日本の「台湾ラーメン」や「台湾まぜそば」は日本で生まれた麺料理であり、台湾料理でないことは多くの日本人が知ることだと思う。「台湾まぜそば」は「台湾ラーメン」をアレンジしたもの(台湾ラーメンの汁無しバージョン)である。「台湾ラーメン」は、在日台湾人の料理人が、本当の台湾料理、本来は薄味の「擔仔麵:tàⁿ-á-mī」という麺料理を辛い味付けに変えてみて、大いに成功したという日本発祥の麺料理である。
「台湾ラーメン」の創作者が参考にした台湾料理「擔仔麵:tàⁿ-á-mī(タァアミィ)」の擔仔(担仔)=タァアは天秤棒のことで、昔は天秤棒で食材と器具一式を担いで売っていたことからこう呼ばれている。発祥地は台湾南部の台南である。
実は台湾の「擔仔麵:tàⁿ-á-mī(タァアミィ)」にも以前から汁無し和え麺タイプがある。また、台湾の他の多くの麺料理にも汁無しバージョンがあり、店や屋台での注文時に汁有り(湯的:thng–ê)にするか汁無し(乾的:ta–ê)にするかを選べる。
台湾の麺には大きく分けて、白い麵と黄色い麺がある。白い麵は白麵と呼ばれ、第二次大戦後に中国からの移民者によって広められた。白麵は、かん水(梘水/鹹水=アルカリ塩水溶液)が使われていないので、黄色くなく、日本のうどんのように見える麵で、麺の形状や幅(かなり幅広の平打ち麺もある)にはいろいろな種類がある。そして、黄色い麺は第二次大戦以前から台湾にある麺で、油麵と呼ばれ、かん水(梘水/鹹水=アルカリ塩水溶液)や食用油が含まれた麵である。日本のラーメンや中華麺もかん水が使われていて、黄色いので台湾の油麵に似ている。
日本の「台湾まぜそば」と直接的な関係はないが、台湾でよく見かける黄色い麺を使った汁無し和え麺を紹介しようと思う。ものによっては日本の「台湾まぜそば」に外観が似ているかもしれない。なお、台湾の汁無し和え麺には日本の「台湾まぜそば」のように生卵は入っていない。生卵を麺に絡めて食べることは極めて日本らしい食べ方だと思う。
黄色い麺、油麵:iû-mī(イウミィ)を使った汁無し和え麺料理の名称には「擔仔麵:tàⁿ-á-mī(タァアミィ)」の他に「切仔麵:chhe̍k-á-mī(チェッガミィ)」「乾麵:ta-mī(タァミィ)」「油麵:iû-mī(イウミィ)」「肉燥麵:bah-sò-mī(バァソーミィ)」などがあるが、同じ名称でも店によって、見かけがかなり違ったり、また、お互いに違う名称が使われていても、両者はほぼ同じような麺料理であることも多い。なお「切仔麵」という名称なら、「切仔麵」発祥の地である新北市蘆洲區にある有名店のものがお薦めだ。また「切仔麵」は基本的には揚げたエシャレット(油蔥酥iû-chhang-so͘:イウツァンソォ)や刻みネギ(蔥仔珠chhang-á-chu:ツァンガツゥ)などの薬味とニラ(韭菜kú-chhài:クゥツァイ)やモヤシ(豆菜tāu-chhài:タウツァイ)が添えられているだけで、他には何も入っていないのが普通だ。
「切仔麵」は七分目ぐらいに茹でた油麵(iû-mī)をニラやモヤシと一緒に、持ち手が付いていて底が少し深いザルに入れ、沸騰したお湯の中で数回上下に振動させる。この動作をする時に心地のよい音が出る。台湾語での名称、chhe̍k-á-mī(チェッガミィ)のchhe̍k
はこの動作を表し、漢字で書く場合は「[才戚]」(手偏に戚)なのだが、「切」という当て字(発音は微妙に違う)で書かれることが一般的だ。それで、「切」(chhiat
: ツェッ)という字の発音に従いchhiat-á-mī
(切仔麵:ツェッラミィ)と発音する人も多い。
「乾麵:ta-mī(タァミィ)」の台湾での意味は“汁無し和え麺”のことであり、まだ茹でていない状態のインスタント麺のことではない。また、「油麵:iû-mī(イウミィ)」は料理に使用されている麺の種類の名称(かん水と油が含まれた黄色い麵)であり、本来は料理名ではない。「肉燥麵:bah-sò-mī(バァソーミィ)」はご飯に豚ひき肉の醤油煮込みをのせた肉燥飯:bah-sò-pn̄g(バァソープン)の麺バージョンだ。
「切仔麵」にしろ、「乾麵」や「油麵」にしろ、店によっては薄く切った煮豚や豚ひき肉、煮卵などが入っていて、比較的高価なタイプのものあるが、基本的にはモヤシ、ニラ、ネギぐらいしか入っていない安くてシンプルな麵料理だ。2022年現在では一杯35元〜45元(140円〜180円)という値段設定の店が多い。
また汁無し和え麵タイプを選んだ場合、別にスープやおかずも注文するのが一般的な注文方法だ。麺とスープを一緒にしないで、別々に分けて食べたい時、また麺を白いご飯の代わりにしたい時に汁無し和え麵を注文するのだ。だから、汁無し和え麵を注文すると、お店の人から「スープは何にする?」とか、「一緒に食べるおかずは何にする?」と、すぐに聞かれることが多い。スープの他に麺のおかずとして、豚の各種内蔵料理や各部位の肉料理、豆腐料理、茹で野菜などをいくつか注文することが一般的である。
また、台湾の飲食店では日本のようなお茶や冷水の無料サービスはほとんどない。だから、食事をする時には大抵、スープも注文することになる。比較的値段の安い食堂のようなところでは、セルフサービスでスープやお茶が無料で飲めるところもあることはあるが、比較的高級店になるとスープや飲み物はすべてお金を出して買うことになる。
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編集部より:「阿彰の台湾写真紀行」では、台湾在住のデザイナー、『台北美味しい物語』著者である内海彰氏が撮影した写真とエッセイをお届けします。写真は末尾のリンクから取得することができます。
1-擔仔麵(タァアミィ)
2-切仔麵(チェッガミィ)
3-切仔麵(チェッガミィ)
4-切仔麵(チェッガミィ)
5-切仔麵(チェッガミィ)
6-肉燥麵(バァソーミィ)
7-乾麵(タァミィ)
8-油麵(イウミィ)
9-油麵(イウミィ)
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