【阿彰の台湾写真紀行】雞捲(ke-kńg :ケェクン)

【阿彰の台湾写真紀行】 No.9
雞捲(ke-kńg :ケェクン)

 「雞捲(ke-kńg
:ケェクン)」は雞という字が使われていることから、鶏肉を何かで巻いた料理かと想像してしまうが、実は一般的に鶏肉は使われていない。豚ひき肉や魚のすり身、タケノコ、ニンジン、クワイ(馬薺:
bé-chî)、ネギなどを、網紗(bāng-se :
バンセェ=あみあぶら)や豆皮(tāu-phôe
:タウポェ=ゆば)に包み巻いてから揚げた惣菜である。

 「雞捲(ke-kńg:ケェクン)」は麵麶‭(‬mī-thi:ミィティ)や素雞(sò͘-ke:ソォケェ)、麵腸
(mī-tn̂g :ミィトゥン)、車輾 (chhia-lián :
チァレン)などと同じように台湾人の食卓の脇役的な存在で、あまり目立たない惣菜かもしれない。

 台湾の食堂や弁当屋で販売する一般的な弁当は、ライスの上にドーンとメインの肉や魚の料理がのり、脇に野菜や細かい惣菜がつく。この細かい惣菜として、よく「雞捲(ke-kńg
:ケェクン)」や麵麶、素雞、麵腸、車輾
などが使われているし、家庭の食卓でもメインの料理の脇役的な存在である。

 また神様や先祖を祀る時のお供え物に使われることも多い。だが、一部の食堂や弁当屋などでは排骨飯(pâi-kut-pn̄g
:パイクップン)、雞腿飯(ke-thuí-pn̄g
:ケェトゥイプン)、炕肉飯(khòng-bah-pn̄g
:コンバァプン)などの人気定番料理に並んで、雞捲をメインにした「雞捲飯(ke-kńg-pn̄g
:ケェクンプン)」というものを販売している場合もある。

 まず、ここで麵麶、素雞、麵腸、車輾の説明をしておこう。

麵麶‭(‬mī-thi:ミィティ)

 中国語では麵筋と呼ばれ、小麦、ライ麦などの穀物を原料とした加工食品である。小麦粉に水を加えかき混ぜ弾力のある塊を形成した後、しばらく寝かせると、タンパク質の一種であるグルテニンとグリアジンが網目状につながり、粘り気のある構造物グルテンになる。それを流動水で揉み洗いし、水溶性タンパク質やデンプン粒などの不用物を流出させ、グルテンの塊として分離させたものが麵麶(mī-thi)である。日本料理に使われるお麩の類似品。

素雞(sò͘-ke:ソォケェ) 

 湯葉を重ねて、棒状にしたものを更に布で包み、紐で縛って形成してから揚げたもの。一種の雞肉もどきの食品。

麵腸 (mī-tn̂g :ミィトゥン)

 小麦グルテン粉と強力粉に、水を加え混ぜて塊を作り、7、8時間寝かし、冷やした後に塊を8等分ぐらいに切り分けたものを薄く長く伸ばし、棒に巻きつけ成形し、それを沸騰したお湯の中で茹でてから取り出し、冷やした食品。

車輾(chhia-lián : チァレン)

 麵麶(グルテン‮)!‬‭)を再加工し、円状に巻き成形し、沸騰したお湯の中で茹でてから取り出し、冷やした食品である。他に豆輾
(tāu-lián :タウレン)、豆輪仔(tāu-lián-á
:タウレンナァ)、豆車輪 (tāu-chhia-lián
:タウチァレン)、麵輪(mī-lián
:ミィレン)などの言い方もある。

 さて本題の「雞捲(ke-kńg
:ケェクン)」に話を戻すが、鶏肉料理ではないのになぜ“雞”という字が使われているのだろうか。よく聞くのは、昔家庭で、捨てるのが惜しい残り物の野菜類や豚肉などを細かくし、やはり本来は捨てられてしまう網紗(bāng-se
:
あみあぶら)に包み巻き揚げる、つまり余り物を利用し、余計に加えたこと、余計に作ったことを言い表す台湾語の”加(ke)”と”雞(ke)”が同じ発音であることから、いつの間にか「加捲」ではなく「雞捲」と書かれるようになったのだろうという説である。この台湾語で言うところの「雞捲(ke-kńg
:ケェクン)」を繭仔(kián-á:ケンナァ)、肉繭仔(bah-kián-á:バァケンナァ)
、五香捲
(ngō͘-hiang-kńg:ンゴォヒャンクン)などの言い方で呼ぶ人たちもいる。

 また、元々鶏肉を使っていたが、鶏肉を使ったものは台湾人にあまり好まれず、いつの間にか鶏肉は使われなくなったという説も聞いたことがある。またこういう調理法は元々中国福建省の閩南地区から伝わったもので、現在の中国福建省閩南地区にも類似した惣菜があるようだ。

 「雞捲(ke-kńg
:ケェクン)」の具を包むのに使われる網紗(bāng-se)は網脂(あみあぶら)のことで、豚の内臓周りについている網状の脂である。網脂で包み巻くと揚げた時に脂が溶けて中に浸み込み、おいしく仕上がるそうだ。しかし、現在では豆皮(tāu-phôe
:タウポェ=ゆば)を使って包んでいる場合が多いようである。また自分で作る人より、市場の惣菜屋さんで出来上がったものを買う人が圧倒的に多いであろう。現在、惣菜屋さんや食堂で売られている「雞捲(ke-kńg
:ケェクン)」の中身はそんなに豊富な材料が使われているわけではない。高価なものだと豚肉の塊も入れてあるが、たいていは魚のすり身などにクワイ(馬薺:
bé-chî)やタマネギが入れてあるだけの簡単なものが多い。


編集部より:「阿彰の台湾写真紀行」では、台湾在住のデザイナー、『台北美味しい物語』著者である内海彰氏が撮影した写真とエッセイをお届けします。写真は末尾のリンクから取得することができます。またウェブで閲覧できるバックナンバーでは、記事とともに表示されます。


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1雞捲

2雞捲

3切り分けた雞捲

4雞捲飯

5市場で売られている雞捲

6麵麶(‬mī-thi)

7素雞&麵腸1

8切り分けた素雞&麵腸2

9車輾(chhia-lián)

1雞捲

2雞捲

3切り分けた雞捲

4雞捲飯

5市場で売られている雞捲

6麵麶(‬mī-thi)

7素雞&麵腸1

8切り分けた素雞&麵腸2

9車輾(chhia-lián)

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