が昨年3月に成立させた「台湾旅行法」である。
同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官を含む米政府当局者全員が台湾に渡航し、台湾側の同等役職者と会談することや、台湾高官が米国に入国し国防総省や国務省の当局者と会談することを定めた法律だ。
中国との国交樹立以降、自粛されてきた米台高官の相互訪問を解禁し、ドナルド・トランプ大統領の台湾訪問、蔡氏のワシントン訪問も可能にしたとの宣言に等しい。
当初、中国の猛反発が予想されると米メディアは報じたが、それも「貿易戦争」でのトランプ氏の攻勢により押さえ込まれた格好だ。
こういう好機に巧みに乗る知恵を、日本の政府と国会は絞るべきだ。
中国の習近平国家主席が2日に「台湾を一国二制度で」と発言したことに台湾世論は猛反発した。これは国民の支持を失いかけていた蔡氏に利する発言となったのだが、ここでボンヤリしている日本であってはならない。かけがえのない「友人」に、いまこそ政治的ラブコールを送るべきである。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト 1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関 係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』 (ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真 実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など 多数。