【阿彰の台湾写真紀行】No.29 台北の魯肉飯/肉燥飯/炕肉飯

【阿彰の台湾写真紀行】No.29
台北の魯肉飯/肉燥飯/炕肉飯

 本シリーズ(阿彰の台湾写真紀行)第一回で魯肉飯
(lóo-bah-pn̄g)
を取り上げたが、今回は特に、現在の台北市内や新北市内の飲食店における魯肉飯
(lóo-bah-pn̄g ロォバァプン )
について報告したい。初めて取り上げた際には、「滷肉飯」という漢字表記を用いたが、メニュー表記などでは、当て字である「魯」が普及しているため、今回は「魯肉飯」と表記する。

 現在は、阿彰の台湾写真紀行第一回で魯肉飯を紹介した時よりも、魯肉飯が日本人の間でさらに広く知られるようになっていて、日本各地の飲食店やコンビニなどで売られるようにもなっているが、この日本で販売されている魯肉飯に対して、台湾の魯肉飯を知る日本人が非常に違和感を覚えるケースもあるようだ。

 筆者は日本で販売されている魯肉飯を食べたことがないので、その味や香りについては全くわからない。しかし、写真でいくつかを見たことはある。かなり大きな肉が使われているものもあれば、挽肉が使われているものもあることを知っている。

 どうも大きな肉を使った魯肉飯に対して、違和感を覚える日本人が多いようだ。SNS
上で台湾の魯肉飯とは全く違うものだという書き込みも何回か見たことがある。もしかしたら、肉の大きさだけでなく、調理法も違うのかもしれない。味も香りも全く違うものなのかもしれない。しかし、日本の魯肉飯を実際に食べたことがない筆者にはそれはわからない。

 ただ、もし味に遜色がなく、肉の大きさや形だけで、魯肉飯らしくないと言っているのであれば、それは間違いだ。というのは台北市や新北市の飲食店で売られている魯肉飯にもいろいろな肉の大きさや形のものが使われているからだ。 

 老舗や有名店でよく見かけるのは皮付きで油身も多い豚バラ肉をサイコロ状の形に切り分けて、醤油ベースのタレで煮込み、それをご飯の上に載せたものである。店によってはサイコロ状のものだけでなく、かなり大きめに切った豚肉も一緒に混ぜる場合もある。

 脂身の少ない豚挽肉を使っている店もあるが、台北市や新北市では挽肉を使っている場合は魯肉飯
(lóo-bah-pn̄g) ではなく、肉燥飯 (bah-sò-pn̄g バァソープン
) という名称になっていることが多いようだ。

 また、サイコロ状の肉や挽肉や少し大きめに切られた肉が全部混ざり、しかもかなり煮込んであり、形が崩れかかっていて、少しドロドロ状態にしてある魯肉飯もある。

 台湾写真紀行、第一回目でも指摘したが、台湾南部の飲食店で魯肉飯と呼ばれるものはサイコロ状に切り分けた肉や挽肉ではなく、皮付きの大きな豚肉の塊を煮込んだものだ。しかし、北部の飲食店では大きな豚肉の塊を醤油ダレで煮込んだものとご飯が一緒になった料理は炕肉飯
(khòng-bah-pn̄g
コンバァプン:爌肉飯や焢肉飯という表記もある )
と呼ばれている。

 筆者の台北市内の自宅からそう遠くないところに台湾南部の雲林縣
(Hûn-lîm-koān)
出身の人が開く、台湾料理の店があるが、その店では魯肉飯
(lóo-bah-pn̄g)、肉燥飯 (bah-sò-pn̄g)、炕肉飯 (khòng-bah-pn̄g)
の全てが売られている。その店では魯肉飯はサイコロ状の肉で、肉燥飯は挽肉、炕肉飯は一枚の大きな豚バラ肉が使われている。

 表.ロォバァプン呼称の南北差
 北部   南部   特徴
 肉燥飯  肉燥飯  豚挽肉
 魯肉飯  肉燥飯  豚バラ肉がサイコロ状(1センチ程度)
 炕肉飯  魯肉飯  大きな豚バラ肉

 魯肉飯や肉燥飯にはよく一緒に香菇 (hiunn-koo
=しいたけ ) が混ぜられていたり、筍干 (sún-koann
=メンマ )が載せられているが、時々、蚵仔 (ô-á
=牡蠣 )
を一緒に混ぜてあるもの(肉燥蚵仔飯bah-sò-ô-á-pn̄g
バァソーオアァプン/魯肉蚵仔飯lóo-bah-ô-á-pn̄g
ロォバァオアァプン) も見かける。筆者は筍干 (sún-koann
=メンマ )
と一緒になっているものが一番好きだし、特別台湾らしさを感じる。

筆者からのお知らせ:最近、台湾在住作家の片倉佳史さんのユーチューブ番組に毎週水曜日、ゲスト出演して台湾の食文化について、片倉さんと対談しています。もしよろしかったら、覗いてみてください。すでに
21 回出演しています。

21
回目の出演→魯肉飯(lóo-bah-pn̄g)の世界~台湾グルメ漫談
https://www.youtube.com/supported_browsers?next_url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3Dqz-diql1708
20 回目の出演→
旧正月の台湾。家庭の食文化~台湾グルメ漫談
https://www.youtube.com/supported_browsers?next_url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DOOy5l8lucNU

台湾特捜チャンネル(片倉佳史の部屋)
https://www.youtube.com/@taiwankatakura/streams

(台湾語の表記は「白話字」方式である。文字化けを予防するために「o・」を「oo」、母音の鼻音化を表す「上付きのn」を「nn」で代替してある。)

編集部より:「阿彰の台湾写真紀行」では、台湾在住のデザイナー、『台北美味しい物語』著者である内海彰氏が撮影した写真とエッセイをお届けします。写真は末尾のリンクから取得することができます。


台湾の声

バックナンバー
http://ritouki-aichi.com/category/vot

登録/解除
http://taiwannokoe.com/register.html

Facebook
https://m.facebook.com/taiwannokoe?_rdr

Twitter
https://twitter.com/taiwannokoe

YouTube『Taiwan Voice』藤井厳喜 x 林建良 
※ぜひチャンネル登録をお願いいたします
https://www.youtube.com/channel/UCTzfqkSSN_86JN2yidU2lhQ

This message contains attachments that can be viewed with a webbrowser:

1魯肉飯(サイコロ状の肉)

2魯肉飯(サイコロ状と大きめの肉)

3魯肉飯(色々な形の肉がドロドロ状)

4肉燥飯(ひき肉)

5魯肉蚵仔飯(牡蠣入り魯肉飯)

6炕肉飯(一枚の大きな豚バラ肉)

※この記事はメルマガ「台湾の声」のバックナンバーです。
講読ご希望の方は下からお願いします。


投稿日

カテゴリー:

投稿者: