中国による台湾へのさまざまな圧力が加えられる中、この「台湾関係法」はどのような使われ方をするのだろうと推移を見守っていたところ、まず米国が成立直後の3月20日に国務省の次官補代理(東アジア・太平洋担当)、22日には商務省次官補代理を立て続けに派遣している。連邦議会下院のエド・ロイス外交委員長も26日から訪台した。
しかし、これは米政府高官といっても小出しのジャブのようなもので、最大の見せ場は8月に訪れた。蔡英文総統がパラグアイとベリーズへ外遊中の往路の経由地、米国のロサンゼルスで下院のマクシーン・ウォーターズ議員やブラッド・シャーマン議員らと昼食を共にし、コリー・ガードナー上院議員とも会談した。また、復路の経由地となったヒューストンではロナルド・レーガン大統領図書館を訪問して異例の談話を発表するとともに、政府機関であるNASAのジョンソン宇宙センターに案内されている。
中国は、米国によるこの蔡英文総統の厚遇に仕返しするかのごとく、帰台直後の8月21日、エルサドバトル共和国と国交を結んで台湾と同国を断交させた。
しかし、米国も台湾もひるまない。今度は8月29日、陳時中・衛生福利部長(大臣)がワシントンの米保健福祉省でアレックス・アザー長官と会談した。米国の保健福祉省長官と台湾の衛生福利部長が米国の保健福祉省で顔を合わせるのは初めてのことだという。
また31日には、マケイン上院議員の葬儀に出席するため訪米していた蘇嘉全・立法院長(国会議長)がワシントンで下院のポール・ライアン議長と会談したという。
いずれも「台湾旅行法」の成果といっていいだろう。下記に毎日新聞の記事を紹介したい。
台湾との関係を強化する米国は、連邦議会の意思として大統領選さ中の2016年7月6日に「台湾の主権に関する立場を変えない」ことを含む「台湾に対する『6つの保証』」を可決し、この6つの保障が米台関係の基礎とすることを再確認している。
また「防御的な性格の兵器を台湾に供給する」ことや「台湾人民の安全または社会、経済の制度に危害を与えるいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる合衆国の能力を維持する」ことを定める「台湾関係法」も、米台関係の基礎としている。
米国は、「台湾の主権」「台湾人民の安全」を守る立場を鮮明にしている。中華民国の主権や安全ではないことに注意したい。つまり、台湾に台湾の人々が存在する限り「いかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗」すると国内法で定めているのだ。
大統領と連邦議会の意思が合致している米国の台湾を守る意思は固い。台湾をめぐる米中の動きからは目が離せない。
————————————————————————————-米国 台湾とハイレベル会談相次ぐ 中国けん制か【毎日新聞:2018年9月2日】
【台北・福岡静哉】台湾立法院(国会)の蘇嘉全・院長(議長)は8月31日、米ワシントンで米下院のライアン議長(共和党)と会談した。同29日には台湾の陳時中・衛生福利部長(衛生相)がアザー米厚生長官と会っており、米台のハイレベル会談が相次いでいる。中国との貿易戦争が激しさを増す中、トランプ米政権は「台湾重視」の姿勢を強め、中国側をけん制しているとみられる。
蘇氏はマケイン上院議員(共和党)の葬儀に出席するため訪米。これに合わせライアン氏と会談した。蘇氏は米国議会が台湾との関係を重視していることに謝意を示した。
一方、陳氏はこれとは別に訪米し、ワシントンの米厚生省内でアザー氏と会談した。台湾は中国の圧力で世界保健機関(WHO)の総会に2年連続で参加できておらず、米側に台湾の総会参加を支持するよう求めたとみられる。アザー氏は自身のツイッターに陳氏との記念写真を掲載し「素晴らしい会談だった」と記した。
米国では今年3月、米台高官の相互訪問を促進する「台湾旅行法」が成立。高官訪問の機運が高まっている。