一日本人から見た台湾の昭和歌謡(5)  彼個小姑娘

一日本人から見た台湾の昭和歌謡(5)  彼個小姑娘
(作詞:莊啟勝) / 潮来笠
     

                青山 登

 潮来笠(いたこがさ)というのは 佐伯孝夫作詞:吉田正作曲 昭和35年(1960年)発表で 橋幸夫が歌い、当時大ヒットしたものである。
 台湾の昭和歌謡を紹介しようとすると、どうしても元歌は古くなり、知っている方の年齢が最も若くても65歳以上というように、時代の流れが容赦なく進んできている。「潮来笠」をご存じでないという方の割合はかなりになってきていると思う。
 台湾版である「彼個小姑娘」はどうだろうか。この歌を台湾語で歌たう練習をしていると私の台湾の友人にいったところ、「それは昔の歌」と笑われたことがある。それでも台湾の人は日本人ほどにはただ古いというだけでバカにはしないようで、「潮来笠」と違い「彼個小姑娘」は台湾で今でもそれなりに歌われているようだ。
 蔡幸娟という歌手が「彼個小姑娘」はある意味で民謡だといったのを聞いて「ああそういうことなのか」と思った。民謡として台湾に定着しているという話なら納得できる。

「潮来笠」は潮来の伊太郎という架空の人物の旅姿を描写したもので、彼はやくざで黒社会に所属する人物である。ある時期まで日本人はやくざが旅をすることにロマンを感じていた。私もかってはそうだったが、いつのまにかその時代の空気は消滅し、やくざの旅姿にロマンを感じることは今はない。

 一方、「彼個小姑娘」は一人の青年が少女を好いるものの片思いである切なさを歌っていて、「潮来笠」とは一転して別な歌になっている。私は台湾で歌われる昭和歌謡の中ではこの歌が最も好きである。特に2番の歌詞が気に入っているのでこの大意を紹介したい。 
  頭に結んだ一条のピンクのナイロンリボン
  両耳のイヤリングが揺れる 時に彼女は楽しそうに
  心からの微笑みを見せる 彼女の本心として、私が好きだから微笑んでいるということではないだろう それでも、
  なぜか毎日ように思ってしまう
  彼女のことを

 この歌詞は「潮来笠」よりも素晴らしいと思う。米国の民謡であるフォスターの「金髪のジェニー」を思い起こさせる。
 このフレーズは、私も10代の頃、向こうは私を好きではないのに、私に会うとにっこり挨拶をしてくれる、そんな彼女に内心苦しんだことを思い出させてくれる。

 最後に、歌詞にでてくる日本語に触れたい。
 ナイロンリボンのところは漢字で「尼龍檸檬黄」と書く。ナイロンはまあわかるとしてもリボンを「檸檬黄」と書くのは当て字としてかなり苦しい。そのせいでこの部分を「ナイロンレモン」と歌っている若手の歌手がいる。なぜ「檸檬黄」がリボンなのかyoutubeのコメントで台湾人向けに解説している人がいて、台湾でも解説が必要になってきているのが面白い。「Ribon」を漢字で当てればおそらく2字でいいがが、「りーぼーん」と歌うためには「檸檬黄」と3字で書く必要がある。つまり外来語としての日本語が使われている。

 歌の歌詞はなかなか手ごわく解釈に困ることがあるが、「潮来笠」の歌詞もかなり手ごわいということを付記しておきたい。


台湾の声

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