【WHO】台湾の国際防疫システムへの参加は不可欠

【WHO】台湾の国際防疫システムへの参加は不可欠

産経ニュース2017.5.19 より

             台湾・衛生福利部長、陳時中氏

 防疫に国境はなく、世界各国が連携し協力しあってこそ、グローバルな環境下で新興感染症の難題を解決できるのである。

 毎年、インフルエンザのウイルスが変異し、ヒトやさまざまな動物に感染している。この数年間に発生した鳥インフルエンザや新型インフルエンザなどの広がりは、世界の保健に緊張をもたらしている。世界保健機関(WHO)は常に、世界各国・地域がさらに多くの資源を投じるよう呼びかけている。

 2003年に世界的に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)は、台湾全土にも大きな被害をもたらし、感染者の治療に当たった多くの医療従事者が不幸にして自らもSARSに感染して死亡した。

 この中には、間もなく臨月を迎える看護師とその胎児も含まれていた。さらには、病院の閉鎖、15万1000人以上が自宅での隔離、旅行の制限、学校閉鎖などきわめて大きな代価を払った。台湾は感染症に国境はなく、世界各国は共に手を携えて感染症の脅威に対処していくことの重要性を深く体得した。

 2003年当時も台湾はWHOのメンバーではなかった。このため、SARS関連の防疫情報を適時得ることができず、米疾病対策センター(CDC)が台湾に派遣した専門家の協力に頼るしかなかった。

 和平病院(台北)でSARSの院内感染が極めて深刻化してようやく、WHOは31年ぶりに専門家を台湾に派遣し、予防と治療に協力してくれた。

 こうした経緯から、台湾の行政機関の防疫関係者および専門家は、SARS流行の後期にWHOが開いたSARSシンポジウムに招待された。

 さらに、台湾はWHOのインフルエンザ流行対策準備の手引きに基づき、2003年に抗インフルエンザ薬の備蓄を開始した。

 2005年からは、WHOのインフルエンザ関連の技術会議にも何度か招待され、各国の防疫専門家らと交流した。2009年からはWHOの「国際保健規則」(IHR2005)の運用メカニズムにも入った。

 WHO本部と直接連絡する対応機関を確立し、それによりWHOに台湾の重要な公衆衛生関連の情報を通報している。直接の連絡ルートができたことにより、2009年にH1N1型インフルエンザが世界的に大流行した際、台湾は効果的に各種の予防と治療措置を行うことができた。

 2017年初め、台湾は海外からの入境者によるH7N9型インフルエンザがヒトに感染した症例も確認した。分析の結果、ウイルスは家禽類由来の高病原性であることが明らかとなった。

 台湾は感染を確認後、ただちにWHOに通報し、率先してこの鳥インフルエンザの塩基配列の解析結果を国際データベースに提供した。

 台湾は引き続き発生しているH5N2型のほか、今年は中国大陸で17人が感染し、致死率70%と高い高病原性のH5N6型についても台湾の家禽で追跡調査している。

 ところが、極めて遺憾なことに、台湾が毎年WHOの技術会議への参加を申請しても、政治的な干渉により拒否されることが多く、台湾が世界の防疫における空白を埋めることが極めて困難となっている。

 さらに失望したのは、今年のWHO総会に台湾の参加が困難となっている問題である。

 WHOは国際医療衛生機関であり、WHO憲章には、すべての人々が健康を享受することは、人種、宗教、政治的信念または経済的もしくは社会的条件の違いで差別されてはならないとある。

 この普遍的価値である健康権は、WHOが総会に台湾を招き、台湾がWHOの各種活動または技術会議に平等に参加する基礎を構成するものである。

 私たちはWHOおよび関係各方面に対し、台湾が長期にわたり世界の公衆衛生や防疫、ならび人々の健康権への貢献を果たし、WHO加盟国と医療衛生パートナー関係を構築してきたことに注目するよう呼びかける。

 台湾は、WHOとともに防疫の課題に協力して対処し、国際社会の一員として責任を果たす能力と意欲がある。WHOは、台湾がWHOおよび総会に参加する正当性と重要性を直視すべきだ。

 台湾はWHOを必要としており、WHOも同様に台湾を欠くことはできない。(寄稿)

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