「台湾の声」【阿彰の台湾写真紀行】No.30 港式燒臘店(香港広東式定食屋)
港式燒臘店(香港広東式定食屋)の燒臘(shao la:華語/サオラァ)は広東語では燒味(siu meiシュウメイ)とも呼ばれています。
燒臘というのは、燒味、臘味、油雞と呼ばれる三種の調理法の総称です。
港式燒臘店は、香港、マカオ及び広東式の食堂のことで、家鴨肉、豚肉などをローストしたものや、鶏肉をタレに浸けてボイルしたものを切り分け、ライスの上に載せた一種の定食のようなものを主に提供します。
入り口脇に加工済みの鶏や家鴨が丸ごとの状態でぶら下げられているお店の形態はよく目立ちます。
各種のチャーハンや焼きそば、河粉や米粉などのライスヌードゥル、広東式のお粥、そして日本語で言うところ中華丼のような、各種の餡掛けご飯、簡単な広東料理なども提供するお店もあります。
そして、店主や店員さんたちが香港やマカオ出身者であることが多く、店内では広東語が飛び交う事も日常的な光景だったりします。
実はこの香港、マカオ及び広東式の食堂は台北市内のどの街角にも一軒は必ずあると言っていいほど普及していま
す。
主な商品は油雞(you ji:華語/ヨウチィ)と呼ばれる醤油ベースのタレで煮たソイソースチキン、燒肉(shao rou:華語/サオロウ)と呼ばれるクリスピーローストポーク、燒鴨(shao ya:華語/サオヤァ)と呼ばれるローストダック、叉燒(cha shao:華語/ツァーサオ)と呼ばれる焼き豚や肝腸 (gan chang):華語/カンツァン)、臘腸(la chang:華語/ラァツァン)と呼ばれる広東式ソーセージ(腸詰め)や臘肉(la rou:華語/ラァロウ)と呼ばれる豚の燻製肉などです。
●油雞(you ji:華語/ヨウチィ)の本来の名称は「豉油雞」です。
そして、豉油(chi you:華語/ツーヨウ)は油ではなく醤油のことです。
油雞の作り方は、先ず鶏肉をネギと生姜入りの水に浸し、火にかけて短時間茹でます。
そして後で煮る時に使うタレを作ります。
タレの主な材料は醤油と氷砂糖、蒸留酒、そして漢方の各種香料です。
醤油は生抽(sheng chou:華語/センツォウ)と呼ばれるものを使います。
これは香りや味も穏やかで、薄い色であり、素材の彩りを生かす料理などに使われますが、一般の醤油でも代用できます。
蒸留酒は、玫瑰露酒や高粱酒などの中華系のお酒が使われますが、ウイスキーやブランデーなどの洋酒系のお酒でも代用できるし、紹興酒でも代用できます。
漢方の香料は八角(スターアニス)、草菓(そうか)、丁香(クローブ)、陳皮(干したマンダリンオレンジの皮)、バンウコンの根茎、甘草などです。
これらの材料を水に混ぜ、火にかけ、煮立てて「油雞水」と呼ばれるタレを作ります。
また、このタレは香港のメーカーから豉油雞汁という名称で、瓶詰めが販売されています。
前もって、先に湯がいておいた鶏肉をこのタレ、油雞水に浸して、弱火で45分ほど煮た後に取り出し、冷やします。
これを食べやすい大きさに切り分けてライスの上に載せたものが油雞飯(you
ji fan:華語/ヨウチィファン)や油雞腿飯(you ji tui fan:華語/ヨウチィトエファン)=ソイソースチキンライスです。
●玫瑰油雞(mei gui you ji:華語/メイクエヨウチィ)
という名称のものもありますが、醤油や漢方の香料が入ったタレにバラの花粉を使った天然着色剤を混ぜて、鶏肉を煮たものです。
しかし、この天然着色剤が生産停止された後は玫瑰露酒(mei gui lu jiu:華語/メイクエルゥチョウ)という中国天津特産の薬用酒が使われるようになりました。
この薬用酒は高粱酒にバラの花びらを浸けて作られたものです。
ただし、このお酒も今では手に入りにくくなっているので、実際には紹興酒などの他のお酒で代用されていることも多いようです。
それでも名称だけは今でも伝統的な名称が使われているのだそうです。
そして、食べやすい大きさに切り分けてライスの上に載せたものが玫瑰油雞飯(mei gui you ji fan:華語/メイクエヨウチィファン)です。
●白雞(bai ji:華語/パイチィ)は、醤油など色の付いた調味料を入れないお湯で茹でたり、蒸したりした後に急激に冷やした鶏肉で、鶏肉そのものの味を楽しみます。
白斬雞 (bai zhan ji:華語/パイツァンチィ) や白切雞(bai qie ji:華語/パイチエチィ)とも呼ばれます。
食べやすい大きさに切り分けてライスの上に載せたものが白雞飯(bai
ji fan:華語/パイチィファン)です。
●燒肉(shao
rou:華語/サオロウ)と呼ばれるクリスピーローストポークは、先ず豚の三枚肉(バラ肉)を八角(スターアニス)や生姜を入れたお湯で5分ほど茹でます。
お湯から取り出した後、表面の水分を拭き取り、針のように尖った物で肉の表面の皮部分を満遍なく、徹底的に突き刺し続けます。
また肉の裏側に包丁で数カ所に深い切り込みも入れておきます。
そして塩を擦り込み、しばらく放置します。
放置した後に五香粉(wu xiang fen:華語/ウーシャンフェン)と呼ばれる中華料理の香料や胡椒、塩などを、紹興酒か玫瑰露酒(mei gui lu jiu:華語/メイクエルウチョウ=中国天津特産の薬用酒)で溶いたタレを肉によく擦り込みます。
そして再度、尖った物で肉の表面の皮部分を満遍なく突き刺してから、表面にお酢を擦り込み、一晩寝かせます。
なお五香粉は八角(スターアニス)、丁香(ちょうこう:クローブ)、肉桂:カシア(シナモンの一種)、花椒、ウイキョウ(フェンネル: 茴香) などの香料を調合したものです。
次の日に肉の表面の皮部分にベーキングパウダーまたはベーキングソーダとお酢と粗塩とを混ぜた液体を塗り、またベーキングパウダーやベーキングソーダ、粗塩そのものも直接表面に塗りつけて、30分ぐらい放置します。
放置した後、表面の粗塩を拭き取り、肉を釜やオーブンで焼きます。
焼きあがると皮の表面がザラザラ、サクサクの状態になります。
食べやすい大きさに切り分けてライスの上に載せたものが燒肉飯(shao
rou fan:華語/サオロウファン)です。
●叉燒(cha shao:華語/ツァーサオ)は広東語ではcha siu =ツァーシュウと呼ばれ、これが日本語の中に外来語として取り入れられ、チャーシューになりました。
ただし、日本のチャーシューは焼き豚ではなく、煮豚であることが多いです(「叉」の字は鉄串の意味で、叉燒は鉄串に刺したまま釜やオーブンで焼かれます)。
叉燒は豚の肩ロースを使います。
まず肉の表面にフォークなどの尖った物で満遍なく突き刺しておきます。
次に豆腐を米麹及び紅麹菌によって発酵させた、南乳または紅豆腐乳と呼ばれるものやオイスターソースや、少し甘さがあり、濃厚な香りと濃い色を持つ香港の醤油である老抽(lao chou:華語/ラオツォウ)、そして一般の醤油、紹興酒、蜂蜜、砂糖、五香粉、白胡椒、胡麻油、ニンニクなどを混ぜたタレを作ります。
肉をこのタレに浸けて一晩寝かせます。
次の日に肉を鉄串に刺して焼きますが、肉の表面にタレや蜂蜜を塗っては焼いて、焼いては塗ってを繰り返して、焼き上げます。
●臘味飯 (la wei fan:華語/ラァウェイファン) は、肝腸 (gan chang:華語/カンツァン )、 臘腸 (la chang:華語/ラァツァン ) といった広東式ソーセージ
(腸詰め) や臘肉 (la rou :華語/ラァロウ) と呼ばれる豚の燻製肉をスライスしたものをライスに載せたものです。
肝腸はアヒルまたはガチョウのレバーと豚ひき肉で作られた腸詰で、色が黒いのが特徴です。
●燒鴨 (shao ya:華語/サオヤァ)は、先ず内臓を取り出したアヒルの肉の内側に海鮮醤と呼ばれる大豆、胡麻、ニンニク、八角(スターアニス)などで作った 甘味噌や甜麵醬(中華甘味噌)、塩、砂糖、五香粉を混ぜたタレを塗りつけておきます。
次にネギと生姜を入れた湯を沸かし、アヒルを入れて短時間茹でます。
茹でた後にアヒルの肉全体に麦芽糖を水で溶いた水飴を十分塗りつけてから釜やオーブンで焼きます。
この燒鴨を食べやすい大きさに切り分けてライスに載せたのが燒鴨飯
(サオヤァファン)です。
これらの燒臘(shao la:華語/サオラァ)を食べる時にかけるタレは、肉を浸したり、煮たりした時に使ったり、肉の表面に塗りつけたタレを薄めたものや、肉の表面に塗りつけたタレに醤油やオイスターソース、砂糖、水を加えたものだったり、蔥油と呼ばれる葱の香りが付いた油だったり、生姜を摩り下ろしたものに細かく切った葱と塩を混ぜ、熱した食用油をかけた薑茸(jiang rong:華語/チァンロン)と呼ばれるものが使われます。
以下は燒臘店(shao la dian:華語/サオラァティエン)の代表的な定食です。
油雞飯(you ji fan)
ヨウチィファン→日本語訳:ソイソースチキンライス
油雞腿飯(you ji tui fan)
ヨウチィトェファン→日本語訳:ソイソースチキンサイライス
燒鴨飯(shao ya fan)
サオヤァファン→日本語訳:ローストダックライス
脆皮鴨腿飯(cui pi ya tui fan)
ツォエピィヤァトェファン→日本語訳:ローストダックレッグライス
燒肉飯(shao rou fan)
サオロウファン→日本語訳:クリスピーローストポークライス
蜜汁叉燒飯(mi zhi cha shao fan)
ミィツーツァアサオファン→日本語訳:バーベキュードポークライス
白雞飯(bai ji fan)
パイチィファン→日本語訳:ボイルドチキンライス
臘味飯(la wei fan)
ラァウェイファン→日本語訳:スモークポークソーセージライス
片倉佳史と内海彰の台湾グルメ漫談「台湾の麵の世界を語る」(Youtube
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編集部より:「阿彰の台湾写真紀行」では、台湾在住のデザイナー、『台北美味しい物語』著者である内海彰氏が撮影した写真とエッセイをお届けします。
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5: 叉燒飯
6: 臘味飯
7: 燒鴨飯
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