【産経記事】高砂義勇兵記念碑の行政訴訟判決

【産経記事】強制排除の処分撤回を指示 高砂義勇兵記念碑の行政訴訟判決

産経新聞 2009.3.25

 【台北=長谷川周人】台北郊外の烏来(うらい)郷に移設された台湾先住民出身の元日本兵「高砂義勇兵」の英霊記念碑が2006年2月、台北県当局に強制排除された問題で、地元側が排除処分の取り消しと原状復帰を求めていた行政訴訟の差し戻し審判決が24日、台湾の高等行政法院であった。判決は県側の主張を退け、処分の撤回を指示した。3年に及んだ記念碑問題は、法廷論争でも地元の意向が受け入れられ、解決に向けて大きく動き出すことになった。

 この記念碑は、敷地を提供した観光会社の倒産で存続が危ぶまれたが、これを伝えた産経新聞の記事をきっかけに3000万円を超える義援金が日本の読者らから寄せられ、2006年2月に現在の県有地に移設された。ところが県側は碑文が「日本の軍国主義を美化している」などと決めつけ、敷地内にあった8つの石碑を強制撤去、記念碑は竹の覆いで封印した。

 これに対し「排除命令は違法であり無効」とする地元は、法廷闘争に持ち込んで処分撤回を求めてきた。07年12月に高等行政法院は訴えを却下する裁定を下したが、最高行政法院は地元側の抗告を認めてこれを差し戻し、3回の審理を経たこの日の判決では、一転して処分撤回を指示した。

 判決文は一両日中に公開され、県側が上告する可能性もあるが、県は行政訴訟と並行して記念碑一帯の公園化よる地元との「和解」の道を探ってきた。昨年5月には地元側と初めての公開協議を行い、記念碑を歴史的な観光資源として再開発する計画を提示。日本語で書かれた碑文に訳文をつけることなどを条件としながらも、記念碑の囲いを取り払い、他の石碑も全面返還することを約束した。

 年末に予定される統一地方選を控え、地元との対立が続くのは得策ではないとの政治判断が県側に働いたとみられる。遅れに遅れた公園化計画も、3月に入ると記念碑の囲いの一部が取り外され、対立点を残しながらも新たな造成工事にも着手し、状況は好転している。

 地元で記念碑を守ってきた「烏来郷高砂義勇隊記念協会」のマカイ・リムイ総幹事は「3年の道のりは長かったが、判決は最終決着への大きな一歩だ。日本の善意に対して恥ずかしい思いをし続けたが、今度こそ記念碑を日本精神が根づく義勇隊の誇りの軌跡として、また日台を結ぶ友情のきずなとして残していきたい」と話している。


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