対フィリピン問題配慮か 馬総統就任5周年の会見を中止 台湾
2013.5.21 産経新聞
【台北=吉村剛史】台湾の馬英九総統は20日、就任5周年を迎えたが、予定されていた記者会見を中止した。会場の中南部などでの豪雨に備えた災害対策本部での待機を理由にあげたが、フィリピン沿岸警備隊による台湾漁船銃撃で台比関係が緊張する中、内外メディアへの露出を控えたとみられている。
台湾人船員1人が死亡した9日の銃撃事件で台湾は15日、比側の対応を「不十分」とし、就労申請凍結や経済交流の停止、現場海域での総合演習など計11項目の対抗措置を発動した。
これに対し、海外メディアから「性急」「強硬」との見方が浮上する中、地元でも「制裁措置は、対比輸出超過の台湾側への打撃が大きい」(工商時報)との批判も出ている。会見中止は、問題についてのメディアからのさらなる追及を避けたためとの見方がある。
昨年1月の総統選で再選を果たした馬総統にとり、20日は2期目の1周年にもあたり、中南部の雲林科技大学で太陽光発電技術の視察をし、現地で内外メディアと会見する予定だった。
馬政権は原発漸減政策をとりつつも、北部で建設中の第4原発の商業運転開始をめざし、建設の是非を問う住民投票を計画。即時建設停止を求める野党と対立しており、会見ではクリーンエネルギーへの取り組みを強調する狙いだったようだ。
対外面ではこの1年、尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題で日中が対立する中、馬政権は中国同様に尖閣への主権を主張しつつも日台漁業協議再開にこぎつけた。主権問題を棚上げして日台漁業取り決めを結び、尖閣周辺で従来の主張以上の漁場を得た実績をアピールするとみられていた。
馬総統は今夏に中国国民党主席選を、来年末には統一地方選を控えているが、経済は低迷しており、側近の不祥事も続発。最近の世論調査によると、支持率は14%と依然、低い。20日の夕刊紙、聯合晩報は「史上最も地味な就任記念日」と報じた。