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――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(9)中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政�社 大正四年)

【知道中国 1753回】                       一八・六・卅

――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(9)

中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政�社 大正四年)

 「都督の監督あり、滿鐵の行政あり、餘り有り難きに過ぎて、日本人は却て恐縮せんとする」ような満州南部とは違って、満鉄に「沿ひて有する我勢力の終點たる長春」は「都督府を去ること遠く、滿鐵本社を去ること遠く、住民は此等の御世話より免るゝこと比較的容易」であり、加えて領事は無能。「それだけに人民は官憲を便りにせ」ざるから活気が漲っている。

 長春から転じて「吉林に至れば、此處に滿鐵の行政なく、都督府の監督な」いからこそ、「人民は却て滿鐵沿線に於けるものより活氣あり」。またハルピンに至れば、「露國の治下に居る日本人」は「更に奮鬪力を示し、更に敢爲の氣を示すと云ふ」。

 こうしてみると政府当局による「出來損なひたる保護とか恩惠とかも浴せんよりは、我國の勢力範圍外に於ける方、却て我國民は順當なる發達をなし得るものなり」。当局によるおためごかしの“保護・規制”が却って民間の活力を殺ぐのは、海外であろうが国内であろうが、どうやら昔も今も余り変わらないらしい。

 ところで長春は「東清鐵道、西伯利亞鐵道も以てぺテルスブルグ及び浦潮に連り南滿鐵道、安奉鐵道によりて大連朝鮮に通じ、吉長鐵道によりて吉林に通ずる」ほどに「鐵道発達の要衝」であり、「習慣的商略の樞區た」るゆえに今後の発展が大いに期待できる。であればこそ、「支那人の戸口」は市街・郊外を合わせて11万余。「全滿洲の日本人八萬」を遥かに凌ぎ、「其盛大想ふべきなり」。

 とはいうものの問題がないわけではない。長春を含む「吉林省は紊亂せる幣制の改良基金を國内に求むる能はざるや、勢ひ海外借款を得んと欲し」ているが、ロシアも日本も断った。そこで登場してきたのが「近來後れて馳せに滿洲の利源を狙ひつゝある米國」であり、「山東の一角を根據として四方に向ひて虎視眈々たる獨逸」である。

 米独両国をはじめとする列国は、これまで「他國の勢力範圍に向ひて手を下すことの甚だ友邦の尊嚴を傷くるを知れば」こそ、「日露戰爭なる高き代償を拂ひたる」日本の満州に対する「優越權」を尊重し、「滿洲の野に於ては隨分遠慮勝ち」であった。だが「彼等の謙抑なる態度は、決して永久に繼續すべきものに非ず」。だから日本が「我にして毫も經濟的發展を企つるの勇氣」を示さなかったなら、「彼等も遂に堪へずして進み來るべきは必然の勢ひ」となる。

 だから「列國の經濟的侵略を排して我利權を滿洲に確立」しようとするなら、先ずは「外交の手腕」であり「經濟的冒險の勇氣」である。最近になって「官僚と軍閥は滿蒙を確保すべく軍備の擴大を叫びつつ」あるが、「滿蒙に於ける列國の經濟的侵掠は、軍事的侵略よりも遥に危險」というべきだ。

 ロシアは専ら外蒙に軍事的食指を伸ばしているようだが、「亦南滿の幣制紊亂せるを看取して、之に乘じて其經濟的發展を試みんとする活眼者」はいるはずだ。満洲への新参者ではあるものの、やはりドイツは侮れない。それというのも「學問によりて人材を養ひ、人材を以て經濟的機關を運轉」させているからだ。「故に世界の植民國中最も商業道徳を重ん」じ、「最も商業政策の統一」があり、「最も製造品の良好なる國は獨逸なり」。かくしてドイツは「世界の競爭場を蹂躙しつゝあり」。

 翻って日本を見れば、たとえばロシア貨幣は「吉林省内の支那人間に通用すれども、日本紙幣の價値を知る者は殆ど」ない。日本に必要なのは「經濟的冒險の勇氣」だ。「紙幣を發行して獨り吉林と言はず、奉天、�龍の貨幣權を獲得」すべきだ。このまま列国の進出を拱手傍観しては、なんのための満州ぞ、である。悲憤慷慨・切歯扼腕・・・。《QED》

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