『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より転載
● 中国のネットユーザー、台湾マックCMを問題視
中国マックが釈明
台湾マクドナルドが、1月初めにユーチューブで受験生を応援するかたちのCMを配信しましたが、受験票の国籍欄が「台湾」になっていたということで、中国のネットで問題視され、中国マクドナルドが釈明に追われるということがありました。
中国マクドナルドは「一つの中国」を支持する立場を強調して遺憾の意を表明したそうですが、台湾マクドナルドと中国マクドナルドは資本関係が異なっているので、別会社だということです。
台湾マクドナルドも、1月18日にCM動画を削除したそうですが、もともと2週間のみの公開予定だったと説明しています。
中国の政府系シンクタンクがまとめたインターネット上での法の支配の実態に関する報告書によれば、台湾を「中国台湾」と表記していない外国企業として、日本のスバル、アメリカのナイキやアップル、ドイツのシーメンスなど66社があり、法に則り罰するべきだという提言がなされているとのこと。
習近平政権が台湾と友好国の国交を遮断しようと動いていることは周知のことですが、さらに1月2日には、1979年に出された中国から台湾への公開書簡『台湾同胞に告げる書』40周年記念談話として、習近平は台湾についての「5つの原則」、いわゆる「習5条」を発表し、台湾を牽制しました。その内容は以下のとおりです。
第一、ともに民族復興に取り組み、平和的統一を実現する
第二、台湾の「一国二制度」を探求し、平和的統一を実践する
第三、「一つの中国」の原則を堅持し、平和的統一の見通しを維持する
第四、両岸の融合と発展を深化させ、平和的の基盤を強化する
第五、同胞としての精神的結びつきを実現し、平和的統一の認識を増進させる
どの項目にも「平和的統一」(和平統一)という言葉が繰り返し出てくるところが、何が何でも台湾を併呑したいという習近平の執念が現れています。
また、この「第三」では、台湾同胞には決して武力を行使しないが、台湾独立分子とそれに干渉する外部勢力に対しては武力放棄しないと書いています。逆に言えば、台湾独立分子とそれを煽る外部勢力に対しては、武力を行使するということなのです。
この「習5条」は、中国と台湾のあいだで共同の市場をつくり、プラットフォームや資源を共有するといった「あめ」をぶら下げる一方で、習近平は「中国人は中国人を攻撃しない」とも述べ、「一つの中国」を認めようとしない蔡英文政権や台湾独立派と一般台湾人の分断を図りました。
昨年11月末に行われた台湾の統一地方選挙で民進党が大敗しましたが、習近平はその結果と、来年行われる総統選挙を見据えて、台湾を揺さぶろうと狙ってきたわけです。
これに対して蔡英文総統は、「一国二制度」を台湾人は絶対に受け入れない、それが「台湾共識」だと述べ、中国が主張する「九二共識」(1992年に台湾の国民党と中国共産党が「一つの中国」で同意したという認識。当時総統だった李登輝、行政院大陸委員会委員だった蔡英文も、その存在を否定)を改めて拒否しました。
こうした台湾と中国のつばぜり合いがあっただけに、マクドナルドのCMも予想外の反響となってしまったのでしょう。台湾マクドナルドが台湾人向けにつくったCMですが、中国政府はネット民をつかっていちゃもんをつけてきたのだと思われます。
しかし、中国がいくら融和的な統一を謳ったところで、台湾を「中国の一部」と考えず、自分を「中国人」と認めない台湾人はすべて攻撃対象なのですから、「融和的統一」などあるはずがありません。
2016年の調査結果ですが、台湾人のうち73%、とくに若者においては85%が「自分は台湾人だ」と認識しており、「自分は中国人だ」と認識する台湾人は11%、「中国人であり台湾人でもある」は10%で、これらを合わせても2割程度しか中国人としての意識がないのです。
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聯合報の民意調査 73%「私は台湾人」 「現状維持」を望むのは60%超え
そうなると、台湾人の8割は「自分は中国人ではない」と考えていることになり、習近平が「攻撃しない」としている中国人の範疇外ということになります。結局、中国が「平和的統一」を果たした後には、これら8割の台湾人は「非中国人」として粛清される可能性が高いわけです。
中国の軍事的突出、領土拡張主義は、古代から「天朝朝貢冊封秩序」として知られてきましたが、ことに文革後には社会主義建設の挫折から、以下のような主張を強く展開するようになりました。
中華民族として、チベット、ウィグル、モンゴルなど55もある非漢族に対して、同化政策や愛国教育を強制
「台灣は中国の絶対不可分の一部」として、各国政府のみならず、民間企業や民間団体にもその認知を強制する
南シナ海、東シナ海などの内海化が着々と進められている
世界では、すべて中国語(北京官話)を使うことを強制
孔子学院を世界中につくり、中国語、中国文化を世界に強制
台湾に対する「92共識」や「中国の一部」「国家として認めない」という中国の姿勢は、台湾では「打圧」(圧迫)と言われていますが、やはり軍事行動(台湾侵攻)がないかぎり、台湾人の意識は変わらないと思われます。
台湾に対する武力行使では、最低、中国のGDPの20%以上が必要だとされています。また、中国の軍事力の約80%は、「中華民族」という幻の民族の暴動などへの対処に備えているのが現実だという分析もあります。
加えて、中国が台湾に対して武力行使した場合、日本の安全保障にも関連してきますので、中国側が絶対に勝つ保障はありません。アジアとしてのインド、太平洋の安定などにも絡んできます。
1月20日、世界野球ソフトボール連盟は、2020年東京五輪のための野球の最終予選の開催権を台湾に与えました。台湾は、今年11月に開かれる予選(プレミア12)の開催地にも決まっており、台湾も含めて、多くの国々が五輪出場を目指した熱い戦いが予想されます。
ただし、中国がまた台湾への嫌がらせとして、「台湾」名称の禁止や、独立派の運動妨害、さらには予選そのものを中止させようと動く可能性もあります。
韓国は反米・反日・親北の文在寅政権になってから、北朝鮮との統一を夢見る一方で、日米との関係が急速に悪化してきています。同様に台湾が反米・反日・親中政権に変わったとき、中国による統一工作が一気に進む可能性が高くなります。しかし、それは一国二制度すら守られていない香港同様、台湾人にとって受難の日々の始まりとなります。
とはいえ、現在では世界最大の通商国家となった中国にとって、国際社会の安定のみならず、国内の安定も欠かせません。そのいずれかが不安定になることは、中国にとって自殺に等しい行為なのです。
目下、米中貿易戦争が展開されていますが、アメリカのやり方はまさに「兵糧攻め」そのものです。そのため、2018年の中国のGDP成長率は6.6%と、28年ぶりの低水準となりました。
● 中国成長率6.6% 28年ぶり低水準
日本は中国、韓国、北朝鮮など近隣諸国の「強気」に圧倒されやすいですが、たいてい中華の国々は自信がなく、自分たちが動揺している際に強気に出るのです。
そのため、今後、中国経済が停滞していくにつれて、中国の恫喝外交はますます増えていくと思われます。惑わされたり気圧されたせずに、毅然と対処していくことが重要なのです。
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