は、中国国民党から洪秀柱氏(立法院副院長)、民進党から蔡英文主席、親民党から宋楚瑜主席が
名乗りを挙げている。
報道によると、10月2日、洪秀柱氏はラジオ番組で、台湾は「最後は(中国との)統一が必要
だ」と述べ、さらに、馬英九総統の「統一せず、独立せず、武力行使せず」の方針についても「役
割を終えた」とし、中国当局との統一交渉を意味しかねない「政治対話」の必要を改めて訴えた
(産経新聞)という。
どうも洪秀柱氏の人気が上がらない。支持率も3人の中では最低だ。多くの台湾人が「現状維
持」を望んでいる現在、自身のこのような急進的な統一発言が足を引っ張っていることもあるが、
それよりも党内での不人気ぶりが目立つ。立法委員の候補者が応援演説を頼まない。
一方の宋楚瑜氏の出馬は、総統選に勝つことは端から目的ではなく、親民党の立法委員を当選さ
せることにあると言われている。民進党も中国国民党も立法委員選挙で過半数を取れなかった場
合、親民党がキャスティングボートを握る立場に置きたいからだという。
米国訪問で成果を挙げた蔡英文氏が総統選に勝利するのはほぼ確実視されている。10月6日から9
日に来日する。日台若手議連会長の岸信夫・衆議院議員の案内で山口県を訪問したり、民主党や自
民党議員などと交流するという。
米国在住のアンディ・チャン氏が総統選を中心にした中国国民党と民進党の選挙情勢を分析して
いる。李登輝元総統が、選挙後は王金平・立法院長を中軸とした「台湾国民党」を作ったらよいと
提案したことには触れていないが、廖了以・元台中県長が雲林県の張栄味・元雲林県長と「台湾国
民党」を組織すると言い出したことに触れている。「国民党が惨敗すれば中華民国の滅亡は時間の
問題」だという。なかなか興味深い分析だ。
國民黨の瓦解─国民党は3分の1議席を取れるかどうかが存亡の鍵となる
【Andyの国際ニュース解説(AC通信:No.561):2015年10月1日】
来年1月の総統選挙では民進党の蔡英文当選確実、国民党の洪秀柱落選と言われ、メディアは国
民党の内部分裂で洪秀柱を降して代わりに党主席の朱立倫を立てると報道している。調査では、朱
立倫が出馬しても蔡英文に勝てないから朱立倫が出馬するわけがない。
国民党内部で洪秀柱おろしの噂が絶えないのは、立法委員の候補者が洪秀柱と一緒に選挙運動を
したら人が集まらないと言うので彼女を敬遠するからだ。
国民党員の間では党の人気が低いのは洪秀柱が原因だろうか。立法委員選挙も総統選挙も負ける
としても負け方による、惨敗すれば国民党の存続にかかわる一大事と言う。現在の調査では、国民
党は国会の30〜40議席しか取れず、過半数の57席に及ばないと言う。
●洪秀柱の不人気は国民党の責任だ
洪秀柱は総統になる資格はないと言うが、5月に党が候補者探しをしていた時は有力候補とみな
されていた朱立倫、王金平などがみな出馬を断ったので候補者がいなかった。その時に洪秀柱が出
馬すると言いだして、7月19日の党大会で洪秀柱が国民党の公認候補となったのだ。人気がないと
はいえ、党の公認を得たのだから、党が支持しなければならないのは当然である。
ところが7月以降も人気は低迷を続け、立法委員の候補者たちは洪秀柱と一緒に選挙運動をした
ら人が集まらず、立候補を辞退する者や個別に選挙活動をする者が出てきた。国民党の有力地区と
言われる新北市、桃園、新竹、苗粟などでも国民党の人気は下がる一方だから、党員の危機感が高
まり、洪秀柱を降して朱立倫を立てる「換柱挺朱」が表面化したのだ。
党公認の候補を降ろすのは規則違反である。しかも、朱立倫が出馬しても落選するなら、彼は出
馬するほどバカではない。それでも朱を立てる理由は何故かと言うと、洪秀柱なら国会では30議席
しか取れないが、朱立倫が出馬すれば朱が落選しても国会で40議席は取れる、国民党としては3分
の1以上の議席を確保したいのだ。
党公認の候補を支持するのは党員全体の責任だが、党員たちは逆に彼女に責任を押し付けてい
る。党公認の洪秀柱が自分から辞任する条件、慰撫金か国民党の地位かを模索中という。
洪秀柱はこのような噂にかなり不満で、「国民党員は総数88万人、党員が一人10票を集めれば少
なくとも800万票、当選は確実である」と述べた。だが、不人気な国民党の党員が一人10票集めら
れるか疑問である。
国民党がこれほど落ち目になったのは台湾人の反中国意識が強烈になった、中国の台湾統一路線
がシャットアウトされたからである。
去年のヒマワリ学生運動、11月の中間選挙の惨敗に加え、国民党の名誉主席連戦が中国の「抗日
70周年記念パレード」に参加したことで人民の反中国意識が高まったので国民党は惨敗するだろ
う。
●「台湾国民党」の提案
最新の満意度/不満意度の調査では、馬英九(15.8/73.8)、国民党(19.8/61.3)、民進党
(40.3/35.6)となっている。馬英九に対する不満は73.8%、国民党に不満が61.3%では政権交代
は当然である。
国民党が最も驚いたのは、本土派と言われる党員が分裂を起こす気配が出てきたことである。9
月29日の新聞では、台中県地方派の重鎮と言われる廖了以・元台中県長が雲林県の張栄味・元雲林
県長と合同で「台湾国民党」を組織すると言い出した。国民党の派閥を作るのか、それとも国民党
を脱退して新政党を作るのかは不明だが、報道によると国民党本土派は洪秀柱に不満だから分裂し
たとしている。
●民進党も振わない
しかし調査データを見れば、民進党に対する不満度も35.6%、決して安心できる数字ではない。
民衆は国民党に不満だから民進黨に票を入れても、民進党が政権を取って中国の脅威から逃れ、台
湾独立を達成できるかが知りたいのだ。
蔡英文に対する不満は2012年の選挙で「台湾は中華民国で、中華民国は台湾だ」と述べたことで
ある。台湾は中華民国ではない。独立が台湾人の願いである。民進党が現状維持を続けて中華民国
の名義を台湾共和国に変更しなければ独立はできない、これが不満なのである。
台湾の国際関係は複雑である。中国は台湾併呑を目ざしているから、台湾が独立すれば武力行使
もありうると恫喝している。米国は現状維持を要求しているから独立に反対である。
今年春に蔡英文がアメリカを訪問した際に、台湾は独立ではなく現状維持を続けると述べて米国
の了解を得たと言われている。現状維持が民進党に対する不満の原因の一部だが、最大の不満は新
潮流派の主張する親中路線である。民進党の新潮流派の幹部には中国に投資しているものが多いと
言われている。彼らにとっては独立よりも現状維持が有利なのだ。
蔡英文は親中派と独立派を抱える民進党で綱渡りをしているようなものだが、9月30日に台南市
の市議会で頼清徳・台南市長(民進党)が台湾独立を主張すると述べたので大騒ぎとなった。頼市
長の独立主張は蔡英文の現状維持とは大いに違うから、民進党の投票率に影響するかもしれない。
しかし、政治家が公然と独立を主張できるようになった台湾の現状はプラスの効果が大きいかもし
れない。
●国民党惨敗で中華民国は滅亡
以上のような状態で、民進党は国会で過半数を取れない。しかし、民進党のほかに独立主張を表
明する台聯党、時代力量、自由台湾、台湾独立党などの候補が当選して民進党を助けることになる
と言われている。
国民党は3分の1議席を取れるかどうかが存亡の鍵となる。国会の3分の2議席が「台湾派」なら国
民党の主張はすべて通らなくなる。国民党が惨敗すれば中華民国の滅亡は時間の問題である。