本誌で伝えているように、トランプ政権が「台湾関係法」を基盤に「2018年国防権限法」や「台湾旅行法」など台湾との関係強化をはかる国内法を制定している目的は、中国の覇権的で強引な拡張政策を抑え込むためと理解できるからだ。
そのことは、米国が5月23日、現在実施されている今年のリムパック(環太平洋合同演習:Rim of the Pacific Exercise)への中国の招待を取り消したことに端的に現れている。
米国の国益は西太平洋地域における平和と安定にある。日本も台湾も同様だ。加藤良三氏が「日本にとって最高の布陣」と指摘したのも宜なるかなだ。
それを証するように、ランディ・シュライバー国防次官補は7月18日、ワシントンのシンクタンクで講演し「中国が台湾への軍事圧力を強めていると懸念を表明、武器売却などを通じて台湾と軍事面での関係強化を進めていく意向を示した」(共同通信)という。
米国は政権内ばかりでなく、議会にも少なくない親台派議員がいる。下院で「台湾旅行法」を提案したのは、スティーブ・シャボット下院議員(共和党)、ブラッド・シャーマン下院議員(民主党)、下院外交委員会のエド・ロイス委員長であり、上院ではマルコ・ルビオ上院議員(共和党)、シェロッド・ブラウン(民主党)、ジム・インホフ(共和党)、ロバート・メネンデス(民衆党)、コーリー・ガードナー(共和党)、ゲイリー・ピーターズ(民主党)の6議員が提案者となっていた。
7月18日、米のヘリテージ財団と台湾民主基金会が共同で開催した国際シンポジウムにおいて、下院外交委員会アジア太平洋小委員会のテッド・ヨーホー委員長は、「一つの中国、一つの台湾」を支持し、台湾が「民主的実体」として存在していることは事実だと表明したという。
日本にも親台派と言われる国会議員は少なくない。しかし、米国の立法実績とはまさに月とスッポン。同じ立法府に所属しながら、日本には台湾に関する法律は1本もない。テッド・ヨーホー委員長のごとく発言する国会議員も見当たらない。
————————————————————————————-「一つの中国、一つの台湾」支持表明 米下院外交委小委員長【中央通信社:2018年7月19日】
(ワシントン 19日 中央社)米下院外交委員会アジア太平洋小委員会のテッド・ヨーホー委員長は18日、ワシントンで開かれた台湾と中国の関係について話し合うシンポジウムで演説し、「一つの中国、一つの台湾」を支持する立場を改めて表明した。報道陣の取材に対しては、米国は台湾が「民主的実体」として存在していることは事実だという現況に現実的に向き合うべきだと述べた。
ヨーホー氏は、米国の目標は中国を抑えつけることではなく、米国は中国と貿易を行い、良好な米中関係を持ちたいと願っていると言及。その一方で、中国は威嚇や脅迫などの振る舞いを続け、南シナ海問題に至っては世界を欺いたと指摘し、「米国は欺き嘘をつく国と商売や関係構築をしたいとは思わない」と語った。
中国が台湾を世界保健機関(WHO)総会から排除したことに関しては、「中国が頭がいいのであれば、台湾が引き続き発展できるよう後押しするべき。こうすることで中国も利益を得られる」と中国に呼び掛けた。
米国の台湾政策にはグレーゾーンがあるとした上で、米国の全レベルの官僚の台湾訪問を認めた「台湾旅行法」の成立を受け、関連の対台湾政策が着実に行われるようにし、米台関係を実務的に強化する必要があると述べた。
シンポジウムは米シンクタンク「ヘリテージ財団」と台湾民主基金会が共同で開催した。
(鄭崇生/編集:名切千絵)