Civil Aviation Organization)の総会が開かれ、台湾が「理事会議長の特別ゲスト(Guest
of Honor)」で参加できることになった。国連脱退後、初めてのことだそうだ。
台湾の外交部は9月13日、ICAO総会には「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」の
名称で、交通部民用航空局の沈啓局長が出席する旨を発表している。この件について産経
新聞の西田令一・論説副委員長がかなり詳しく報じているので下記にご紹介したい。
記事にもあるように、世界保健機関(WHO)総会へのオブザーバー参加に続く、台湾
の「外交空間拡大」とはなるものの、アメリカの強い後押しと中国の「了解」がなければ
いずれも難しい案件だった。それも中華台北(チャイニーズ・タイペイ)以外の名称は認
められなかった。
台湾は1991年11月、アジア太平洋経済協力(APEC)に中華人民共和国や香港ととも
に加盟しているが、名称はやはり「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」だ。オリンピ
ックも「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」である。台湾は2002年1月1日に世界貿易
機関(WTO)に加盟していて、これは中国が加盟した2001年12月11日から半月後のこと
だったが、その名称は「台澎金馬個別関税領域」。
他の国際機関にしても、台湾が加盟するには、常にアメリカや日本などの強い後押しと
中国の「了解」がなければ難しいのが現状だ。
台湾は世界保健機関(WHO)総会へのオブザーバー参加のときも「中華民国」での参
加を主張したが、参加を優先して「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」を受け入れた。
現在、台湾で政権を樹立している「中華民国」がこの国名を変更しない限り国連加盟の
道は閉ざされている。なぜなら、中華人民共和国が中華民国の後身として国連に加盟した
とき、その加盟名称を「中華民国」のままにしているからだ。ロシアが「ソ連」の名称の
まま加盟しているのと同様だ。
中華民国が国名を「台湾」に変更すれば加盟への道は開かれるのだが、馬英九政権には
その素振りも萌芽もない。
日本が昨年7月9日から実施している在留カードは在日外国人必携のものだが、台湾出身
者の「国籍・地域」欄の名称は「台湾」。何を根拠にしたかというとパスポートだ。日本
は「中華民国」を認めず、台湾(TAIWAN)と明示しているパスポートを認めたから
である。
ところが、国名は変更しないと明言している馬英九総統自身、在留カードの台湾表記へ
の変更を「台日関係の改善および深化に力を注いできた『成果』だ」(2010年11月3日)と
絶賛し、同じような発言を繰り返している。
つまり、台湾のさらなる外交空間の拡大は、「台湾」なら可能だということであり、中
華民国という国名を名乗っている限りはほぼ絶望的と言ってよい。
台湾、ICAO総会出席へ 国連脱退後初 「アジアの空」安全強化
【産経新聞:2013年9月18日】
国連専門機関、国際民間航空機関(ICAO)の総会(24日開幕)に、台湾が国連脱退
後初めて出席する。アジアの「空の安全」が強化され、同じ国連機関の世界保健機関(W
HO)総会へのオブザーバー参加に続く、台湾の「外交空間拡大」ともなろう。
(台北 西田令一)
◇
ICAO総会は、本部のカナダ・モントリオールで10月4日まで開かれる。3年に1度の総
会への出席はこの13日、ICAOから「特別ゲスト」としての招待状が届いたと台湾当局
が発表したことで確定した。
1971年の国連脱退以来のICAO“復帰”へ向け、台湾は3、4年、官民ともに取り組ん
できた。待ちに待った招待状を手にする直前の9月上旬、22カ国の記者ら22人を招いて繰り
広げた会見攻勢も、追い込みの一つだった。
外交部(外務省に相当)の謝武樵国際組織司長(局長)は、「2009年のWHO総会参加
とその経験を踏まえれば、2つの国連機関参加を働きかけられる」と見込み、ICAOと国
連気候変動会議を挙げた。
× × ×
WHOについては、中国で猛威を振るった新型肺炎(SARS)が、台湾でも感染を広
げて世界の懸念を強めた結果、オブザーバー参加への国際的機運を高めた面もある。IC
AO不参加では何が問題なのか。
謝司長はICAOで決まる安全運航とテロなどへの保安対策、ルートに関する情報の遅
延を指摘した。
交通部民間航空局の保安担当者は、ICAOが全メンバーに書簡で伝えた保安上の新国
際基準を、後になって知らされたと証言し、ある中華航空幹部は、台湾上空通過のルート
変更をICAOから通告されていなかった点をとらえて、「地域の運輸の安全を危うくす
るものだ」と警告した。
× × ×
台湾は現在、現地と外国の航空会社50社以上が離着陸し、日本を含む世界の110都市との
間を結んでいるアジアの航空拠点だ。ICAOへの参加で、国際社会の不安を払拭でき
る。中華航空の楊辰上席副社長はWHO参加を例に「われわれの経験をもって世界に貢献
できる」とも強調した。
ICAO参加について台湾の航空安全調査委員会が3年ほど前に打診した際、中国側の反
応は「時期尚早」だったという。それが昨秋、「台湾が適切な方法でICAO関連活動に
参与できるよう検討する」(台湾の連戦元副総統との会談での中国の胡錦濤国家主席発
言)に変わってきた。
加えて、オバマ米大統領がこの7月、台湾のオブザーバー参加への策を講じるよう国務長
官に指示する法律に署名したことも、総会出席への追い風となったかもしれない。
だが、事情に詳しい熊正一・台南応用科技大学教授は、中国の了解なしの参加はあり得
ないと断じ、中国側は見返りに何かを求めるとの見方も示していた。
ICAO総会出席は、「国際空間における台湾のさらなる成果」(謝司長)となる。半
面、台湾の馬英九政権のさらなる対中接近になりはしないか、日本として気になるところ
ではある。
◇
【用語解説】国際民間航空機関(ICAO)
国際民間航空の安全と効率的発展を目指して1947年に設立され、191カ国が加盟する。平
和目的の航空機の設計、運航技術の奨励、航空路、空港、航空保安施設の向上の奨励など
を行う。