1920年(大正9年)〜1930年(昭和5年)の10年間、台湾南部の嘉南平原に、烏山頭ダム
と嘉南大圳(水路)を建設した金沢出身の土木技師、八田與一氏の人物とその業績を
描いたアニメ本、「八田與一」が今年5月に出版される予定だ。
同書は、小学館の「学習 まんが人物館」シリーズで出版されるもので、その副題には
「台湾に東洋一のダムと水路を建設した日本人土木技師」と記されている。内容はアニメ
と学習資料館に分けられ構成されており、アニメの部分では、八田氏が烏山頭ダム建設の
必要性を考えるに至るまでの当時の嘉南平原一帯における旱魃被害、塩害などの状況が紹
介され、続いて、建設が実現されるまで、また完成にいたるまでの経緯や苦労談などが、
八田氏の工事にかける真摯な姿勢、結婚なども合わせ描かれている。
また、学習資料館では「八田與一 ひとと時代」という内容で、写真でたどる八田與一、
烏山頭ダム建設の軌跡、年表などがそれぞれ紹介されている。そのほか、故・八田晃夫氏
(八田與一氏の長男)の夫人で、自身の父親も台湾総督府土木部烏山頭出張所の所長をし
ていた八田綾子さんも当時の思い出を書いている。また、「財団法人八田與一文化芸術基
金会」の蘇俊雄・理事長が「八田與一への感謝と敬意」と題し文章を寄せている。同書は
日本の各小学校をはじめ中華学校にも学校図書として配布される予定となっている。
八田與一氏の漫画は今回のアニメ本出版のほかにも、2008年にアニメ映画「パッテンラ
イ!!〜南の島の水ものがたり〜」が八田氏の出身地、金沢で公開され、翌2009年には同
映画が東京でロードショー上映されたほか、台湾各地でも上映され話題になった。
八田與一氏は1942年(昭和17年)5月に戦死し、1945年(昭和20年)9月に八田氏の夫人
も台湾で亡くなった。烏山頭ダムと嘉南大圳の完成により不毛の地といわれていた嘉
南平原は肥沃な穀倉地帯へと変わったことから、地元の人々は八田氏に対する感謝と慰霊
の念を留めるために、烏山頭ダムのほとりに八田氏の銅像と夫妻の墓碑を建て、現在でも
毎年有志が墓前祭を行っている。
さらに、昨年からは八田氏の一家が当時住んでいた宿舎やその場所一帯を「八田與一紀
念パーク」にする改修工事が進められており、今年5月8日の墓前祭では、同パークの開幕
式も行われる予定だ。
■書 名:小学館版学習まんが『八田與一』
■著 者:まんが/みやぞえ郁雄 シナリオ/平良隆久 監修/許光輝
■版 元:小学館
■体 裁:菊判、160ページ
■定 価:1,155円(税込み)
■発売日:2011年5月27日