【李登輝の箴言】駐日台湾大使からの公式推薦文

李登輝の箴言】駐日台湾大使からの公式推薦文

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     謝長廷 駐日台湾大使

李登輝の思想とその実践の足跡を非常に的確に書き表し、その深淵に迫る書

「箴言」という言葉は、普通、宗教の大家や哲学者が社会に残した警告の言葉を指すもので、政治家について使うことは稀である。

だが李登輝元総統本人が、一人の篤い信仰を持った思想家である。

だから『李登輝の箴言』という本書の題名を見た時に、全く違和感を覚えなかった。

一人の人物の思想の中身とそれを実践してきた様は、長い時間にわたる記録や間近での観察を通して、ようやくその奥深くに迫ることができる。

本書の作者である林建良氏は李登輝元総統のスピーチライターを長年務め、さらに彼自身が揺るぎない台湾意識の持ち主である。

だからこそ、彼の手になる本書は、李登輝の思想とその実践の足跡を非常に的確に書き表し、その深淵に迫るものになっている。

李登輝元総統は私にとって台湾大学と京都大学の先輩である。

共に所属する政党は異なれども、1991年に国是会議に出席した私を李登輝元総統は励ましてくれ、以来、お亡くなりになる前まで何度もお会いし、教えを請う機会をたくさん得た。

さて、本書で紹介されているいくつかの箴言のうち、李登輝がよく口にしていた「誠実自然」のほかに、私にとって特に印象深い言葉が2つある。

1つは「思想と信仰を大切にせよ」ということである。

私は1998年に高雄市長に当選すると、すぐに李登輝総統の元を訪れた。

李総統はその時私に、岩波書店の市政経営に関する講座の書籍シリーズをプレゼントしてくれたほか、ワープロで打った「指導者の条件」と題する文章を贈ってくれた。

「指導者の条件」の1つ目の条件は「固い信仰」というものだった。

李総統が敬虔なキリスト教徒であることを知っていたので「自分は仏教徒です」と言うと、「どの宗教かということは別問題だ。

一番大切なことは固い思想と信仰を持つことだ」と李総統は言う。

そして、なぜ指導者は固い信仰や自分の中心となる思想が必要なのか、2つの理由を上げて説明してくれた。

1つ目の理由は、指導者は必ず多くの攻撃や挫折、圧力に直面する、その時に固い信念がなければ強い精神力を保ってやり抜くことは難しいから。

2つ目の理由は、自分の中に一本の中心を貫く思想がなければ、口で言っていることとやっていることに必ずや矛盾が生じ、一貫性がなくなって説得力に欠けるから。

もう1つは「私は私でない私」という思想である。

李登輝元総統はよく、この言葉をしたためて社会に広めたり、文鎮やしおりにして、人々に贈ったりしていた。

だが、この言葉の意味は分かりやすいものではなく、人それぞれに受け止め方が異なる。

ある時、李登輝元総統と話をしていた時に、スピーチや講演で時々話が飛躍してしまうので、聴いている方はすぐに理解するのが難しい、という話題になった。

宗教家は話をしている時に、話そうとしている事象が目の前にイメージとして浮かぶことがあるらしいという話を私がすると、何と彼は、自分も原稿を読まないと、目の前に浮かんでいるイメージに従って話をしてしまうのだと言う。

しかも、そのイメージが次から次へと浮かんで来て、そのスピードがどんどん速くなっていくので、時々話が飛んでしまうのだと言う。

敬虔なキリスト教徒である李登輝元総統は、人は誰しもその内面に尊く神聖な一面を持っている。

だけれども普通の人々は社会の意識や肉体といった一面から自分を認識するから迷いやすい、と考えていたのだろう。

だから彼は晩年に「私は私でない私」という言葉を口にするようになったのだと思う。

人は皆、自分の中に神聖な部分があり、それこそが本当の自分であるのだと、李登輝元総統は私たちに気づかせようとし、だから信念を持ちなさいと台湾人を励ましていたのだと思う。

本書では、林建良氏が李登輝元総統と共に過ごした体験を元に、この言葉の精神は時間と環境の移り変わりと共にあると指摘している。

常に進化し続け、変化し続け、今日の自分が昨日の自分を見た時に、昨日の自分は抜け殻で、今日の自分はまっさらな新しい自分になっている。

だから「私は私でない私」だと。

作者はさらに、この思想を李登輝哲学の集大成であると考えている。

このような解釈は非常に興味深く、誰もが理解できる分かりやすい説明だ。

李登輝元総統は様々なことについての認識を常に変化させてきた。

台湾と中国大陸の関係についても、「新中原論」から特殊な国と国の関係を主張した「二国論」まで、常に変化し続けてきた。

林建良氏の解釈は李登輝元首相の思想と完全に一致したものであり、人々に日々新たに絶えず進歩していこうと励ますものであり、非常に前向きな思考である。

林建良氏から本書にはしがきを寄せてほしいと数か月前に依頼されていたのだが、公務の都合で執筆の時間がなかなか取れずにいたところ、間もなく上梓されると伺い、大急ぎで浅見をしたためさせていただいた。

日本で李登輝元総統の精神を広めるべく努力されている林建良氏に、心より敬意を表したい。


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