【書評】「李登輝の箴言」不世出のアジアの指導者が残した箴言の数々から七つを選んだ
林 建良『李登輝の箴言』(ダイレクト出版)
政治評論家 宮崎正弘
「我是不是我的我」(わたしはわたしでないわたしだ)
不世出のアジアの指導者が残した箴言の数々から七つを選んだ
「日本よ、アジアのリーダーになれ」
著者の林 建良医師は、政治の裏方で李登輝のスピーチライターを務めていた。
だからこそ語れる「日本精神を持った台湾リーダー」の素顔。
台湾と日本を「自分の二つの祖国だ」と自己認識されて、武士道精神を台湾政治に実践したたぐいまれな指導者・李登輝総統が、日本人にどうしても伝えたかったこととは何か?
評者も、じつは何回も李登輝総統にはお目にかっていて、現職時代は総統府で、退任されてからは大渓の別荘、台北の自宅、そして近郊の氏のシンクタンクでは数回。
後者のシンクタンクでの面会時は、この本の解説を書いている政治学者の藤井厳喜氏も一緒だった。
来日されたおりも後藤晋平賞受賞の国際文化会館の控え室や、講演会のおりは帝国ホテルで。
或るとき、お土産に木製の栞を頂いた。
そこには氏自身の字で、
「我是不是我的我」(わたしはわたしでないわたしだ)
と彫ってあった。
いまも大事に使っている。
中国が猛烈に妨害し反対したが、退任後の李登輝総統は何回か来日され、どこへ行っても歓迎の人並みがあった。
念願の芭蕉記念館も訪れた。
周南市にある児玉神社境内には李登輝氏が揮毫して石碑がでんと聳立している。
そのことを言うと嬉しそうに相好を崩された。
氏の「浩気長存」と書かれた雄渾な揮毫である。
http://chiekostyle.seesaa.net/article/266233963.html
(児玉源太郎は徳山出身。
現在の周南市)
周囲が反対しても、「どうしても行くのだ」と固い決意で靖国神社を参拝された。
武士の魂魄を了解していたからこそ果敢な行動を伴ったのだ。
李登輝元総統からこれを日本人に届けて欲しいと託された原稿をもとに七つの明確な指針を示した。
それらは「誠実自然」(これは武士道の「武士に二言はない」から来ていると李登輝氏は解釈した)。
三島由紀夫や安倍晋三が好んで揮毫したのは「至誠」だった。
「金で解決出来ることは総て小事」。
「安易にカードを切るな」。
「敵を使える智恵と器量を(持て)」。
「トラブルメーカーになることも必要」。
(馬英九にインタビューしたとき、『私はトラブルメーカーにはならない』と言っていた)。
「信仰心を持つことはリーダーの最重要条件」。
「私は私でない私だ」(これこそ李登輝哲学の集大成である)。
以上七つの箴言の細かい解説と思想のバックグランドは本書に当たっていただきたい。
なお本書には貴重なカラー写真が16ページ、文中にも初めて見る珍しい写真が多数挿入されている。
—
台湾の声
バックナンバー
http://ritouki-aichi.com/category/vot
登録/解除
http://taiwannokoe.com/register.html
Facebook
https://m.facebook.com/taiwannokoe?_rdr
YouTube『Taiwan Voice』藤井厳喜 x 林建良
※ぜひチャンネル登録をお願いいたします
※この記事はメルマガ「台湾の声」のバックナンバーです。
講読ご希望の方は下からお願いします。