【産経新聞:2012年10月30日「台湾有情」】
第二次大戦の日本降伏にちなむ台湾の「光復節」の25日、「1千人規模の反日デモが行
われる」というので、のぞいてみた。
沖縄県・尖閣諸島の主権や、中台統一を主張する民間団体の集まりだったが、総統府前
に行くと話半分どころか、学生も含めて100人前後しかいない。
前日には馬英九総統も、自身のフェイスブックで「釣魚台(尖閣諸島の台湾名)は日本
に誘拐された赤子」と厳しく指摘していたが、これら当局や一部活動家と、街の親日的な
空気は明らかに隔たりがある。
「日中関係が悪化し、日本の政局も混沌(こんとん)とする中、日本をゆさぶり、漁業
問題などで譲歩を迫るには好機だからね」と与党・中国国民党の幹部はいう。
とはいえ、台湾当局の姿勢がいずれ社会に浸透し、庶民の親日感情にまで影響しないと
もかぎらない。
そんな中、台湾の鳥類研究者らが日本の研究者を招き、北部・基隆沖の離島、彭佳嶼
(ほうかしょ)で合同調査を行うというので同行させてもらった。
同島ではアホウドリが絶滅してしまったものの、台湾の研究者は約140キロ離れた尖閣か
らのアホウドリの飛来と、再繁殖へ期待を寄せる。「野生動物の保護育成と政治は無関
係。積極的に日本に協力を請う」という言葉を、額面通りに受け取りたいが…。