【産経新聞:平成24(2012)年5月29日「台湾有情」】
台湾の日本語世代の歌人、呉建堂氏(故人)が創設した短歌会「台湾歌壇」の事務局
長、三宅教子さんは、岡山県倉敷市の出身。細やかな気配りで知られる会のアイドル的存
在だ。
岡山大時代に縁を得た台湾の留学生と結婚。1男3女にめぐまれ、1977年に家族で来台し
た。
その三宅さんから、自費で編んだ初の歌集「光を恋ひて」をいただいた。
異郷生活のとまどいや望郷の念、台湾への愛着が深まる様子がうかがえ、在留邦人の精
神史の一例としても興味深い。
三宅さんは、日本語世代の会員が年々減少する様子をみて、「最後の一人までお世話を
したい」と決意し、数年前から月例会の準備や歌集の編集を支えている。その思いは2年前
に詠まれた次の歌からもうかがえる。
「亡き友らの歌読みをれば留めたき思ひ次第に膨らみてくる」
大学での講演など、地道な活動が実を結び、一時は十数人だった月例会の参加者が、今
や平均50人以上、会員数も100人以上に増えた。
日台の若者の入会も相次ぎ、「先住民の若者からも佳作がよせられました」という三宅
さんは、「今後は、次代への運営引き継ぎに取り組まなければ」と目を輝かせている。
(吉村剛史)