台湾・衛生相寄稿「WHOメンバーとしてコロナ収束に貢献する」【産経新聞:2021年5月18日】https://www.sankei.com/world/news/210518/wor2105180001-n1.html
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、24日からオンライン形式で開かれる世界保健機関(WHO)総会を前に、台湾の衛生福利部長(衛生相に相当)、陳時中氏が産経新聞に寄稿し、台湾がWHOのメンバーとなることを訴えた。先進7カ国(G7)外相会合は5日、共同声明で台湾の総会へのオブザーバー参加を支持したが、中国は「断固とした反対」を表明している。
世界と強靭性と包容力あるグローバルな公衆衛生体系確立へ 陳時中氏
新興感染症による人類の健康、経済・貿易、旅行への脅威は、これまで途切れたことはなく、感染症のパンデミックは国際航空輸送によって、世界各地への拡散が加速している。現在では、2019年末に中国の武漢から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、21年3月末までに、世界で1億2600万人以上が感染し、270万人が死亡した。これは世界の公衆衛生、経済、社会などの各面において、きわめて大きな衝撃を及ぼし、各国が国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の実現にむけて行ってきた努力にも深刻な脅威となっている。
台湾は地理的に中国に隣接しており、この感染症の影響を最も深刻に受ける地域の一つと予測された。しかし、台湾は03年に「重症急性呼吸器症候群」(SARS)に対処した経験があったことから、得られた警戒情報を軽視しなかった。絶えず更新されるさまざまな公式および非公式の情報に基づいて、この新興疾病の拡散や深刻さが、世界各界の認識を超えていると判断した。19年12月31日より各種の情報を十分に活用し、監視・モニタリングを強化した。20年1月21日に最初の感染症例が発生後、この疾病に対しさらに次々と公衆衛生の感染阻止措置を実施した。パンデミックが発生してから台湾は、COVID-19の感染を阻止し続けており、20年4〜12月の連続253日間、感染ゼロの記録を創(つく)った。
台湾はSARS後、感染症予防・治療の医療ネットワークを確立した。6地域の臨床感染症の専門家が指導および指揮し、100余りの隔離収容の病院を選定して盛り込んだ。さらに、22の地方自治体はいずれも、対応する重点病院を選定した。この医療ネットワークの運用は法律による授権を得ており、台湾は公衆衛生や臨床・介護のニーズに基づき、ネットワーク内の病院を指定し、高度な治療を要する感染症の患者を収容して治療することができる。しかも、実際にもこのメカニズムは、医療システムや医療従事者が負担加重にならないよう保護する上でもプラスとなっており、大多数の非COVID19患者への医療サービスが、COVID19パンデミックの期間中も正常に運用され、支障をきたさなかったことを証明した。
迅速かつ効果的な公衆衛生の抑制措置によって、COVID19が台湾にもたらした経済への影響は比較的軽微だった。台湾の20年の域内総生産(GDP)は約3・11%の成長となり、その中で第4四半期は4・94%も成長し、世界がリセッション(景気後退)となっているのとは顕著な対比を示した。また、市民の行政当局に対する信頼および協力は、今回台湾がCOVID-19パンデミックの抑制を成功したことの重要な要素の一つとなっている。
COVID19パンデミックは、あらゆる国々に深刻な衝撃をもたらした。台湾は国際社会の責任あるメンバーとして、世界保健機関(WHO)および世界の公衆衛生のリーダーらとの協力に最大限の努力をし、一人一人がいずれも健康な生活スタイルと労働条件を享受できるよう確保していきたい。
われわれは、WHOおよび関連各方面が台湾をWHOに入れることを固く支持し、台湾がWHOの各種会議、メカニズム、活動に全面的に参加し、世界各国と手を携えて、WHO憲章の「健康は基本的人権」および国連の持続可能な開発目標の「誰一人取り残さない」のビジョンを共に実行していくことを呼びかけるものである。
健全な医療システム、厳格な検査戦略、透明で公開された情報、官民の協力により、台湾は世界で感染症対応が最も成功した地域の一つとなっている。COVID19の感染状況は、台湾を世界の公衆衛生ネットワークの外に置いてはならないということを改めて実証した。われわれは、世界の新興感染症の脅威に対する監視・モニタリングおよび警報システムの中で、欠けてはならない一環なのであり、しかも、台湾モデルはパンデミックの蔓(まん)延(えん)を引き続き阻止できるのである。さらに台湾はパンデミックの中で、バイオ医薬による治療および関連ツールについて、迅速な研究開発および製品の生産力を展開している。そのため、台湾が世界のCOVID19検出試薬、ワクチン、治療薬の供給プラットフォームに全面的に参加できたならば、世界と協力し貢献できるのである。
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