【レポート】政府「媚中の壁」に挑んだ中津川博郷議員

【レポート】政府「媚中の壁」に挑んだ中津川博郷議員/「もう一つの教科書
問題」を衆議院外交委員会で

                  永山英樹

ブログ「台湾は日本の生命線!」より。ブログでは関連写真も
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-1166.html 

■岡田外相らを前に愛国議員の面目躍如 

五月十九日午前の衆議院外交委員会で質疑に立った中津川博郷委員(民主党)は
、北方領土、尖閣諸島、竹島などの領土問題、そして北朝鮮拉致問題に触れ、「
なぜ長時間かけながら解決の糸口が見つからないのか」「外交とは国民の生命、
財産、領土を守るためのもの」と論じ、こう強調した。

「日本人は領土問題への意識が希薄。小さいときの教育が大事だ」

そしてその上で中川正春文科副大臣に対して次のように質した。

―――教科書では北方領土についてきちんと記載しているか。

―――北方領土の島の名を漢字で書けない人が多い。小六までに書けるように指
導すると約束を。(これに中川氏は頷く)

そして岡田克也外相にも「鳩山首相は八ヶ月で北方領土問題解決の糸口を見つけ
たのか」と。

まさに熱血の愛国者で知られる中津川氏の面目躍如たるものがあったのだが、し
かしこの日はまだ、それだけでは終わらなかった。

■中国の政治宣伝を反映させた教科書の「誤表記」

「教科書問題」と言えば誰もが「中国・韓国などの圧力と歴史教科書の記述の問
題」を思い浮かべるが、実は「中国の圧力と地理教科書の問題」と言うものもあ
る。

このあまり語られることのない、つまり放置されたままである「もう一つの教科
書問題」を、中津川氏は取り上げたのだ。

ではそれはどういうものかと言うと、中学生が社会科で使用される地図帳には、
帝国書院の『新編中学校社会科地図』と東京書籍の『新しい社会科地図』の二点
があるが、ともに台湾を中国の領土として記述しているのだ。

たとえば、

!)「東アジア地図」で中国と台湾との間に国境線を引かず、「中華人民共和国」
と国名表記されたエリアに台湾が組み込まれている。

!)中国の資料地図に台湾も中国の領土として記載されている。

!)各国統計一覧のなかで中国の面積数値に台湾の面積が含まれている。

しかしこれらは言うまでもなく、事実と異なる。従って決して許されることのな
い教科書の「記述ミス」であり、これを合格させた文科省の「検定ミス」である
。しかもただならぬことに、「故意のミス」だと言うことができる。

なぜなら台湾併呑を正当化する目的で行う中国の政治主張、虚構宣伝に従ってい
るからだ。中国さえそのような宣伝圧力を日本側に加えていなければ、こうした
誤表記が行われるはずがないのだ。

文科省が中国への配慮により、事実に照らして正確な記述しか許されない教科書
での誤記述を容認しているとの現実がここにあるのである。

■厚い壁―政府に台湾問題の「真実」は通じない

実は〇五年十月、笠浩史衆議院議員(民主党)もこの問題を取り上げたことがあ
った。

「日本政府は台湾を中国の領土とは承認していない」にもかかわらず、「教科書
で台湾が中国領として取り扱われている」ことに関し、政府の見解を求める質問
主意書を提出したのだが、小泉純一郎首相(当時)による答弁書は、教科書の記
述の誤りを認めるものではなかったのである。

つまり真実が通じなかったのである。政府の「媚中の壁」の厚さが予想以上であ
ることを思い知らされた。

そこで中津川氏は今回、何とかこの異常事態を打開しようと立ち上がったわけだ

中津川氏はまず、「笠浩史先生が出した質問主意書のとおり、教科書は台湾を中
国領と表記しているが、ご存知か」と質問すると、中川氏は「認識している」と
答えた。

そこで「日本政府は台湾を中国の領土と承認していない」と中津川氏。次のよう
な日中間の経緯に触れた。

■外務省「答える立場にない」では話にならない

―――政府は昭和四十七年の日中共同声明で、「台湾が中華人民共和国の領土の
不可分の一部である」との中華人民共和国政府の立場を「十分理解し尊重する」
としている。「承認する」とは言っていない。

そしてその上で、次のように主張した。

―――教科書の地図を見ると、政府は台湾を中国の領土と見ているとの印象を与
える。小中学生が見たら、台湾は中国のものだと思ってしまう。

ここでも「小さいときの教育が大事だ」との持論をふたたび振りかざしたわけだ
が、それではこの正論に対し、政府側はいかなる対応に出たかと言うと・・・。

中津川氏もやはりここで、政府の堅い「媚中の壁」にぶち当たる。

参議院本会議に出席のため、一時退出した岡田外相に代わって答弁に立ったのは
武正公一外務副大臣だった。「ご指摘の通り政府は中国の立場を理解し尊重する
が、それを承認する立場ではない」と認めたものの、

―――台湾の何らかの地位を認定する立場にない。(「台湾に対するすべての権
利、権原及び請求権を放棄しており、台湾の領土的な位置付けに関して独自の認
定を行う立場にない」との政府見解を述べたもの)

―――(これら教科書は)検定基準に照らし、教科用図書検定調査審議会の審議
により、教科用図書として適切であると判断されたものだ。

このように述べ、「外務省として答える立場にない」と答えた。

つまり教科書の表記内容の是非については敢えて触れなかったのだ。小泉答弁書
もこのようなものだった。

これでは一切議論にならない。議論を避けるための政府側の答弁と言える。何し
ろ「台湾は中国の一部」と主張する中国の前で「台湾」の真実を語ることはタブ
ーなのだ。

■生徒はどうなるー納得できない文科省の説明

それでも「誤解を与える」「直すよう指導を」と訴える中津川氏。それで生徒た
ちの教育はどうなるのかと言うことだ。

ところがこれに対する中川氏の回答は、学校教育を司る文科省の説明としてはま
ったく納得できないものだったのだ。

「国家としての整合性を持たせ、検定基準を作っている」とし、こう説明した。

―――外国の国名(あるいは領土)については検定基準により、原則として外務
省編集協力の「世界の国一覧表」によって表記されている。台湾については「世
界の国一覧表」で「その他の主な地域」に分類され、「中華人民共和国政府は、
台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの立場を表明しており、日
本国政府は、その立場を十分理解し尊重することを明らかにしている」との解説
が付されている。教科書の発行者は、それを踏まえて編修しており、適正である
と判断された。

これもまた、小泉答弁書の内容と同じものだった。

以上を見てもわかるだろう。

政府は台湾の台湾の領土的な位置付けについて「独自の認定を行う立場にない」
としながら、教科書検定においては台湾を中国の領土だと「独自の認定」を行っ
ているのである。

しかもその理由は、「世界の国一覧」なる小冊子に、「中国の立場を理解し尊重
する」との政府の立場が記されていると言うだけのものなのだ。

■捏造された日中共同声明を媚中の隠れ蓑に

「中国の立場を理解し尊重する」とは「台湾が中国の領土の不可分の一部である
」ことを「承認しない」と言う意味のもの。だから「世界の国一覧」も台湾を「
中国の領土」などとは説明していない。

しかし政府はその文言の意味をあえて捏造し、そしてそれを隠れ蓑として、中国
の「立場」(政治宣伝)を教科書に反映させ、生徒たちに押し付けるとの驚くべ
き媚中行為を行い続けているのである。

だからこそ中津川氏はなおも切々と訴えた。「台湾派も中国派もない。中国は大
事だが台湾も大事なのだ。文科省も外務省もしっかり取り組んでほしい」と。

では台湾はいかに大事なのか。

中津川氏は最後に、次のように熱弁を振るっている。

■台湾の重要性を日本人としての誇りに訴え

―――台湾は「地域」と呼ばれるが、主権国家であることは間違いない。選挙も
行われている。中国に選挙はあるか。

―――(歴史問題について)韓国や中国は日本の悪ばかり言うが、台湾は評価し
ている。

―――台湾の人たちは日本人より日本的。素晴らしい人たちだ。しかしその人た
ちが、いつ中国に取られるかと、危機感を以って暮らしている。

―――台湾は日本の安全保障上、もっとも大事なところ。もっと大切にしなけれ
ばだめだ。国会でも台湾をしっかり理解して行こう。

―――台湾のあらゆる面の重要性を理解し、行政をやっていただきたい。

これらは政府側の、日本人としての誇りに訴えたものである。

武正氏も中川氏も良識派だと言われている。だからここではしっかりとそれに応
えて見せた。

武正氏は「安保上大事だと言う視点、思いはしっかり承った」と答えた。

中川氏は「難しい外交バランスの中で政府のスタンスがあるが、個人的、心情的
には一にするところが多い」と述べた。

■安全保障から見た教科書問題―中国情報戦の危険性

その言やよし。しかし今問題となっているのは、政治家たちの「個人的心情」で
はなく、あくまでも政府による学校教育での中国の政治宣伝への加担行為なので
ある。

「難しい外交バランス」のなかで、政府が中国の圧力に屈していると言う実態こ
そが問題なのだ。

教科書に載る問題の「台湾入り中国地図」は、将来において中国の台湾併呑が達
成されたときの地図なのである。これは日本にとっては安全保障上、何としてで
も現実のものとしてはならない悪夢の地図だと言えよう。

あるいは中国が台湾併呑を達成するため、日本国民の妨害を予め阻止する目的で
展開する情報宣伝戦、洗脳戦の産物だとも言うこともできる。

日中共同声明以降のこの約四十年間、毎年百万人以上もの生徒たちに、こうした
危険な教科書が押し付けられてきたと言う現実を、国民は直視しなければならな
いはずだ。

我々日本李登輝友の会はこれまで、この「もう一つの教科書問題」に取り組んで
きたが、中学校の教科書検定が行われる今年、活動もいよいよ正念場を迎えてい
る。

そうしたなかでの中津川氏の問題提起は、我々にとっては大きな励みとなった。

勇気ある中津川氏に注目を。そして全国国民の呼応を待ちたい。国民が無関心で
ある限り、政府は国民教育に背信的な媚中行為をやめることはないのだ。

中国の前で日本の教育は、今や国家主権はもとより、国家の安全保障にも深く関
わっているのである。


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