【産経・主張】WHO事務局長の更迭を

【産経主張】不十分な緊急宣言 WHO事務局長の更迭を 政府は独自判断をためらうな

2020.2.1 産経新聞

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、新型コロナウイルスによる肺炎拡大をめぐり「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

 遅きに失した判断である。WHOは1月23日の緊急委員会で、宣言を「時期尚早」と見送った。この直後から事態は加速度的に悪化していった。

 しかもテドロス氏は、「渡航や交易を制限する理由は見当たらない」と述べて渡航制限勧告の見合わせを表明した。

 「保険制度が整っていない国へウイルスが広がること」が最大の懸念とする自らの発言とも矛盾する。現実を見ていない。WHOに任せていては、感染を抑え込むことに期待はできない。

 ≪習近平政権の代弁者か≫

 テドロス氏はこれまでも、中国寄りの言動を続けてきた。

 当初の宣言見送りには「中国の圧力があった」との仏紙の報道もある。テドロス氏は中国から巨額インフラ投資を受けるエチオピアの元保健相・外相だ。感染当事国と向き合い「公衆衛生上の緊急事態」に対処する司令塔には不適格であり、更迭を求めたい。

 世界の感染者数は、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の8千人超を上回った。「人から人へ」の感染も中国国内だけでなく、日本など各国で確認されている。

 世界に広がる感染者の大半は、武漢など中国からの渡航者だ。

 封鎖された武漢から帰国した日本人や外国人からも、感染が確認されている。多くの関係国が、現地に残る自国民を至急帰国させるため、チャーター機派遣の交渉を中国政府と続けている。

 そうした中で習近平氏は28日、北京を訪問したテドロス氏に「WHOと国際社会の客観的で公正、冷静、理性的な評価を信じる」と語った。WHOの対応に慎重な判断を求めたものだ。

 テドロス氏は「WHOは科学と事実に基づいて判断する」と応じ、「中国政府が揺るぎない政治的決意を示し、迅速で効果的な措置を取ったことに敬服する」と称賛した。

 だが、新型コロナウイルスによる感染が昨年12月に武漢市で確認されながら箝口(かんこう)令が敷かれたことは、中国国内でも周知の事実である。武漢市の周先旺市長は情報公開が遅れたことを認め、「地方政府には公開の権限がなかった」と釈明している。習政権下の統制が初動の遅れをもたらしたことは明らかである。

 テドロス氏はまた、王毅国務委員兼外相に対し、自国民救出を求める各国の動きに「過剰反応は必要ない」とも述べていた。中国側の思惑を代弁することがWHO事務局長の仕事ではあるまい。

 なぜそこまで肩を持つのか。

 テドロス氏の出身国エチオピアと中国には、「特殊な関係」がある。鉄道や電力供給などで中国からインフラ投資を受けるエチオピアは、巨大経済圏構想「一帯一路」のモデル国家とされる一方、膨大な債務にも苦しんでいる。

 テドロス氏は2012~16年に外相を務めて中国との関係を深めた後、前任の香港出身のチャン氏の後を継いでWHO事務局長に就任した。

 公衆衛生上の危機に厳格に対処する国際機関のトップとして最も重要な中立性は、当初から疑われていた。

 WHOは、26日付のWHO日報で新型コロナウイルスの世界的な危険性について「中程度のリスク」とした表記が誤りだったとして「高リスク」に訂正した。

 危険性の判断は防疫の根幹であり「事務的ミス」ではすまない。ここにも忖度(そんたく)があったのではと、疑わざるを得ない。

 ≪日米連携で危機管理を≫

 WHOに信用がおけない以上、日本政府はこの判断に依拠すべきではない。政府はWHOの緊急事態宣言を受けて、「指定感染症」の政令施行を7日から1日に前倒しした。宣言を待たず、独自の判断で迅速に施行すべきだった。

 WHOが渡航制限勧告を見合わせても、米国はすでに中国全土への渡航について最高ランクの「渡航中止」に引き上げている。

 問われているのは、極めて緊急性が高い危機管理である。

 政府には、これに長(た)けた米国と緊密に連携して国民の保護と感染の抑え込みに当たることが求められている。


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